藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

プロ弁護士の仕事術 矢部正秋著(その4)

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1.「真に思考する」ということ。
2.「具体的な手順を考える」ということ。
また、
3.「自然は飛躍しない」ということ。したがって
4.「論理(ロジック)を積み重ねることができた物だけが選択肢(オプション)となる」ということ。
5.「そうして無数のオプション」を考えること。



この辺りまでで、「論理思考」に必要なポイントが説明されたわけだが、

何と、著者はその「論理思考」に最も必要なもの、は「心構え」だという。


一見「心構え」とはなんともアナログ(かつアナクロ)な感じがして、意外に思ったが。
が、ここに要諦があった。


著者の苦労の結晶のようなノウハウ(という心構え)に出会えて、何とも嬉しい。


読書してて良かったなぁ、と思う瞬間だ。


心構え。


<オプション発想のゴールデンルール(黄金律)>

オプションを考える際に最も大切なのは、心構えである。


現実は重荷である。


人は困難に直面すると、他人を攻めるか、自分を責めるか、運命を呪うかのいずれかである。
圧倒的に多いのは、人のせいにするタイプである。(p70)



どんなに不快であっても、現実は現実として受容する。


つぎに「不快な現実を変えるためのオプションは何か」を考える習慣を身につけることである。


この考えに至るまで、実は私も大変苦労した。
三十代は、事件の相手に対し感情的に反発し、眠りが浅かった夜は数知れない。
「いくら自分が悩んでも、それは相手に何らの影響も与えない」という自明のことに気がついたのは、四十代半ばを過ぎたころである。(p71)


この心境に達するまで長い年月を要したが、こう気がついてみれば、問題は半ば解決したようなものである。


オプション発想に意識を集中すると、不安、悩み、怒りなどの消極的な感情は薄らいでいく。


オプションを考えるとは、受身から能動への転換をするということである。


「不満を言うな。オプションを考えよ」
これが私が仕事から学んだ貴重なノウハウであり、心のもち方である。(p72)


あらゆるオプションを考えると、自分のできることと、できないことの限界が明らかとなる。
すなわち、現実的シナリオと非現実的シナリオを区別するためにも、オプションを網羅的に考えることが有効な手段である。

7つの習慣」で言うところの「影響の輪」と「関心の輪」。


そして、実務的な注意が飛ぶ。

オプションを考えるとき、決定打を狙ってはならない。
奇手、妙手、鬼手を狙うのは邪道である。


問題に直面したとき、人間は本性として唯一の決定的な解決策を求めたがる。
だが、そんなものは存在しない。


決定的なオプションはいかがわしい。
決定的なオプションは予想外のリスクがつきまとう。
無数の小さな対策を積み重ねなければならない。
多くのオプションを合わせ技として併行的に実行することが原則である。
劇的ではない数多くの小さなオプションの積み重ねが大きな結果をもたらすのである。
(p73-4)

無数のオプション、を生み出すために


ある意味「悩むことからの解脱」。


結局、心構え、すなわち「心の姿勢の問題」だと著者は説く。


「原理、原則的」といたく感心。



<極論を考える>

常識的なオプションだけではほとんど役に立たない。


必ず極論も考えることが必要である。
極論は大胆な発想をするための突破口となる。
極論をかんがえるのは、現実から一歩身を引き、現実を冷静に観察するよい方法である。


われわれが極論を考えられないのは、権威、権力に迎合し、伝統、因習、常識に毒されているからである。
これらは、思考を暗黙のうちに束縛している。


極論に至るには、自分の築き上げてきたものを捨てて新しい見方に挑戦しなければならない。
現状維持的な考えを放擲して、リスクをとる発想ができるようになる。


極論を実行しようとすると、必ず摩擦はある。
だが、大局に立って極論を実施する意味があるなら、抵抗はあっても実行しなければならない。
(p74)


ベンキョウや仕事が出来てくればくるほど、
年をとるほど、
名誉を受けるほど、
お金を稼ぐほど、


われわれは「固定観念」を持つようになる。
ある面では、仕方ないとも思う。


その「積み上げてきたもの」が自分のスキルであり、実績でもあるから。


いつもそれを全く意識しない、というのも無理がある。


だが、著者は言う。
『オプションを考える上では、まったく自由な発想をせよ』と。


つい先日も、システムの話題で、「そんなのムリに決まってる!」と言ってた自分。

ふと気づき、「まてまて、部分的には可能かもしれないし、もっと違うやり方だってあり得なくは無いゾ」


と戒める瞬間があった。


斯様(かよう)に、とても役に立っている。