藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

現場の問題に近づけるか

*[ウェブ進化論]ミクロの目こそが。
日経産業より丸紅の記事。
もはや(少なくとも日本の)大手企業ではイノベーションは起きないのではないかとさえ思う。
本部長の大本晶之氏は「社会課題に直結したテーマでは爆発的なイノベーションが起きている。新たな時間軸でそんな事業をつくる」と狙いを話す。 

 「社会課題に気づく」とか「その課題に向かう」ということが大手企業でできるのかどうか。

"そこ"こそは「細かい蟻さん」にこそアドバンテージがある。
高級官僚や政治家が「本当の課題」に出会えないのと似ている。
常に問題は現場にあり、その現場の声を「大きく集めて」課題が見えてくるのだ。
丸紅も従来の商社では構築できなかったビジネスモデルの創出に全社一丸で臨む必要がある。

 大手企業が本当のイノベーションに斬り込むのなら、現場に乗り込む発想が不可欠だろう。

そして今の若者は大手企業のエリート感よりも、そうした現場に興味を持つ人が多い。
興味を持つことがなければ「しばらく待とう」という彼らの態度はあながち間違ってはいないだろう。
就職してから「無理に自分たちの居場所を探す」ということを今の若者はしなくなっている。
 
丸紅 新ビジネス育つ土壌醸成 若手・組織の刺激に
 
2019年8月25日 4:30
 

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

丸紅が新しい商社のビジネスモデルを模索している。デジタル化などの事業環境の変化をにらみ、恒常的に新事業を生むしかけ作りに挑んでいる。
 
コンペから「スタートアップ支援」誕生
 
「友人のベンチャー企業の社長から『バックオフィスが悩み』と聞いた。自分の力が生かせるのではと思った」。丸紅の秘書業務の担当だった渡部麻里奈さん(28)は2018年度に丸紅が初めて開催した事業案コンテストに、同期入社で貿易事務担当の前田美翔さん(28)と組み応募した。
 
2人は一般職として丸紅に入社し、海外で活躍するような総合職の営業社員の後方支援が主な業務だ。渡部さんは「一般職は閑散期と繁忙期がはっきりしている。忙しくない時には、丸紅の外で役に立てるのではないか」と感じていた。

 
160件応募のあった事業案コンテストで、一般職女性の2人組みが勝ち抜いた(東京都中央区、ウィーワーク・ギンザシックス店の事務所内)
2人が提案した事業プラン名は「猫の手ガーデン」。猫の手を借りたいほど忙しいスタートアップ企業を、時間に余裕のある丸紅の計800人の一般職社員が事務支援するというコンセプトだ。同社としても時代の先端に挑戦する起業家とのつながりが深まれば、事業モデルの進化につながる可能性がある。
 
渡部さんらが活用したのは、丸紅が18年度から始めた業務の15%を新事業創出に充てられる「15%ルール」だ。18年10月から本業の合間にスタートアップ企業20社を訪ねてニーズを調べた。例えば、公的な助成金を取得するための書類作りといった作業も「データをまとめるのが得意」と話す前田さんが丸紅流の書類整理術を披露したところ、高評価を得た。
 
160件の応募が集まるなか、19年1月の事業案コンテストで「事業化挑戦チケット」を勝ち取った。4月からは次世代事業開発本部に転籍。現在は丸紅が間借りするシェアオフィスのウィーワークのギンザシックス店(東京・中央)で、今秋まで事業の具体化に向けた検討を進める。
 
丸紅は21年度の3年間で1兆2千億円の投資を計画する。このうち2千億円を現在取り組んでいない空白領域に投じる。
 
その新事業開発を主導するのがコンテストなどを所管し、19年4月に発足した次世代事業開発本部だ。若手を中心に国内外から自他薦で集まった100人規模のエース級が集まる。
 
柿木真澄社長は「10人や20人のインキュベーション組織では中途半端。やるからには本部という形式とした。ある程度の予算もつけた」と強調する。本部長の大本晶之氏は「社会課題に直結したテーマでは爆発的なイノベーションが起きている。新たな時間軸でそんな事業をつくる」と狙いを話す。
 
同本部傘下には5つの組織があり、それぞれの名称が方向性を示す。「アジア事業部」は東南アジアなどの中間層の取り込みを狙い、「次世代社会基盤事業部」は新都市開発などに取り組む。「ヘルスケア・メディカル事業部」は6月に同本部での第1号事業として、ロシアのハバロフスクに予防医療の健診センターの新設を決めた。
 
「新事業開発部」では、6月に新設したコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を所管。米シリコンバレーエストニアの駐在員が目利き役となってCVCを通じて外部技術を取り込む。「デジタル・イノベーション室」では15%ルールや事業案コンテストで社内の変革を促していく。
 
立ち上げから数カ月。案件が相次ぎ出てきており「4~6月期には100件ほど事業案が積み上がった」(大本氏)。
 

裁量が大きい事業に挑みやすい次世代事業の開発は、商社にとって重要な財産である人材の育成にもつながる。人材サービス大手のエン・ジャパンによると、5大商社の社員による転職サイトへの19年4~6月の登録数は前年同期比で8割増となっている。
 
「若いうちからやりがいを求めてスタートアップ企業に流れる商社人材が多い」(エン・ジャパン)という。一方で、大本氏は「他商社と比べ、若い人の意見を吸いあげるという部分では丸紅が一番整ってきたのではないか」と自負する。
 
丸紅では転職する社員が増える一方、中途採用や出戻りも多い。大本氏は「私も『出戻り』だが、次世代事業開発本部は4人に1人は外からの人材だ」と話す。人工知能(AI)開発を担うデータサイエンティストの採用を強化し、市況品目の分析効率化などを試みている。
 
有望な投資先の発掘が課題
 
丸紅は10年先の成長を目指し、従来の3カ年の中期計画内の利益貢献にとらわれない経営戦略の実行段階に入った。ただ課題は多い。
 
丸紅は13年に米ガビロンを2700億円で買収後、財務体質が悪化した。前の中計の16~18年度は投資を絞った。19年度に再び投資に動くが、国内証券アナリストは「新中計から投資意欲は伝わるが、事業環境が不透明ななか、投資先はなかなか見つからないのではないか」と指摘する。
 
実際に丸紅のある幹部も「(大型投資による財務体質の悪化で)いつか来た道となることだけは避けたい」と話す。19年4~6月期には目立った投資には踏み切れていない。今後、投資基準を満たした有望な投資先の発掘が課題となる。
 
社員に新事業創出や横連携を促し、組織を変えるのも簡単ではない。内部では「この前まで『縦化』と言っていたが、間違っていたのか」との声も出ている。従来は縦割り組織での深掘りで電力や食料、輸送機といった営業本部が利益を稼ぐ体制を作ってきた。
 
人事評価も現状では不明瞭だ。将来、稼げるかわからない事業に当たる社員と、現業で稼ぐ社員の報酬に公平な仕組みが作れなければ、組織が内部崩壊しかねない。柿木社長は「挑戦を定性的に評価する仕組みを作成している」と話す。
 
商社を脅かすプラットフォーマーは、従来の企業と全く異なるスピード感で新領域に攻め込んでくる。丸紅も従来の商社では構築できなかったビジネスモデルの創出に全社一丸で臨む必要がある。
 
(企業報道部 大平祐嗣)
 
日経産業新聞 2019年8月9日付]