藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

知性と命の差は。

人にとって替わるAIと、人の最先端の創造であるノーベル賞が、案外直接に関わってしまうかもしれない、という記事。

AIが進化した時代の人間の存在価値は何なのかという問題を突きつける。

創造性とは一体何か、という問題に真正面から関わってくる問いかけだ。

ひらめきや偶然が生み出す人の大発見に対しAIは圧倒的なスピードと量で挑む。

そうすると「ひらめき」とか「偶然」とかそもそも「創造の中身」ってなんだろうと思わざるを得ない。
美しく、人間たちが思っていた創作とか創造ということは、実は「偶然の掛け合わせの産物」ではなかったか?とか。
案外「理屈と分類」の掛け算ではなかったのか?
というようなことを、人は改めて自問することになるのではないだろうか。

それにしても

「大量に発表される論文を読み込み超高速で膨大な仮説を作成し、繰り返し検証を続けること」

というのはもはやデータ処理の域を超えていると思う。
「一定の知識を蓄積すれ」ば、「その後の推論ができる」というのは「ある種の知性」というべきではないだろうか。
"知性と命"は別物だと思うが、命はともかく「知性」はITの世界に存在出来そうな感じがする。

ノーベル賞が消える日 好奇心保てるか 2045年を探して(3)

 宇宙は何からできているのか。哲学者のデモクリトスらが「原子論」を唱えた古代ギリシャ時代から人類は答えを追い求めてきた。最大のナゾに人工知能(AI)が迫ろうとしている。

暗黒物質が見つかればノーベル賞確実というピエリーニ氏

 スイス・ジュネーブ郊外の欧州合同原子核研究機関(CERN)。AIを使って宇宙の3割を占めるとされる暗黒物質の検出を目指す。マウリツィオ・ピエリーニ研究員は「見つかればノーベル賞確実」と言う。一周27キロメートルの円形加速器で宇宙誕生の瞬間「ビッグバン」を再現し、AIが画像認識であぶり出す。

■離れない不安

 だが、プロジェクトを率いるウラジミール・グリゴロフ氏はある心配が離れない。

 「結果までの過程がわからないことに抵抗する人がいるだろう」。AIが導く結論は途中の計算が複雑すぎて人が理由を後から明らかにするのが難しい。AIが生む「新たなブラックボックス」とも呼ばれる。

 ノーベル賞級の成果をあげても発明ストーリーを語れるのは人間ではなくAI。人知の最高峰であるノーベル賞でAIに主導権を握られたら、人間は研究に情熱を持ち続けられるのか。CERNで巻き起こる議論は、AIが進化した時代の人間の存在価値は何なのかという問題を突きつける。

 いっそAI自身にノーベル賞を受賞させようと動き出した人たちもいる。ソニーコンピュータサイエンス研究所の北野宏明社長が中心となり進める日米欧のプロジェクト。今世紀半ばまでの受賞が目標だ。

 北野氏に勝算はある。AIの強みは「大量に発表される論文を読み込み超高速で膨大な仮説を作成し、繰り返し検証を続けること」。ひらめきや偶然が生み出す人の大発見に対しAIは圧倒的なスピードと量で挑む。

 メンバーの一人が英マンチェスター大学のロス・キング教授。自分が開発したAIロボット「Eve(イブ)」に乳がんカニズムの解明を託す。Eveは1万5000本の論文や症例データを勉強中で来年にも論文を出す。「ノーベル賞? 時期はわからないがもちろんとれると思う」とキング氏は真顔で語る。

■人間の力探す旅

 「20XX年のノーベル賞はAIが独占」。そんな日がやってきたら。

 宇宙物理学者で名古屋大学名誉教授の池内了氏は「人間が本来持つ能力が衰える」とみる。人類は自動車や飛行機をつくり、行動範囲を飛躍的に広げた。一方で、文明が進んだ国ほど足が弱くなるといった問題が深刻になり、米国では肥満が広がった。肉体で起こったことが頭脳でも繰り返されかねない。

 アインシュタインは「人の持つ最も美しく深遠なものは神秘的なナゾへの感覚」という言葉を残した。AIが人知を超えてもナゾを解明したいという好奇心に優劣はない。AIが持ち得ない人間の力は何かを探す旅が始まろうとしている。