いろんな著作が出版されている。
ビジネスマンや研究者や作家の成功談。
あるいは著者が考える「国とか経済とか政治とか人種とか宗教とか…」。
そしてごくたまに「その職業者である著者自身」が「自身を俯瞰するような」作品を出す。
例えば、島岡要さんの「研究者の仕事術」というのはそういった著作だったと思う。
で。
GIGAZINEより。
「科学者が教える「どのように科学論文は読むべきなのか」。
◆00:大前提
◆01:「Intoduction(導入)」セクションから読み、「Abstract(要約)」セクションは読まない
◆02:「大きな疑問」をはっきりさせる◆03:研究の背景を5行以内でまとめる
◆04:具体的な疑問を特定する
◆05:アプローチを特定する
◆06:各実験の関連図を書き、筆者が採った方法を図示する
◆07:「Result(結果)」セクションを読む
◆08:「結果」がテーマとなる疑問に答えているかを考える◆09:「Conclusion(結論)」「Discussion(議論)」「Interpretation(解釈)」のセクションを読む
◆10:要約を読む
◆11:他の研究者は論文について何を言っているか?
文章で作者の思いをまとめた「書籍」というのは非常に中身が濃いけれど、その著作の「いかなる理由で書かれたのか」ということは見えにくい。
つまり読者にとって、分かりやすさを優先していない著作も多く存在する。
論文も評論も、あるいは文学作品も「作者の意図」は考えつつ臨みたいものだと思う。
テーマが技術であれ、思想であれ、製作者の意図を考えながら向き合いたいものだ。
科学者が一般人に教える「どのように科学論文は読むべきなのか」の11手順
科学に関するニュースを正しく理解するためには、ニュースの元となった科学論文をダイレクトに読む必要があります。科学的な知識や素養がない一般人が、どのように科学論文を読むべきなのかについて、現役の科学者が11の手順を解説しています。
Impact of Social Sciences – How to read and understand a scientific paper: a guide for non-scientists
http://blogs.lse.ac.uk/impactofsocialsciences/2016/05/09/how-to-read-and-understand-a-scientific-paper-a-guide-for-non-scientists/インディアナ大学で遺伝学と生物人類学の博士号を取得し、カンザス大学人類学部の准教授を務めるジェニファー・ラフ博士は、科学を間違って伝えるニュースは人々に与える影響力が大きいため避けなければならないと考えています。
科学に関するニュースは、研究の要約やまとめですが、事実を正しくとらえられていない可能性が排除できないため、科学のニュースを正しく理解するためには、ソースとなった論文を読むことが最良の方法だとのこと。
ただし、科学論文を読むという作業は、ブログや新聞で科学に関する記事を読むのとはまったく異なるプロセスであり、忍耐を求められる作業です。本来は科学者が大学院で学ぶスキルが求められる「論文の読み方」を素人が身につけるには、何よりも「忍耐」と「実践」が不可欠だとラフ博士は述べています。苦行のような科学論文の読解ですが、忍耐強く実践し続け経験を積むほどに、読めるペースは速くなるとのこと。
正しく科学論文を読むために必要な11の手順は以下の通り。ラフ博士によると、必ずこの順番で科学論文を読むことが大切だとのことです。
◆00:大前提
論文を読み始める前に、著者と所属する研究機関を書き留めることをラフ博士はオススメしています。そして、論文が掲載されている科学誌に注意を払うことも求めています。これらは、論文の信頼性に影響を与えるものなので、読み始める前の準備行為としてしておくべき事柄です。また、論文を読み進める間、理解していないすべての語句を書き留めることもラフ博士は要求します。この作業が苦行であることは明らかですが、ラフ博士によると「語句の理解なしに論文の理解なし」とのこと。
◆01:「Intoduction(導入)」セクションから読み、「Abstract(要約)」セクションは読まない
科学論文にはその研究の概要を示した「abstract(要約)」が必ず付けられています。abstractは研究内容を手短にまとめており、これを見ればおおよその研究成果が分かるものです。このため、一般人のほとんどは「abstractしか読まない」ことになりがちですが、ラフ博士はabstractは最後に読むべきと述べています。abstractには筆者(研究者)の結果への考察が含まれており、ここには少なからずバイアスがかかっているものだとのこと。あくまで事実をベースにすべき科学研究では、abstractを読むのは最後であるべきです。
