藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

生き残れるか

*[ウェブ進化論]リアルの追求。
伊勢丹本店が高級路線に走るという。
複数のブランドの紹介や「3Dプリンタで作る靴の中敷き」や「自分の足の計測」などがウリらしい。
さらには高額品コーナーではバーも設置されているというからもう、お買い物というよりは「複合体験」の提供ということだろう。
 
服もアクセサリーも靴も、みんな個別にはネットで買える時代に「さあお買い物に出かけようか」という層はどれほどいるだろうか。
amazonが百貨店のようなモールを作り出すのはそう遠くないだろうから、そうした時代に「なお行きたい」と思わせる仕掛けには届かないように思う。
 
自分なら「いろんなカジュアル&中価格帯の飲食店」と連携するくらいのことしか思いつかないけれど、いずれにしても路面店以外の小売業というのは存続が厳しい時代になると思う。
こういう苦しみから「リアルでなきゃダメもの」をいかに編み出していくかが課題になるだろう。
 
「カジュアル&高級屋台村」にするくらいしかないのではないだろうか。
 
伊勢丹本店、技術の力借りて「おもてなし」を向上
 
2019年9月22日 2:00

 
婦人靴フロア、ジュエリーショップがリフレッシュオープンした伊勢丹新宿本店本館

日経クロストレンド

2019年3月から段階的に進められている伊勢丹新宿本店のリニューアル。19年8月28日には本館2階婦人靴フロアと4階ジュエリーショップがリフレッシュオープンした。リアル店舗ならではのおもてなしを柱に、3D計測器などの技術を活用した商品提案を実施。ジュエリー売り場も高級感を増した。
 

EC時代、百貨店ならではの「おもてなし」を追求

2012年以来7年ぶりの大規模リニューアルとなった「婦人靴フロア」の目標は、「おもてなしの向上とデジタルの融合」(三越伊勢丹婦人・雑貨・子供MD統括部新宿婦人雑貨営業部計画担当長兼カスタマー担当長兼オペレーション担当長の沖田篤史氏)。高級ブランド商品を紹介する「プレステージゾーン」のブースを120%拡大したうえで、ブランドを横断して比較購買ができるよう、これまで一部はブランドごとに区切っていた仕切りを取り払った。ブランドごとに配置していた販売員も、ブランドの垣根を越えた接客が可能になったという。

 
本館2階の婦人靴フロアに登場した「IT SHOESコーナー」では、旬のラグジュアリーブランドを集めてテーマに沿った商品をセレクトし、ブランドミックスで紹介する
そもそも百貨店の強みである「おもてなし」にスポットを当て、その向上を改めて打ち出した背景には、電子商取引(EC)の台頭という流れがありそうだ。
 
「今はECで誰でもいつでも買い物できる時代。そこで百貨店というリアル店舗ならではのおもてなしとして、ラグジュアリーブランドのゆったりした空間づくりなどに注力した。売り場にはセレクトゾーンを設け、例えば今はレオパード(ヒョウ柄)をテーマに、ブランドミックスでレオパードの商品をセレクトして紹介するコーナーも設けた」(三越伊勢丹特選MD統括部婦人靴マーチャンダイザーの松村佳美氏)
 
ゆったり感や華やかさが増した婦人靴のフロアで、ひときわ目を引く機械がある。どこかオブジェのように売り場に溶け込んでいる3Dプリンターだ。今回のリフレッシュオープンでは、おもてなしの一環として、テクノロジーを活用した靴の新たな買い方をいくつか提案。その1つが、デンマーク発のシューズブランド「エコー」のブースで提供するオーダーサービスだ。

 
その場でミッドソールを作るための3Dプリンターが、ラグジュアリーな婦人靴売り場に意外にマッチしている
オーダーとはいえ、カスタマイズするのは靴そのものではなく、エコーのスニーカーの底と中敷きの間に挟むミッドソール。センサーが入った特殊な靴を履いて約30秒歩くと、コンピューターが足の形のデータと歩き方のデータを解析し、その人の足や歩行に合ったミッドソールを売り場の3Dプリンターで作成する。完成までに1時間ほどかかる。
 

3D足形計測で最適なパンプスを提案

もう1つの靴の新たな買い方の提案は、パンプス売り場で展開する「足からはじまるパンプス選びサービスyour FIT 365」。専用の装置に足を入れるだけで、3D足形計測で足のデータを収集。最適なパンプスとマッチングさせる新サービスだ。

 
「your FIT 365」の測定器に足を入れると、またたく間に足の各サイズや形の特徴などが測定される
三越伊勢丹婦人・雑貨・子供MD統括部新宿婦人雑貨営業部セールス(婦人靴)セールスディレクターの鈴木悠太氏によれば、「(売り場では)パンプスが痛くて困っているという声や、足に合うパンプスに出合ったことがないという声をよく聞く。だからといって、歩き心地が良ければデザインは二の次というお客様は少ない。そうしたお客様に向けて、デザイン性と歩きやすさが両立するパンプスを、婦人靴ショップの1000種類の既製品から提案していく」とのこと。
 
計測した足のデータや推奨した商品のリストは顧客のスマホアプリでも参照でき、帰宅後オンラインでも購入可能だ。これによりECとリアル店舗がシームレスにつながる。
 
ちなみに日本人の足の形も、時代によって変化している。かつては足が幅広甲高で合う靴がないと悩む人が多かったが、現在は逆に足の幅が狭すぎるため靴が合わないという人も増えてきたという。足の形も多様化する時代、単に「○○センチ」といった長さだけで靴を選ぶ時代は間もなく終わりを告げそうだ。
 

壁の向こうに現れた特別サロン

今回のリニューアルでは、本館4階のジュエリーショップもリフレッシュオープンした。こちらもラグジュアリーブランドのエリア面積を拡大し、これまで扱いのなかった高額ジュエリーも販売。そうした逸品を顧客に紹介するため特別なサロンも用意するなど、特に富裕層向けサービスが充実した。

 
本館4階のジュエリーフロアの壁が扉に。奥には高額ジュエリーを紹介するサロンが現れた
普段は壁となっている部分の扉を開くと、そのサロンが現れる。大理石の床に高級な内装を施し、奥にはバーカウンターも設置されている。一般の売り場では扱わない数千万円クラスのジュエリーも紹介されるスペースだが、予約は誰でも可能だという。

 
サロンの内部にはバーカウンターも設置。誰でも予約できるという
「トレジャーハントサービス」と呼ばれるサービスでは、売り場を飛び出して顧客の夢や憧れをかなえるサポートも行う。ジュエリーだけでなく「このドレスに合うジュエリーやバッグ、靴一式の相談をしたい」など、アイテムの枠を越えたリクエストの相談にも乗る。具体例として、「特殊な宝石素材のインテリアがどうしても欲しい」という顧客の要望に対し、販売員が海外に同行。素材調達からメーカーとのやり取りまで伊勢丹が請け負い、究極のラグジュアリーインテリアを手掛けるケースもあるという。
 
(ライター 福光恵)
 
[日経クロストレンド 2019年9月5日の記事を再構成]