藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

投資ありきではなく。

 人生を豊かに暮らすうえでお金の運用のうまい下手は、上から6番目ぐらいの順位と考えています。何といっても1番目は仕事の稼ぎが多いか少ないか。2番目は支出と貯蓄の習慣、3番目は住居・不動産、4番目は保険、5番目は自動車といった具合です。運用はそんなに決定的なものではない。

市場とか、投資利益とか、さらには「利子」というものについても、自分なりの意味付けを持っておくことが必要だと思う。
本の学校でもようやく始まった「資本教育」とでも言うべきものはまだ始まったばかりである。

合理的へそ曲がり。

山崎さんは言う。

投資では「合理的へそ曲がり」の精神が大切だと考えています。たとえば、そのとき市場で人気で注目を集めているような、いわゆる「グラマーストック」のリターンはさえません。「美人投票」のたとえでみんなが美人だという銘柄に投票しないといけないといいますが、すでに美人だと評価されている銘柄が、さらに人気を集めるでしょうか? それよりこれから美人になりそうな銘柄を探す方が割がいい。
 へそ曲がりの精神でいろいろ考え、結構合理的だぞというところにチャンスがある。投資であえて大切なことといえば、そういうセンスではないかと思います。

誰もが投票するだろう美人に投資をするのか?
それともまだ誰も目を付けていない原石に投資するのか?
その動機は「ただ大きなリターンが欲しい」というのかそれとも「お金を寝かせておくよりは、少しは動かしたい」というかで全然変わってくる。
預金と投資は全然違う物に見えるけれど、投資もその対象によってはリスクとリターンが大きく違うということを予め含んでおかねばならないのだろう。

自分の経験でも、投資なのか出資なのか、あるいは投機なのか利殖なのか、段々"ごった煮"になってそのうちリターン重視で危険な投機に走ったりする可能性があると思う。

今の金融が発達した先進国では「タンス預金」ではもったいないし、国の信用も絶対ではないし、そうした「資本論」についての見識は必要だろう。
いくつもある資本の持ち方について、大事なのは「自分の価値観に合ったマネジメント」をすることだ。
下手に利殖に走って「バブルにやられた」という60歳以上の人たちの話もぜひ生で聞いてみるのがいいだろう。
老後の資金にただ悲観的になるのではなく、まず今の市場を知ってみること。
それから自分の処し方を考えたいものである。

本当はアクティブ運用がやりたい(山崎元) 2015/10/8 6:30日本経済新聞 電子版
 
 経済評論家の山崎元氏は、資産運用の世界で市場平均に連動するインデックス投資の利点を説く「インデックス運用の伝道師」として知られる。大手運用会社や信託銀行で株式ファンドマネジャーを経験し、運用者の腕で市場平均に勝とうとするアクティブ投信は手数料が高く、多くのデータが示すように長期ではインデックスに負けると実感したからだ。ところが、意外にも山崎氏は「自分のお金で投資をするなら、本当はアクティブ運用がやりたい」と明かす。その理由とは――。

山崎元(やまざき・はじめ)氏 1958年北海道生まれ。1981年東京大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。その後、野村投信委託、住友信託銀行、シュローダー投信、第一勧業朝日投信投資顧問、明治生命保険、UFJ総合研究所(名称はいずれも当時)などに勤務。12回の転職経験を持つ。現在は楽天証券経済研究所客員研究員、独協大学経済学部特任教授、国家公務員共済組合連合会資産運用委員会委員。2005年1月に投資と投資教育のコンサルティング会社、マイベンチマークを設立し代表取締役に就任。著書に「全面改訂 超簡単 お金の運用術」(朝日新書)「図解 山崎元のお金に強くなる!」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など多数

