*[ウェブ進化論]これからが成長。
日経産業、瀕死の状況から奇跡の回復を遂げたノキア会長のインタビュー。
「様々な可能性を考え、事業変革のシナリオを作り、そのうえで楽観的になることだ。デジタル変革時代は今の事業を自ら否定していかなければ、誰かに変革されてしまう。それは日本の大企業にも当てはまるだろう」
全くその通りだと思う。
これって大企業だけでなく、自分たちのような中小・個人にも当てはまるだろう。
・可能性を考える
・シナリオを立てる
・楽観的になる
・自己否定する
実にシンプルで感心する。
でも本当に自分たちにできるだろうか。
会長は指摘する。
次世代通信規格『5G』が普及すれば、こうした産業にもデジタル変革の波がやってくるだろう」
さらにはその後に先進国の「サービス業」が待っている。
まだまだこれからが成長の時代だ。
ノキア・シラスマ会長「自らの事業、否定する力を」
2019年9月18日 4:30
最新の情報技術(IT)により事業モデルを変革する「デジタルトランスフォーメーション」への関心が高まっている。ビジネスを見直すにはどんな技術や事業戦略が必要なのかを。欧米の有力IT企業の経営トップにその秘訣を語ってもらう。初回は瀕死(ひんし)状態だったフィンランドの通信機器大手、ノキアを復活させたリスト・シラスマ会長に聞いた。
Risto Siilasmaa 1966年フィンランド生まれ。ヘルシンキ工科大理学修士修了。88年にウィルス対策ソフトのFセキュアを創業し、99年に上場。12年にノキアの会長兼暫定CEOに就任。携帯端末世界最大手だったノキアを通信機器大手に衣替えし、同社復活の道筋をつけた。
成功体験で組織が硬直化
――著書「NOKIA 復活の軌跡」が話題となっています。
「世界の携帯電話市場を席捲(せっけん)したノキアはスマートフォンの登場というデジタル変革によって一時は死んだといわれた。そこから大手通信機器メーカーとして復活するまでの経緯を今の社員や世界の経営者と共有したいと思った」
――ノキアの失敗の原因は何だったのですか。
「要因は色々あるが、最大の理由は携帯電話で世界シェアトップになった成功体験により組織が硬直化し、大胆な変革に踏み出せなくなったことだ。ゴムやパルプの製造から、世界最大の携帯端末メーカーになった自信が、スマホへの転換を遅らせた。企業文化の問題が一番大きい」
「米アップルのようなタッチパネル方式の端末も開発していたが、市場調査では需要は5%しかなかった。今のスマホの成功は誰も予想していなかっただろう。それからノキアではハードの開発が優先し、ソフトは付随的なものだった。それをソフト中心に変えたのがアップルだった」
携帯端末会社時代の社員は1%以下
――ソフト会社出身の社外役員として、なぜ当時は進言できなかったのですか。
「私が取締役会に招かれたのはリーマン・ショック後の2008年。まだ40歳で、エリートばかりが並ぶ役員にものが言える雰囲気ではなかった。結局、スマホ進出を決めた時には韓国のサムスン電子などから2年遅れていた。米グーグルの携帯用OS『アンドロイド』を採用する案もあったが、後発になることを嫌い、米マイクロソフトの『ウィンドウズフォン』を採用したが、それが間違いだった」
――会長兼暫定最高経営責任者(CEO)に12年に就任しました。
「経営が迷走した責任は社外役員の私にもあり、取締役会の要請に応えることにした。都合の悪い情報が上層部に上がらない企業文化を改めることから始め、端末事業はマイクロソフトに売却することにした。代わりに独シーメンスとの合弁事業となっていた基地局事業を買い戻し、別の通信機器メーカーを買収して事業内容を入れ替えようとした。携帯端末会社時代の社員は1%もいない」
経営トップ、自らが変革先取りを
――大胆な事業変革はどうすれば可能ですか。
「様々な可能性を考え、事業変革のシナリオを作り、そのうえで楽観的になることだ。デジタル変革時代は今の事業を自ら否定していかなければ、誰かに変革されてしまう。それは日本の大企業にも当てはまるだろう」
「米AT&Tから我々の傘下に移ったベル研究所の調査によると、金融やメディアなどデジタル化が進んだ30%の業種は年率平均2.8%成長しているのに対し、残りの製造業や物流は0.8%しか伸びていない。次世代通信規格『5G』が普及すれば、こうした産業にもデジタル変革の波がやってくるだろう」
「海運業界ではモノを運ぶコストより書類の処理コストの方が高いそうだが、今までの事業モデルはデジタル化で大きく変わる。そうした時代に生き残るには経営トップ自らがオープンに構え、変革を先取りしていく必要がある。ノキアも今後は携帯事業よりそうした企業のデジタルトランスフォーメーションのお手伝いを事業にしていく」
[日経産業新聞 2019年8月28日付]