藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

仕事の鉄人。

飲食店の経営に関わってみて、つくづくシビアな業種なのだと思う。
もちろんITだって福祉だって厳しい世界だ。
ユルくて適当にやってていいというのではまるでないけれど。
なんでそう思ったか。

というとそれは「来店客との一回性」に起因していると思う。

ビジネスの場で「契約の一回性(全く同じ契約取引などない)」とよく言われるけれど、飲食店の日々はまさにこれだ。
食材も調理も接客も、お店の雰囲気も「全く同じ」ということはない。
そして「先月の料理は美味しかったから、今月はまずくてもいいや」ということはない。

常に、それなりの満足を期待する「一発勝負が毎回続く」のだ。

一回くらいの失敗なら取り戻せるかもしれないが、「平均値」が下がってきたら客は離れる。

つまり、毎回毎回「注文を取り続ける宿命」にある「フロー型」のビジネスだ。
しかしながら。
いい店にはしばしば「常連客」が生まれる。

接客がいいのか、味がいいのか、客筋がいいのか、はともかく。
月に何回も訪れる常連客は、だんだんと「ストック」されていく。

この常連客が、新規の客を脅かすようになれば「妙に常連くさい店」になって新規客は遠のく。
また逆に新規ばかりの「フロー型の店」になれば、(そりゃフローだから)常にその日に来る目新しい客、をターゲットにしなければならない。

アパレルなどとよく比較される飲食業だが、生鮮品を扱い「一日サイクル」で契約が繰り返される点では断然に厳しい部分があると思う。
毎日、仕入れをして、包丁を研いで、仕込みをして、店が終わったら掃除をする。
何年も日々延々と続く。
まるで仕事の鉄人だ。
だから料理人というのは尊敬する職業なのだ。