藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

適職を見つけてから。

日本の労働生産性は、どうにも低いらしい。

2015年のデータを比べると、日本の42ドルに対し、米国は68.3ドル、フランスは65.6ドルである。

顧客満足度などは勘案されていないらしいが、お金で比べると3割がたは劣っているらしい。
さらに。

年間労働時間を比べてみよう。17年のOECD統計によると、フランスは年1514時間に対し、日本は1710時間、米国は1780時間だ。ドイツは1356時間とさらに短い。

諸外国はともかく、自分は日本の「時間外賃金制度」が根底に影響しているような気がしてならない。
けれど「時間を問わず、成果を問おう」というのは今の労働法上非常に難しい。
どうしても「労働時間と賃金」は連動せずにはいられないのだ。

「仕事を増やして報酬も増やしたいか」「報酬が減っても仕事を減らしたいか」という質問に対する回答だ。
フランス人回答者の42.3%以上が第1の質問にイエスと答える一方、第2の質問にイエスと答えたのは5%未満。
これに対し日本人回答者で第1の質問にイエスと答えたのは33.3%未満、第2の質問には10%以上がイエスと答えた。

結局日本人は「かなり我慢して働いている」ということだろうか。
だとしたら、まずそこからだ。
転職したり、職種を変えたりして「まずはやりたいことを探す」という当たり前のことを常識にする必要がありそうだ。

フランスに学ぶ働き方改革 時短、生産性向上に寄与 労働者の満足度改善も鍵 S・ルシュバリエ 仏社会科学高等研究院教授働き方改革法が成立したのを機に、日本とフランスの働き方や仕事満足度を比較するのは興味深い。本稿では筆者が仏社会科学高等研究院(EHESS)の学生と実施した調査の暫定結果を紹介しながら、日仏の状況を比較したい。

フランスの労働市場は過去40年、失業率の点では極めて憂慮すべき状況だった。その一方で、日本は労働生産性を高め国際競争力をつけるために、また大きく報道された過労死問題に直結する過剰な残業を解決するためにも、労働生産性に関してフランスから学べるものがあるはずだ。

労働生産性に寄与する要因は多いが、日仏の労働生産性格差の主因は働き方にあると筆者は考える。働き方を特徴づける要素は、具体的には労働時間と労働形態だ。両国の働き方を理解するには、フランスで20年前に導入された週35時間制を巡る風刺や、怠け者で長い夏休みをとるといったフランス人のイメージにとらわれず、もっと深く掘り下げる必要がある。

まずは日仏および米国の労働生産性に関するデータを確認したい。経済協力開発機構OECD)で使われる労働生産性の指標は、労働時間1時間当たりの国内総生産GDP)だ。2015年のデータを比べると、日本の42ドルに対し、米国は68.3ドル、フランスは65.6ドルである。

日仏の労働生産性にこれだけ差がついた原因は多々あるが、数字による裏付けが難しいものもある。例えばサービスの質がそうだ。東京とパリのレストランのサービスを比べれば、この違いはすぐに実感できるだろう。サービス部門での労働生産性の測定方法には問題がある。測定方法は日本に不利に働いており、高水準のサービスや顧客満足度が統計に反映されていない。

他の原因の一部は社会的なものだ。日本と違いフランスでは生産性の低い労働者は労働市場から排除されている。そのために社会的・経済的費用が生じているが、この費用は日仏の労働生産性を比べる際に考慮されていない。

筆者らの調査から判明したのは、重要な原因が働き方、具体的には労働時間と労働形態にあるということだ。まず労働時間について言えば、フランスの「バカンス」のような長い休みは、日本人には大変奇異に映るかもしれない。またフランスは週35時間労働の国としても有名だ。だがこの2つの慣行が労働生産性を高める隠れた要因であることがあまり理解されていない。

年間労働時間を比べてみよう。17年のOECD統計によると、フランスは年1514時間に対し、日本は1710時間、米国は1780時間だ。ドイツは1356時間とさらに短い。フランスでは週35時間労働改革に伴い、年間労働時間の上限の導入など労働条件の見直しも実施された。

同僚のフィリップ・アスケナジ氏はこれを「新スタハノフ主義」と名付けた。驚異的な労働生産性の向上をもたらし、1930年代にスターリンから労働英雄に祭り上げられたロシアの名高い炭鉱労働者スタハノフに由来する。

