藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

読書の醍醐味を考える。

ツタヤが限りなく本の装丁に近い電子書籍を発売したという。

便利さよりも紙の本ならではの「没入感」を重視したという。

そこまでするのなら、もはや本物の書籍でいいのでは?と思うくらいのこだわりの世界だ。
「今まで電子書籍はNGだったマンガ家の先生の中にも『この端末ならいい』という方も出てきている」という。

そして。
「限りなく紙に近づいた電子書籍」が実現すると、今度は逆襲が始まる。

つまり「紙で読んだ満足感」があるのに「かさばらない」という夢のような状況が出現する。

先日も、読書家の飲み屋の亭主の一言。
「もう部屋に置き場がないから、最近は書店に行かないようにしています。」
これでは寂しい。
デジタルの挑戦はまだまだ余地がある。

外見は完全に本 マンガ全巻を収録する電子書籍の狙い
TSUTAYAがコミック全巻を収録した電子書籍端末「全巻一冊」を2018年7月14日に発売した。読み心地から読後感まで限りなく紙のマンガに近づけているのが特徴だ。

開くと自動で立ち上がる。起動までの所要時間は約7秒
 今回販売するのは東京のSHIBUYA TSUTAYA、銀座 蔦屋書店、TSUTAYA BOOKSTORE 五反田店、大阪の梅田 蔦屋書店、福岡の六本松 蔦屋書店の5店舗で、本体は各店200台、計1000台を用意した。
■全巻一冊の売りは「アナログ感」
 全巻一冊の本体はA5版サイズに7.8型の電子ペーパー2枚を埋め込んでいる。外装は紙で作られ、表紙カバーもあるため、手触りもたたずまいも紙のマンガそのもの。思わずページをめくる人も続出しているという。
 また、「本来、本にはケーブルがつながっていない」(全巻一冊を開発したプログレス・テクノロジーズの小西享取締役)という理由から、あえて単4電池を採用。「(充電して使う)バッテリーは数年で劣化するが、単4電池なら半永久的に使える」(小西取締役)。さらに、既存の電子書籍クラウド上から作品をダウンロードするのに対し、あえてSDカードでコンテンツを追加する「カセット式」を採用した。
 なぜここまでアナログ感を重視するのか。「スマホが老若男女問わず使われているのに対し、電子書籍がそれほど普及していないのはなぜかを考えたことがスタートだった」と、小西取締役。そして、便利さを追求し過ぎたのが間違いだったのではないかという考えから、便利さよりも紙の本ならではの「没入感」を重視したという。
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 「子供の頃、マンガを読んでいると作品の世界に引き込まれ、読み終わると現実世界に戻されたようで寂しかった。でも、スマホでマンガを読んでもその『没入感』は得られにくい」(小西取締役)
 紙の本を持ったときの感覚に近づけるため、本体の角もわざわざ0.3mm削っているという。重さ、画質、装丁などの要素が組み合わさって、紙の本と錯覚する作り。コミック100巻をまとめて読めること、コンパクトに収納できることなどももちろん魅力だが、それよりも本質的な読書体験がポイントというわけだ。
電子書籍NGのマンガ家も「この端末ならいい」
 第1弾のラインアップは「沈黙の艦隊」&「ジパング」のほか、「シティーハンター」「北斗の拳」「ミナミの帝王」の4つ(各作品1000セット限定)。18年8月以降も新たな作品を順次リリースする予定だという。「何回も読みたい作品、このデバイスで体験してほしい作品を選んだ」(作品セレクトに関わった「仕掛け番長」の異名を持つTSUTAYAの栗俣力也氏)
 ずばりターゲットは昭和生まれの男性だ。「全巻一冊は紙のような装丁のため、自分だけの癖がついて、本として自分だけのデバイスになっていく。その一方、紙のマンガはどんどん黄ばんでいくが、電子書籍だとそれがない。特に『沈黙の艦隊』は全巻をきれいな状態で読めるのが貴重」(栗俣氏)という。
 さらに、「今のマンガはスマホで読むことを想定してコマ割りが大きいものが多いが、昔の良作は1コマの情報量が多い。それを紙のマンガと同じように味わえるため、今まで電子書籍はNGだったマンガ家の先生の中にも『この端末ならいい』という方も出てきている」(栗俣氏)。

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全巻一冊(本体価格は税別3万5000円)はコンテンツを収録した「カセット」が別売り。第1弾のラインアップは「沈黙の艦隊(32巻)」&「ジパング(43巻)」(かわぐちかいじ講談社、同3万7500円)、「シティーハンター(32巻+読み切り2話)」(北条司ノース・スターズ・ピクチャーズ、同1万9700円)、「北斗の拳(18巻/日米版)」(武論尊原哲夫ノース・スターズ・ピクチャーズ、同1万5300円)、「ミナミの帝王(100巻+利権空港編3巻)」(天王寺大郷力也日本文芸社、同1万円)の4作品。作品の価格はいずれも本体を含まず、カセットのみ
 今回の全巻一冊はネットや電話では購入できず、あくまでも店頭での申し込みのみ。「昔の本屋は目的なくふらっと行って、何かを発見できる場所だった。しかし今は目的の本を買うだけで帰る人が多い。だからこそ、書店で新たな体験を提供したい」(小西取締役)という。
(ライター 吉田理栄子)
[日経クロストレンド 2018年7月20日の記事を再構成]