インデックス投資の利点はコストの安さ、アクティブは劣る
 わたしがインデックス投資を勧めている最大の理由は運用コストの安さです。投資家が払う運用管理手数料、いわゆる信託報酬はオープン投信のアクティブ型は(純資産に対し年)1.5%ぐらい。一方、インデックス型はいま安い上場投資信託ETF)で0.1%前後まで下がりました。年1%超違うということはだいたい長期金利の2年分以上ですから。その差を超えてまで、アクティブ投信を選ぶ理由はないと思います。
 運用業界は「不都合な真実」といっているんですけど、アクティブ投信は過去10年はおろか、20年でも、30年でも、アメリカでも日本でもだいたいにおいて市場平均に負けているんです。もちろん平均を上回るアクティブ投信もあるわけですが、残念ながら事前に選び出すことはできない。ファンドの成績は事後的には評価できますが、ファンドの未来を予測することは不可能なのです。
 わたし自身、野村投信委託と住友信託銀行(いずれも当時)の時代に主に株式ファンドを運用していました。アクティブ投信の統計を見ると、10本のうち6本は市場平均に負けて4本勝っている。その6本と4本はランダムに入れ替わるというのが大まかな姿ですから。
 変な話、わたしの担当ファンドはインデックスにだいたい勝っていたんです。ただ、それは実力によるものと思うほどうぬぼれてはいなかった。たまたま勝てたんだろうし、同じ方法でやっていると負けることがあることも実感しました。好成績が未来永劫(えいごう)続くことはあり得ません。
 ファンドマネジャーという仕事はなかなか微妙でしてね、明白な腕があれば、自分で運用するはずで他人のお金を運用しないはずなんです。逆に人よりも下手だったらファンドマネジャーである意味はない。そのぎりぎりのところに成立している。
■「株は頭脳の勝負ではない」「努力しても上達しない」
 わたしが「株は情報の勝負ではない」、「頭脳の勝負ではない」、「金持ちが勝つゲームではない」、「努力しても上達しない」というのはこれまでの経験です。投資ではよく売買のタイミングが勝負だといわれますが、そんなことはコントロールできないし、たいがい分かりません。
 ファンドマネジャーになったばかりのころ、先輩ファンドマネジャーたちから「安く買うためにタイミングをよく考えろ」と忠告されました。しかし、その先輩たちはというと、実践できていない。インデックスファンドに成績が負けており、上司に叱られていました。アタマがいい人、学歴が高い人をファンドマネジャーにそろえているとファンドの運用成績もいいはずというのは幻想です。
 こうした事実を論理的に組み合わせると、アクティブ投信を買うのは経済合理性がありません。でもそこで割り切ってしまうと運用業界は勝負にならないので、そこを乗り越えるべく、投信を売るためにマーケティングの工夫をすることになりますよね。
 日本は1990年代に投信の手数料が高騰しました。きっかけは投信販売への外資の参入です。ふつうは競争が激化すると価格は下がるものですが、運用会社は手数料を厚めに取ることで販売会社へのキックバックを増やし、生き残りを図ろうとした。手数料は高くなったのに商品の質は下がりました。これが日本の投信の不幸な歴史です。
■アクティブ投信の手数料は高すぎるが、下げられるはず
 率直にいってアクティブ投信の手数料が高すぎるんですよ。アクティブ投信を自分が好きかどうかっていう話と、アドバイスとして人に勧めていいかどうかは、分けて考える必要があると思うんです。自分のお金で買うのは勝手ですが、他人に対してアドバイスするという意味においてはこれだけ手数料に差がある現状ではインデックス運用を勧める以外の選択肢はないです。
 インデックス投信よりアクティブ投信の方がコストがかかるというのは「ウソだ」といいたいです。アクティブ投信のファンドマネジャーはアナリストの話はたいして聞いちゃいない。じゃあシステムのコストだとか、ファンドの管理コストが高いかというとむしろインデックス投信の方が負荷が大きいと思います。インデックス投信は膨大な銘柄に投資していますので。物理的にアクティブ投信のコストは下げられるはずです。
 だけど実際には難しい。ブランド品の値引き販売はマーケティングとしては自殺行為だから、既存の運用会社のビジネスモデルが崩壊してしまいます。インデックス投信並みのコストで既存の運用会社がアクティブ投信を運用すると考えましょう。何が起こるかというと高いコストのアクティブ投信からローコストのアクティブ投信にお金が流れちゃう。
 そういうビジネスモデルができるのは既存の運用会社じゃなくて、新しく入ってくるチャレンジャーじゃないでしょうか。10年前ぐらいに「投信のユニクロ」というコラムを書いたことがあるんですけれど、そういう会社がいくつか立ち上がれば、状況は変わるかもしれません。
 一般の投資家の方には生活に必要な資金をまず3カ月分とっておき、残りの資金でリスクを取る部分と取らない部分とに分けて投資することをお勧めしています。リスクを取る部分は最大損していい金額の3倍まで。たとえば、年100万円まで損して大丈夫なら、300万円がリスク投資の金額になります。リスク投資では内外のインデックス投信を半々ぐらい購入し、リスクを取らない部分ではMRF(マネー・リザーブ・ファンド)や元本保証の個人向け国債などに投資すればいいと思います。
■個人として好きなのは個別株運用、老後の楽しみに
 個人としていわせてもらえば、実はアクティブ運用が好きです。ずっとファンドマネジャー時代にやっていたのはアクティブ運用だったわけだし、インデックスに勝つのはなかなか難しいのは知っているつもりですけれども、好きなのはアクティブ運用です。
 よく投資イベントに呼んでもらって話をするんですが、「山崎さんって結局のところアクティブ運用が好きなんですか」といわれることがあります。そんなときは「ええそうですよ」と。でも現実のアクティブ投信はあまりにも手数料が高いからいまはよくいわないだけだと説明しています。逆に「山崎さんはインデックス運用が好きなんですか」と聞かれると「別に好きではありません」と答えます。
 もとより、株式投資をするなら自分なりの判断でやった方が絶対いい。インデックス投信はつまらないからとアクティブ投信を買う人たちがいますが、「人が運用するような投信を買って面白い?」といいたい。アクティブ投信を買うぐらいなら「自分でやった方が楽しくない?」と。アクティブ投信を選ぶというのは人間の営みとしてはあまり面白くないと思います。
 かつて個人的に個別株に2年半ぐらい投資していました。UFJ総研(当時)のときに、人のお金を預かって運用する仕事から離れたので、ネット証券に口座を開いて数銘柄、金額にして500万円分を運用しました。2000年代初めのころですが、三菱自動車が経営難になり、三菱商事三菱重工業が銀行とともに支援するという出来事がありました。
 そのとき、三菱商事の株価はあっという間に300円ぐらい下がったんです。でも三菱商事が持っている三菱自動車株や融資がゼロになったとしても評価損はだいたい30円分ぐらい。これは過大な反応だからと、三菱商事を買いました。その後株価は戻し、インデックスに勝ちました。
 いまは証券会社に勤めてマーケットにコメントする仕事なので、株式はグループ社員として保有している楽天株1株だけです。後は預貯金とMRF。株式運用は老後の楽しみに取ってあります。いずれは個別株をアクティブ運用すると思いますよ。
■投資では「合理的へそ曲がり」の精神が大切
 投資では「合理的へそ曲がり」の精神が大切だと考えています。たとえば、そのとき市場で人気で注目を集めているような、いわゆる「グラマーストック」のリターンはさえません。「美人投票」のたとえでみんなが美人だという銘柄に投票しないといけないといいますが、すでに美人だと評価されている銘柄が、さらに人気を集めるでしょうか? それよりこれから美人になりそうな銘柄を探す方が割がいい。
 へそ曲がりの精神でいろいろ考え、結構合理的だぞというところにチャンスがある。投資であえて大切なことといえば、そういうセンスではないかと思います。
 株式の投資家は企業を一生懸命見ているタイプとプレーしている人間を一生懸命見ているタイプがいます。どちらかというと私は後者なんです。企業、つまり個々の銘柄はデータを持った素材に過ぎなくて、それに反応している人間がマーケットにいるわけだから。この人間に勝つにはどうしたらいいのか。この人間の隙を突くにはどうしたらいいのか。隙を突いているつもりで実は隙を突かれる側に回っていたりする。
 やっぱり「こういう会社がいいよな」と自分が思っているということは、まあ他の人もそれぐらいのことは思っています。ある種、自分の判断を疑うというところに面白さがありますよね。
「人生を豊かに暮らすうえでお金の運用のうまい下手は、上から6番目ぐらいの順位」と語る

