藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

これからの予測。

日経より。
まずはクイズから。

最近の企業の投資事例のうち、国内総生産(GDP)統計の設備投資に含まれるものはどれか。
 (1)ソフトバンクが大手アームを3.3兆円で買収
 (2)トヨタ自動車シリコンバレー人工知能(AI)の研究所を新設
 (3)東レ大津市に新設する研究所で新素材を研究開発
 (4)三越伊勢丹ホールディングスが銀座店の一部を訪日客(インバウンド)向け売り場に改装

答えは下に。







((4)ですが)
それはともかく。

GNPがGDP統計に主役の座を移ってからもう三十年余り経つ。
いわゆるグローバル化している今に必要な指標は何だろうか。
三十年も経つと、いろんな基準が変わってくるし、困ったことに「今を捉える指標」ていうのがズレてくると思う。

「今を捉える」というのもそれが正しいのかどうか?
と考えるとそれは「今のスタンダード」でしかなく、

そうして体制を疑うとようやく「そもそもの経済」とか「そもそもの成長ってなんだろう」ということに思いが至る。

株、為替、経済成長率、設備投資、公共投資、消費者物価、などなど。
その指標を利用してマクロ政策を考えようとする政治家や官僚もいる反面、
その指標を使って投資を加速しようとする人も多い。

自分は投資の才能はなさそうだが、本当に「考えた投資」を志向するのなら、自分なりに世の中を見る「独自の指標」を持つべきではないだろうか。

つまり「他人と同じ指標をこねくり回していたり、傾向分析」をしていても成功はしにくいのではないだろうか。

そう考えると、運用する金額の多寡はともかく、『自分の考えを組み立て、自分の投資ルールを組み立てる』という方が、決まりきったマニュアルを見ながらする投資よりはよほど面白いに違いない。

投資も本当の自己責任の時代になるだろう。

民間投資 意外と活発?
GDP統計、実態つかめず 研究・M&A含まず

2016/8/8 3:30日本経済新聞 朝刊
 民間投資は力強さを欠いた状況にある――。政府が2日に決めた経済対策はこんな表現で始まる。景気がもたつくなか、政府の言い分は当然のように聞こえる。だがソフトバンクグループが3.3兆円で英企業を買収するなど、活発な投資の動きがみられるのも事実。企業側は政府が言うほど投資は落ち込んでいないと主張する。実態はどうか。(藤川衛)

 まずはクイズから。最近の企業の投資事例のうち、国内総生産(GDP)統計の設備投資に含まれるものはどれか。

 (1)ソフトバンクが英半導体設計大手アーム・ホールディングスを3.3兆円で買収

 (2)トヨタ自動車シリコンバレー人工知能(AI)の研究所を新設

 (3)東レ大津市に新設する研究所で新素材を研究開発

 (4)三越伊勢丹ホールディングスが銀座店の一部を訪日客(インバウンド)向け売り場に改装

中身で分類
 正解の前に数字を確認してみよう。1〜3月期のGDPでみると、実質の設備投資は前期比0.7%減と3期ぶりに減少した。内閣府が15日に発表する4〜6月期の設備投資もマイナスになったとの見方が出ている。この数字からは力強さは感じられない。

 GDPは「国内」総生産という名の通り、国内の経済活動を示す。(1)と(2)は日本企業の投資活動には違いないが、お金の行き先が海外なので間違いとなる。正解の候補は(3)と(4)に絞られた。

 投資が国内向けであってもGDPに入るかどうかは中身次第。店舗改装や研究所の建物を造るといった行為は設備投資になるが、(3)の研究所で行う研究開発費は含まれない。GDP統計は研究開発費を企業の経費とみているためだ。インバウンドという「海外需要」を取り込む狙いだが、クイズの正解は(4)となる。

 GDPの設備投資に計上されるのは、工場で使う機械設備やオフィスのパソコンやソフトウエアなどだ。2015年度は72兆円で、GDP600兆円を目指す安倍政権はこれを80兆円に引き上げたい考えだ。企業の内部留保が360兆円を超えるのに、投資や賃上げにお金を使っていないという不満が政府にはある。

 経済団体の首脳らを集めた昨年の官民対話で、政府は企業に投資の増加や賃上げを要請した。これに対し、経団連榊原定征会長は「企業は内部留保を増やして投資に消極的といった声も聞かれるが、研究開発や海外投資も含めて考えると決してそうではない」とくぎを刺した。政府とは「投資」についての考えが微妙に異なるようだ。

別の物差し必要
 多くの企業は研究開発にお金を使ったり、著作権やブランドを買ったりすることも投資と認識している。最近活発になっているM&A(合併・買収)も企業にとっては投資だ。みずほ総合研究所によると、研究開発やブランドなどすぐに「モノ」にならない投資は25兆円に上る。M&Aでの株式の取得なども含めると、GDPの設備投資に計上されない投資は35兆〜40兆円ある。

 企業の利益の源泉がモノの生産から配当や知的財産に広がっているにもかかわらず、GDP統計では投資の変化を捉えきれない。これが官民の認識ギャップを生んでいる。研究開発費は遅まきながら7〜9月期のGDP改定値から設備投資に計上されることになった。

 成長率を測るGDP統計そのものも経済構造の変化を十分に反映しているとはいいがたい。

 例えば、冒頭のクイズの(1)や(2)のような海外投資は、配当などを通じていずれ企業の収益になる。こうした海外での稼ぎを反映する統計に国民総所得(GNI)というものがある。海外での利益も含めて国民がどれだけ豊かになったかを示す指標で、GDPよりも広い概念だといえる。

 15年度のGDPの伸び率が0.8%だったのに対し、GNIは2.5%増えた。グローバル化が進むなか、専門家の間ではGNIを重視すべきだという考え方も強まっている。GDPを巡っては、日銀が独自に推計した数値が公式統計と異なるなど、正確性に関する議論も湧き起こっている。

 政府は経済対策で低金利を生かした財政投融資などで「未来への投資」を引き出すとした。みずほ総研の高田創チーフエコノミストは「経済対策はGDP押し上げを狙ったものばかりで、研究開発を後押しする税制改革など企業の実態に合わせたものになっていない」と主張する。物差しを替えると、より有効な処方箋がみえてくる。