◆02:「大きな疑問」をはっきりさせる
論文を読むときに頭に置いておくべきことは、「この論文は何について書かれたものなのか?」ではなく、「(この研究が)解決しようと試みている『疑問』とは何なのか?」だとラフ博士は述べています。このことを念頭に置くことで、なぜこの研究が行われたのかに焦点を当てることができ、証拠を注意深く見ることができるとのこと。◆03:研究の背景を5行以内でまとめる
大きな疑問を抱いた後は、研究の背景を5行以内という簡潔な内容にまとめる作業をするべきだとラフ博士は考えています。読者としての立場で研究背景を要約することによって、研究の文脈について考えられるようになるとのこと。ラフ博士は、研究について正しく理解するためには、研究がなぜ行われたのかを説明できる必要があると考えています。◆04:具体的な疑問を特定する
手順3までで大きな問題について明確させた上で、研究者が論文で答えようとしている疑問が何かを考えるべきです。この疑問は1つであることもあれば複数あることもあります。いずれにせよ、筆者の回答しようとしている問いを、すべて紙の上に書き出すことをラフ博士は推奨しています。仮に、著者が帰無仮説を立てているならば、それを明確にする必要があります。◆05:アプローチを特定する
次に、具体的な疑問に答えるために、筆者が何をしようとしているのかを特定する必要があります。◆06:各実験の関連図を書き、筆者が採った方法を図示する
ラフ博士は、実験などの研究アプローチの関連性を図示することを推奨しています。理解を完全にするためには、必要十分なほど詳しい内容を書き込むのがオススメだとのこと。細かな実験内容まで書き込む必要はありませんが、基本的なメソッドについて他人に説明できるレベルになるまでは、手順7の「結果」に進む準備がまだできていないとのこと。ちなみに、ラフ博士が「The First Peopling of South America: New Evidence from Y-Chromosome Haplogroup Q」という論文を読んだ際に整理した図はこんな感じ。自身の専門分野に関する論文だったため非常にすっきりしていますが、他分野の論文の場合、より書き込みやメモは増えることになります。
◆07:「Result(結果)」セクションを読む
良質な論文では、結果の大部分が図表でまとめられていることがあります。この図表には特に注意を払うべきだとのこと。「significant」や「non-significant」という文言には統計的な意味があることや、グラフのエラーバーの意味を理解しておく必要があるとラフ博士は述べています。また、信頼区間のないグラフは要注意であり、サンプルサイズがどれくらいであるかも実験の信頼性を推し量る上で重要になるとのこと。◆08:「結果」がテーマとなる疑問に答えているかを考える
「研究結果がどのような意味を持つのか?」や、手順4で特定した「研究テーマとなる疑問に対して、研究の結果が正しく答えているか?」について、読者自身が考えることが重要だとラフ博士は述べています。もちろん、筆者の解釈を読んでから自身の考えを変更するのは全然構わないとのこと。しかし、他人の見解を読む前に、まず自分で結果から得られる意味を考えることは非常に良いことだとラフ博士は指摘しています。
◆09:「Conclusion(結論)」「Discussion(議論)」「Interpretation(解釈)」のセクションを読む
筆者が結果をどのように解釈しているのかを検証し、それに同意できるかを考えます。筆者は「研究の『弱点』を明確にしているか?」「見逃していることはないか?」「代替的な解釈は不可能か?」を検討すべきだとのこと。ラフ博士は、決して研究者に間違いがないと仮定してはいけないと述べています。◆10:要約を読む
ここまでの作業を終えて初めてabstract(要約)を読みます。論文で述べている内容と要約が一致しているかをチェックします。◆11:他の研究者は論文について何を言っているか?
論文をすべて読み終えた後で忘れてはいけない作業として、「他の研究者がその論文に対してどのような評価を下しているか?」を調べることが大切だとのこと。この時点では「Google検索」は解禁されるとのこと。手順10までを守っていれば、Google検索で表示される他の研究者の見解に対してさえ、批判的に見つめる準備が整うはずだとラフ博士は述べています。ラフ博士による「一般人がいかに科学論文を読むべきか?」の11の手順は、もちろんその研究分野についての科学的知識を持たない一般人にとって有用なのは間違いありませんが、裏を返せば「研究者は、第三者が読みやすいような論文を書くにはどうするべきか?」というヒントを与える内容にもなっていそうです。