藤野の散文-私の暗黙知-

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プロ弁護士の思考術 矢部正秋著(その2)

プロ弁護士の思考術 (PHP新書)

プロ弁護士の思考術 (PHP新書)

同書の「原理原則」的なポイントを残しておきたい。
できれば原本を一読してもらいたいが。


すべての基本、思考。


冒頭、仕事術云々に入る前に「思考」についての考察。
(<>の表題は後付け。)


<人の人たるは、「考えること」ゆえ>

・われわれの人生は、われわれの思考によって作り出される。
われわれの思考が現在をもたらし、未来を決める。
哲学者パスカルの言うように、人間の尊厳のいっさいは考えることの中にある。(p3)


<考えるとはどういうことか>

広辞苑』では、「考え」「思考」「思索」「思慮」をこう定義する。
「考え」・・・思考をめぐらす。あれこれと思量し、事を明らかにする。
「思考」・・・思いめぐらすこと、感性や意欲の作用と区別して、概念・判断・推理の作用をいう。
「思索」・・・物事の筋道を立てて深く考え進むこと。
「思慮」・・・注意深く考え思うこと。思いめぐらした考えをいう。


つまり、考えることは「知性や理性を駆使して物事を注意深く判断すること」である。
これに対し、われわれの意識とは何か。

意識とは、「対象をそれとして気にかけること。感知すること」
「今していることがじぶんで分かっている状態」(『広辞苑』)にすぎない。(p26-27)

<思考せぬ存在の恐怖-思考の怠慢。獲物のをねらうか、眠るかのみ->

(前略) 人はよく、泥棒や追いはぎは心の中で何を考えているのだろうかと思うが、彼らには心の生活などないとぼくは思う。
獲物をねらっているか、眠っているか、いつもこのどちらかだ。
彼の予見する力は、自分の足許や手先までを照らして見るにすぎない。


だから、彼の心には罰せられるという考えも浮かばなければ、ほかのどんな考えも浮かばない。
こういう聴く耳をもたない、見る眼をもたないマシーンほど戦慄すべきものはなにもない。


(中略)手順を考えることは、思考の大きな領域を占めているのである。
私の見るところ、企業の役員は、一般に行動することは好きである。
だが、行動しないことの大切さには目が行かない。


人間の本性として、どうしても華やかな行動に目が行き、世間もそれを賞賛する。
事前に慎重な検討をして、あえて行動しないことには誰も注目しない。


だが、作為と不作為は車の両輪であり、いずれも同等に大切なものである。


ビジネスの現場ではトップの無理がしばしば通じる。
それをトップの「権威」と誤解している例が多い。
地道なプランを実行せずに、派手なこと、キラキラしたことを好む。


人目を引くプランを揚げ、マスメディアがとり上げると喜ぶ。
このタイプの人は、あたかもゲームのボタンを押すように、部下を支配し、物事を処理できるつもりでいる。
他人や他社はコントロールがきかない、という認識がない。 そして企画の遅れを部下のせいにする。
残念だが、最近はこんな「ゲーム脳」の役員が増えているようである。 (中略)


人間は一般に、理性より感情に基づいて行動する。


だが、感情は具体的思考となじまない。
従って、具体的な手順を考えることは、理性の入り口に立っているということである。


感情は具体的に物事を考えることで整理される。


具体的に考えると、現実的になる。
精神論のような粗雑な思考が入り込む余地がない。


大雑把な思考には幻想が入り込むが、具体的思考には幻想の余地がない。


たとえば占いなどに救いを求める経営者は、具体的手順を考えることが不得手に違いない。(p46-48)

示唆的なこと


思考。
シコウシコウというものの、「意識はあるが、思考せぬ状態」に警鐘を鳴らす。

十年ほど前、ある能力開発セミナーで「思考の怠慢」を教わったことを思い出す。


まさにこれか。


獲物を追ってるか、眠ってるか。


これが人間だと、
迷ってるか、眠ってるか。とか
悩んでるか、眠ってるか。とか


よくわれわれはこんなに「悩んでるのに」と思う。


この句のあとには(こんなに悩んでるのに)
「解決しない」とか
「うまくいかない」とか
「わかってくれない」とかが続く。


ぜーんぶ、「自分がわ」からだけの見方だ。


著者も言う。


悩んで「何がしか解決に向かうこと」はいい。だが
「いくら悩んでも、結果に関係ないこと」に悩むの意味がない、と。


「自分の悩んだ量」と「結果」は必ずしも比例しないこと。


「こんなに悩んだ」という時間そのもの、がなんと思考を止めている。



では思考とは何か。
広辞苑曰く、

感性や意欲の作用と区別して、概念・判断・推理の作用をいう。


まず、
「思考」とは「感情や感性」などとは別のもの。


著者後述の思考術、はすべてこの原点が基本になっている。



またこれを正しく理解し、実生活で意識することで、
日々の物の見え方が実際に変わってくるところが恐ろしい。


また、「思考すること」が大きな方向を決めつつも
「成功への手順そのものである」という指摘も慧眼だ。

「具体的に考えること」が感情を排し、あいまいさや精神論、などを退治する、と。


地味な、一つ一つの手順を考え、積み上げることが以下に重要か。


まるでコンピュータのプログラミングそっくりではないか。


何となく感覚では感じていたものが、きちんと理屈で理解できたかな、と思う。



そのニ、ここまで。