■正しい投資知識を広く伝えたい
 大学でも教えていますが、投資についていま一番やりたいことというと、正しい投資知識を広く伝えたい。来年ジュニアNISA(少額投資非課税制度)も始まるので、あちこちでお金の教育が必要とされるでしょう。しかし、我が国の投資教育は体系的な知識として確立していません。投資教育を提供する主体が証券会社であったり、保険会社であったりすることも多く、彼らにとって都合のいいことをいっている。
 小学生向けの投資教育の教科書を見ると、会社の仕組み、株式の仕組みがあって、いきなり「応援してみたい会社の株を持ってみよう」とか書いてあるんですよ。本当は利回りとかリスクとかを理解してもらい、それを理由として株を買うのが正しい。そういう判断を教えないで、「あなたが会社を応援すれば、会社が頑張って世の中がよくなります」というのは違和感があります。
 人生を豊かに暮らすうえでお金の運用のうまい下手は、上から6番目ぐらいの順位と考えています。何といっても1番目は仕事の稼ぎが多いか少ないか。2番目は支出と貯蓄の習慣、3番目は住居・不動産、4番目は保険、5番目は自動車といった具合です。運用はそんなに決定的なものではない。けれども適当な場所に置いておくと資本として利益を稼いでくれ、豊かさの助けになる。そんなイメージでしょうか。
(聞き手は電子編集部シニア・エディター 佐藤一之)

「わたしの投資論」は随時掲載します。