藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

すべての働く人へ

そもそも「専門職」とか「士業・ライセンス」はその専門性を担保される存在だった。
今でも専門性の高い職種はたくさんあるけれど。
しかし「国が免許を与えるライセンス」がこれからITが代替することは疑いようもない。

運転免許も、税理士や弁護士も、教師ももうIT技術と無縁ではいられない。
それどころか「農家」とか「製造業」もロボット化とのせめぎ合いだ。
ホワイトカラーの人たちも、一体どこまでが「自分たちじゃないとできないこと」なのかは甚だ自信がなくなってきた。

すべての働く人が、一度自分の仕事を見つめ直す時代になったのだ。
ヘッジファンドのマネージャーでも、政治家の政策秘書でも、大企業の社長でも、行政のトップでも。

いざ冷静に考えてみれば、どれほど「形式作業」に絡め取られてきたのかと思うのではないだろうか。
(自分はそう思った)

ITの台頭を機に、自分の現在と、そしてこれからを考え直すいい機会ではないかと思う。
自分は果たして「何かの部品」になっていないだろうか。
進んで「部品か」しているのなら本望だと思う。

異色の東大卒「医師起業家」が医療を変える
医師であり、起業家。2つの顔を持つ「アントレドクター」が増えている。医師がスタートアップを立ち上げる理由は、単に金もうけのためではない。医師ならではの視点で新たなビジネスモデルを提案し、患者や医療現場が抱える課題の解決を目指す。第1部は国内最難関の東京大学医学部を卒業したアントレドクターに焦点を当てる。
「こちらに入力してください」――。神経内科や内科などを持つ目々沢医院(東京・江戸川)の受付では、初診の患者に紙の問診票ではなくタブレット端末を手渡す。
患者はアプリの指示に従って、画面上で選択肢を選んだり、入力したりする。頭痛なら「どんな風に痛いのか」といった問いに順番に答える。

データは医師のパソコンに送られ、そのまま電子カルテの下書きとなる。紙の問診票なら15分ほどかかっていた診察時間が半分に短縮できるという。目々沢肇院長は「後は診察時に補足するだけでカルテが作成でき、患者と向き合う時間が長くなる」と満足げだ。
この「問診アプリ」のサービスは、医師の阿部吉倫氏(28)が共同代表を務めるスタートアップ、ユビー(同・中央)が開発した。患者が質問に回答すると、内容に応じて次の質問が変わる。医学論文などを基に学習した人工知能(AI)が回答を分析。疑われる病名も、確率・統計モデルを踏まえた独自の予測アルゴリズムで導き出す。
救急医療が出発点

問診アプリの事業化は、阿部氏が医療現場で感じた嘆きが出発点だ。
「全然帰れない」。東大医学部を卒業、救急医療の研修医として勤務し始めた阿部氏が直面したのが、カルテ記入などの膨大な事務作業だった。
診察時に患者と対話を重ねようとしても、カルテを書きながらでは限界がある。まもなく「診察時は下書きにとどめ、残りは勤務シフトの交代後に仕上げる」作戦に切り替えたが、朝から晩まで仕事をした後、記入に追われる日々が続いた。
医療の現場はもっと効率化すべき。そう感じた阿部氏は、友人で東大大学院でシステムを研究した久保恒太氏(28)に相談。2人で17年5月にユビーを創業し、問診アプリを事業化した。
阿部氏は今はユビーの仕事に軸足を置き、医師としては月に2回ほど非常勤で勤務する。「医師として時間をかけて新たな治療法を生み出すことも大事。でも医師を事務作業から解放できれば、もっと重要な仕事ができる」。そう考え、医療現場の改革を後押しする。5月には関西電力から出資も受けた。今後は病名予測技術などの海外展開も視野に入れる。
国内には国公立大と私立大を合わせて80余りの医学部がある。募集定員の総数は1学年で1万人弱に上る。その中で東大医学部医学科は入試難易度で最難関(理科三類)。募集定員はわずか100人程度にすぎない。
近年、そんなエリートコースを歩みながら、一般的な医師のキャリアパスを外れ、あえてビジネスの世界に乗り出す人材が相次いでいる。
メドレー(同・港)の豊田剛一郎氏(34)は、脳外科医として勤務したが、「過酷な労働条件と人手不足など課題が山積している」と感じた。そこで「いったん外から医療の現場を見直したい」と米マッキンゼー・アンド・カンパニーに入り、ヘルスケア業界のコンサルティングに従事。その後15年2月にメドレーの経営に加わり、共同代表に就任した経歴を持つ。
豊田氏が医療現場の改革とともに課題に据えるのが「患者にとって医療を身近なものにすること」。オンライン診療アプリを開発し、16年2月に提供を始めた。患者はスマホビデオチャットで診察が受けられ、薬も郵送で受け取れる。通院や待ち時間の緩和につながる。医療過疎問題の解消にも期待が大きい。
豊田氏はクラウド型の電子カルテで病院の管理負担を減らす仕組みや、オンライン医療事典など新サービスを次々と投入。「医療のあり方を変える」と力を込める。
集う若手医師


かつての「白い巨塔」は徐々に変わりつつある。医療情報サービスのエムスリーが4月に実施した調査によると、医療機関の開業以外で「起業する予定」「起業したい」と答えた人は開業医で12.5%、勤務医で18.3%と5人に1人に上った。医師の間での起業マインドの広がりが、アントレドクターの登場につながっている。
メドレーの豊田氏のもとには、医療事業に関心を持つ若手医師らが集まる。アイリス(東京・千代田)社長の沖山翔氏(32)もその1人だ。
沖山氏は東大医学部で豊田氏の1年後輩。日赤医療センターの救急医などを経て、15年にメドレーに入社、執行役員としてAIで症状を分析する「症状チェッカー」などのサービスを開発した。その経験を基に17年11月、アイリスを設立した。
「それまで『病院の外』を知らなかった。メドレーでの経験がなければ、起業はできなかった」。沖山氏は振り返る。
アイリスはAIを活用した医療支援機器を開発中。「まだ詳細は明かせない」というが、「すべての医師の体験を集合知化する」ことを目指す。実現すれば、専門医が何十年もかけて会得する診断技術を、専門外の医師でも高度に再現して患者に提供できるという。
救急医は幅広い領域をカバーし、目の前の命を救わねばならない。ただ実際の現場では、救えなかった命がいくつもあった。「専門の医師がいたら救えたのではないか」。そんな思いが、沖山氏を起業に走らせた。
多くの医療機関では、医師が主要な地位に就き、発言力を高めるまで何十年もかかる。それまでは臨床現場で経験を積むのが一般的な医師のキャリアだ。対して東大医学部卒のアントレドクターらに共通するのは、「何十年も待てない」「今すぐ医療に貢献したい」という、熱意とも焦燥感ともとれる思いだ。
医療やヘルスケア分野のスタートアップに詳しいグリーベンチャーズの根岸奈津美氏は「事業の立ち上げには時間がかかる。(収益化できるまで)ファイナンスし続けることも重要」と指摘する。医師とビジネスパーソンの肌感覚を併せ持ち、挑み続ける姿勢こそが、アントレドクターに必要な資質といえるだろう。
医療に関わるスタートアップの立ち上げは容易ではない。人の命に関わるだけに法律や国の制度など規制も厳しい。
若いアントレドクターによる挑戦のうねりが点から線、そして面に広がるとき、きしむ日本の医療の効率化に向けた道すじが見えてくる。
(企業報道部 諸富聡、佐藤史佳、松本千恵)