藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

利殖は事業ではない。

ファンドとかローン債権とか。
ここ数年「投資資金」の持ち主は不動産屋や銀行から、ファンドに変わっている。

ヤン氏は「コブライト(コベナンツ・ライトの略)融資では、貸し手に危険を知らせてくれる『炭鉱のカナリア』は除外されつつある」と話す。

そしてファンドと名乗って実に多様な債券が流通しているようだ。
ふと、デジャブ。
確か、三十年前の90年代もそうではなかったか。
「なぜ投資資金が借りられるのか」
「なぜ銀行が仲介に入っているのか」
「そもそも何のための商品(証券化)なのか」
そんな疑問が、破綻の後に取り沙汰された。
今の投資市場は、かつての轍を踏んでいないだろうか。
平成最後のバブルだった、というオチにならなければいいのですが。

注目集めるレバレッジドローンのリスク(下)
最近のレバレッジドローンでは、投資家の権利が犠牲にされるケースは少なくない。信用調査会社コベナント・レビューによると、18年のプライベート・エクイティ(PE)ファンドによる大型融資上位20件のうち、ローン債権の投資家の担保請求権を弱める抜け穴が盛り込まれた案件は約8割に上った。

トムソン・ロイターのジム・スミスCEO。ブラックストーンが170億ドルで同社の金融データ部門を買収した件は投資家の疑念を引き起こした=ロイター
米ペット関連チェーン大手ペットスマートへの融資書類では、出資者のPEファンド、BCパートナーズにほぼ「無限の柔軟性」が認められているとコベナント・レビューのイアン・ウォーカー氏は指摘する。ペットスマートは昨年6月には、高価値の資産を貸し手が手を出せないようにしたうえ、BCパートナーズが経営権を握る持ち株会社に配当も支払った。ペットスマートは現在、この措置の合法性を巡って債権者との訴訟に巻き込まれている。BCパートナーズはコメントを差し控えるとしている。ペットスマートにコメントを求めたが、回答はなかった。
米投資会社ブラックストーンがLBO(借り入れで資金量を増やした買収)という手法を使い、金融情報大手トムソン・ロイターの金融データ事業(現リフィニティブ)を170億ドルで買収したディールほど怪しい案件はないと考える投資家もいるだろう。このリーマン後で最大級のLBOの資金の大半は、レバレッジドローンを駆使して調達された。
大型バンクローン・ファンドの運用を手掛ける米イートン・バンスのポートフォリオ・マネジャー、クレイグ・ラス氏は「リフィニティブはレバレッジドローン市場のピークを示す典型例だと思う」と話す。「ひどく強引でレバレッジが高く、契約も粗雑な案件だったが、投資家は飛びついた」と語った。
この件はEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)を「アド・バック(加減)」する手法を使ったレバレッジドローンの最たる例ともみなされた。コスト削減など考え得る積極的な効率改善策を事前に数字に織り込むことで、企業の信用力を高くみせることができる。だがこうした「加減」が実現しなかった場合、実際のレバレッジ比率は劇的に上昇する。
ローン債権が発行された時点でのリフィニティブのレバレッジ比率は5.7倍と、一見したところかなり適切に思えた。だがこの数字には3年で6億5000万ドル分に上る将来のコスト削減が織り込まれている。リフィニティブがこの非常に高い目標を達成できなければ、レバレッジ比率は大きく膨らむ可能性があると米格付け会社S&Pグローバル・レーティングスのディレクター、ミネシュ・パテル氏はみている。ブラックストーンはこの件にコメントしなかった。
こうしたローンの背後に控えるPEファンドは、これらの懸念の多くは誇張されているという。コベナンツ(財務制限条項)が変更されれば法的文書に記載されるため、投資家は契約内容をきちんと把握しているというのがその理由だ。さらに、投資家を融資の焦げ付きから守る法律上の安全策は一切ないとも言い張る。
アレス・マネジメントのストラクチャード・クレジット部門の共同ヘッド、キース・アシュトン氏は「マネジャーが信用の査定を苦手としている場合、条項の存在だけでは焦げ付きリスクを回避できず、損失を被ることになる。信用の見極めが最も大事だ」と語る。
それでも、融資条件を厳しくすれば投資家の助けにはなるだろう。貸し手の保護が弱められた結果、債務比率の高い企業がデフォルトを起こすと、投資家が回収できる資金は以前よりもはるかに少ない可能性があると格付け各社は指摘する。
S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのマネジングディレクター、ルース・ヤン氏によると、米国の現在のデフォルト率はわずか1.6%で、過去の平均3.1%を大幅に下回る。コベナンツが緩いため、当面はこの水準にとどまる可能性がある。
ヤン氏は「コブライト(コベナンツ・ライトの略)融資では、貸し手に危険を知らせてくれる『炭鉱のカナリア』は除外されつつある」と話す。「一方、足元の業績は低迷しているが財務はしっかりしている借り手企業は、デフォルトに追い込まれることなく返済し続けられる」と述べた。
格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスの試算では、債務返済順位が1位の「第一順位担保権付ローン」の回収額は、過去の平均の1ドル当たり77セントから、61セントに減る公算が大きい。これよりもリスクが高い「第二順位担保権付ローン」では、43セントから14セントへと大幅に減る見通しだ。
ムーディーズのクリスティーナ・パジェット上級副社長は18年、「アグレッシブな財務方針と焦げ付きに備える資本バッファーの劣化、企業ローン市場を活用する信用度の低い企業の増加」により、信用リスクが生じつつあると警告した。
こうした問題の兆しは18年末の数週間、投資家が景気減速と米利上げの影響に神経質になるなかで、金融市場の動揺という形で姿を現した。
ローン債権の価格は12月に3%以上下がり、米国債の格付けが最高位の「トリプルA」から引き下げられた11年8月以来の下げ幅を記録した。18年11月15日〜19年1月2日のローン投資信託や上場投資信託ETF)の資金流出額は160億ドル以上に達し、一握りの大口投資家による資金引き揚げが大半を占めた。
だが年が明けると、市場はいくぶん明るさを取り戻した。S&Pのレバレッジドローン指数は2.2%上昇した。米大手運用会社アライアンス・バーンスタインの債券部門責任者で、レバレッジドローン市場の弱気派だったダグラス・ピーブルス氏は、12月の資金流出で市場の「弱い手」が一部取り除かれて市場の健全性が改善したとの見方を示す。
12月の価格下落で売れ残ったローン債権を抱える米大手銀行は、投資家により良い条件を提示せざるを得なくなった。
イートン・バンスのラス氏は「貸し手は市場で契約を取り付けるため、レバレッジを抑え、融資基準を厳しくし、金利を引き上げるだろう」と予測する。
もっとも、貸し手側への保護を弱めているという問題に関しては、今後も借り手重視の姿勢を維持すると断言する弁護士もいる。
米法律事務所カークランド・アンド・エリスのパートナー、ジェイソン・カナー氏は「顧客が(契約を)履行する際に、できるだけ柔軟性を確保するのが我々の仕事だ」と強調。「新たな策を講じる」意向を示している。
By Joe Rennison and Colby Smith
(2019年1月21日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/