藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

経営はオリジナル

 
*[経営]マネるのではなく。
日経MJより。
日本企業には珍しく営業利益率の高い会社について。
トップのオービックの話を聞いて驚いた。
「ターゲットは中堅企業」「開発はすべて自社で」「販売は直販のみ」「ほとんどが新卒社員から」「営業とSE職はマルチで経験」。

 どれを取っても既存のセオリーとは違うことだが、その「逆張り」を徹底した経営者が成功している。

 
他の「アカツキ(ゲームソフト)」「東海カーボン」の戦略を見ても、誰もが思いつかないあり得ないものではない。
もちろん「逆張り」ばかりしていたものでもない。
それぞれ自分たちの持つ「持ち味」を分析し、そこに「工夫」をしていくことで「自分なりのオリジナル」を編み出していったことがわかる。
ということは自分たちの足元にも、そんなチャンスはあるのに違いない。
他の成功者のマネをするのではなく、「自分なりの独自性」を考えることに経営のヒントはありそうだ。
まだまだチャンスはいろんなところにあるのではないだろうか。
 
営業利益率5割超のオービック逆張り経営の秘密

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

欧米企業に比べ営業利益率が低いと指摘されることが多い日本企業。だが、営業利益率30%以上をたたき出す高収益な上場企業は東証1部だけでも62社(9月13日時点)ある。高収益を生み出す企業に共通する条件は何か。そこにはどんな秘密があるのか、探ってみた。
 

営業利益率、主要上場企業で6位

 
社員はほとんどが新卒採用でSEと営業、両方を経験する
オービックが大手IT企業と一線を画した戦略をとっている背景には、過去の失敗の教訓がある。オービックは現在は中堅企業をターゲットとしているが、実は2000年代中ごろから、大手企業にも販路を広げようとしていた。
 
規模が大きい大企業との案件では売り上げの上積みが期待できるほか、大規模なシステムを構築することで新たな機能や開発手法を編み出そうと考えた。ただその結果、多数のシステムエンジニアが必要になり、開発の外注も始めた。
 
これが裏目に出た。システム規模が大きくなれば発注企業からの要望も多くなる。中堅企業であれば相手先の担当者も限られ、開発過程のやり取りも多くはない。だが、大企業ではシステム開発に関わる担当者や部署が多岐にわたり、やり取りが煩雑になる。様々な要望や変更要請も寄せられるようになる。外部に開発を委託しているため、工程の管理も甘くなり、結果として不採算案件が発生した。
 
「事業を立て直してくれないか」。当時の経営陣からこう会社を託された橘氏は、07年に専務に就任した。まず、大手企業向け開発からの撤退を決めた。システムの細かい作り込みをやめ、外部に開発を委託せず、すべて社内で開発する仕組みに変えた。
 
システムエンジニアと営業担当を明確に分けて育成することをやめた。理系・文系を問わず職種別の採用をせず、入社後も社員がエンジニアと営業を担当するジョブローテションを取り入れた結果、「社員の担当替えは日常茶飯」(橘社長)だ。
 

代理店使わず直販営業維持

オービックでは営業でも販売代理店を利用せず直販体制を維持している。橘社長は営業のノウハウもすべて自社に蓄積することを狙った。ジョブローテーションで取引先とのやり取りも社内のコミュニケーションも円滑になる。一連の取り組みが業務効率を劇的に上げる結果につながった。
 
課題もある。中堅向けの市場が成熟化していることだ。システムのクラウド化など導入後の事業は今後も見込めるが、長期的に見れば新規顧客の獲得は難しくなる。海外市場はSAPなどが席巻し、日本とは競合環境が大きく異なる。
 
そこで狙うのが日本の大手企業だ。オービックにとっては経営効率が下がる市場だったが、構成をシンプルにするなど大型システムでも開発の手間を軽減できる仕組みを作ってきた。橘社長は「身の丈に合わず拙速だったと判断し大手向けから撤退した。それから10年間、体制を整えてきた。今は再び大手に販路を広げている」と意気込む。
 

スマホゲーム開発で営業利益率48%超

 
アカツキの塩田元規社長
10年にアカツキを創業した塩田元規社長は「ゲームの収益性はファン作りにかかっている。より多くの人に、より長く楽しんでもらうことが求められる」と話す。
 
スマホ向けゲームのコストは開発費の比重が高い。そのため、より多くのユーザーに、より長く遊んでもらえるゲームほど利益率が高くなる。
 
利益率を高めるためにアカツキが実施している戦略は3つある。まず、他社が既にIP(知的財産)を持つキャラクターを生かすものと、自社が生み出すオリジナルのキャラクターを展開する両輪でゲーム開発を回している。
 
例えば、他社IPではバンダイナムコエンターテインメントと「ドラゴンボールZ ドッカンバトル」の開発に携わった。世界的に有名なIPのゲーム化で製品はヒットした。「昔にはやったIPをスマホゲームとしてよみがえらせる。そのノウハウに強みがある」(塩田社長)

 
東海カーボンの長坂一社長
営業利益率30%を超える製造業は上場企業でも少ない。その中で、東海カーボンは18年12月期、売上高2313億円に対する営業利益が753億円、利益率が32.5%と急伸した。17年12月期が10.4%、それ以前は1桁台で推移していた。
 
突然、利益率が高まった要因は主力の黒鉛電極の需要が急増したことが大きい。価格が高騰し利益幅も大きく増えた。東海カーボン黒鉛電極の売上高は17年12月期の236億円から18年12月期は1021億円へと4.3倍に増え、営業利益も13億5000万円から560億円へと増えた。
 
黒鉛電極の特需の要因は主に2つある。ひとつは中国での需要が増えたこと。黒鉛電極は鉄くずを溶かして鉄をリサイクルする電気炉による製鋼で欠かせない素材。中国で環境規制が強化されたことなどで需要が急激に増えた。
 
もうひとつは、黒鉛電極の主原料でリチウムイオン電池の材料としても使われるニードルコークスが、電気自動車の市場拡大で高騰していることだ。東海カーボンだけではなく同業の日本カーボンの営業利益率も30%を超えている。
 
ただし、東海カーボンの場合、15年に実施した事業構造改革が功を奏した面もある。長坂一社長は「14年12月期の営業利益率はわずか3.2%。危機的な状況で、大規模なリストラを断行した」と振り返る。
 

特需に頼らない体制作り進める

同社は15年から数年かけて国内の黒鉛電極の製造拠点の生産能力を約4割削減した。代わって強化したのがタイヤの補強材に使うカーボンブラック事業だ。さらに、ドイツの炭素メーカーを買収し、海外事業を強化する。こうした一連の改革を進めていたところに黒鉛電極の特需が起きた。特需だけに頼らない体制作りを続ける。
 
オービックアカツキ東海カーボンはそれぞれ事業内容は大きく異なるが、高収益を生み出せる体質をいかに構築しておくか、そしてチャンスを逃さずつかんで結果を出した点で似ている。3社とも業界の常識にとらわれない施策を進めた結果といえる。高収益の秘密はそのあたりにありそうだ。
 
(企業報道部 宇賀神宰司)