労働形態が生産性にどのように寄与しているのかを理解するには、細部に注目する必要がある。ただ筆者の知る限り、労働形態が生産性に及ぼす影響を分析できるような詳細なデータは存在しない。そこでフランスの労働形態が生産性にプラスの効果をもたらしていることを示すいくつかの事例を取り上げたい。

その一例が昼休みだ。一部の仏企業は、午後の生産性が低下することに気づき、従業員に最低1時間の昼休みをきちんととらせている。また従業員の集中力と生産性を高めるため、勤務時間中に複数回の休憩の導入を試みる企業もある。日本でも一部の先進的企業がこの慣行を取り入れ、従業員の仕事満足度や生産性の面で成果を上げている。

労働形態に関しては政府にも効果的なインセンティブ(誘因)を導入する責任があるが、最終的には個々の企業の問題と言える。日本企業は文化を変えていくべきだ。

以上の日仏の違いを踏まえると、仕事満足度の格差もよく理解できるだろう。内閣府の調査では、フランス人労働者の69.6%が満足しているのに対し、日本人労働者は46.1%にすぎない(図参照)。

異なる測定方法を採用した国際社会調査プログラム(ISSP)による15年の仕事満足度調査でも、現在の仕事に満足している労働者の比率はフランスで31.4%以上、日本では16%未満だ。同調査は仕事の満足・不満足の理由を詳細に調べており、日仏の違いが一段と浮き彫りになる。

彼我の差を雄弁に物語るのは「仕事を増やして報酬も増やしたいか」「報酬が減っても仕事を減らしたいか」という質問に対する回答だ。フランス人回答者の42.3%以上が第1の質問にイエスと答える一方、第2の質問にイエスと答えたのは5%未満。これに対し日本人回答者で第1の質問にイエスと答えたのは33.3%未満、第2の質問には10%以上がイエスと答えた。

そして仕事満足度の高さが労働生産性にプラスに作用することは複数の調査で確認されている。もちろん好影響を与えるのは生産性に対してだけではない。例えば日仏の出生率の差は、労働時間と労働形態を考慮しなければ説明できないだろう。仕事と家庭の好ましいバランスにとってこの2つの要素が重要な役割を果たすことは、社会学者の多くの研究が示している。

日本企業は賃金の抑制および正規・非正規の差別化による労働コストの圧縮と、労働生産性の向上に同時に取り組んできた。そして筆者のみるところ、前者には予想以上に成功したが、後者には失敗している。日本経済は、労働者の満足度改善が企業にとっても経済全体にとっても多大なメリットをもたらす段階に達していると考えられる。

この段階に達した経済ではもはや近視眼的な企業寄りの政策をとるべきではない。このことは賃金政策にも、働き方全般、具体的には労働時間と労働形態に関する政策にも当てはまる。企業は高い仕事満足度が労働者の意欲に、ひいてはその生産性に寄与することを改めて認識すべきだ。

福利厚生も仕事満足度と密接な関係がある。他国では福利厚生の重要性が認識されているが、日本では忘れられているようだ。米国に関してはベンジャミン・アーツ米ウィスコンシン大准教授が10年に発表した論文「福利厚生と仕事満足度」が興味深い。

現在の働き方改革は正しい方向に向かっているが、まだ十分ではない。第1の問題は従業員の待遇の平等が守られていないことだ。その典型が「ホワイトカラー・エグゼンプション(脱時間給制度)」だ。第2の問題は企業レベルで実際に改革をどのように進めるかということだ。

今後日本企業は、相いれない2つの戦略のどちらかを選択しなければならない。1つ目は賃金の抑制を続けて、中国との労働コスト格差の縮小を目指す戦略だ。2つ目は働き方を変えて、フランスなどOECD諸国との労働生産性格差の縮小を目指す戦略だ。

日本企業は自らの過去から学ぶことができるだろう。中村隆英・東大名誉教授や南亮進・一橋大名誉教授による歴史的著作で検証されているように、60〜70年代には労働コストを増やしたことが、その後のイノベーション(技術革新)を促した。こうした経験に今こそ学ぶべきだろう。

○日本の労働生産性は米仏を大きく下回る
○勤務時間中の休憩導入も集中力向上に益
○賃金抑制よりも適切な労働コスト拡充を

Sebastien Lechevalier 73年生まれ。経済学博士。専門は日本経済。パリ日仏財団理事長