行きつけの店で手帳を広げていると、隣り合わせた中年男性から声がかかる。
「それどこのボールペン? その手帳はどこの?」
むむ。
赤の他人にそういうことを言う人は、まず無類の文房具好きとみた。
「ペンはステッドラーで、手帳は外装がオプションの革製で…」
「ホウホウ。そのペン書き易い?、僕はこれ使っててね…」
と取りだしたるは、カランダッシュの純銀製ボールペン!
一本数万円もする筆記具の、替え芯をいろいろと取り換えて、書き心地などを試しているとのこと。
むむむ。
そうとうな「好きもの」である。
それから、偶然会うたびに
「最近はどうですか?」
「実は、三菱のジェットストリームが意外に侮れなくてね。」
「ええ、ええ。ああいうこだわりのインクなんかを作るって日本ならではですよね。」
「そうそう!」
と、すいすい話が進む。
そうした文具の世界でも、好事家たちの目に留まるのは、ヨーロッパか日本製。
中でもドイツ製品の性能の高さは評判である。
デザイン工学に優れている、と言ったらいいだろうか。
使い心地と美しさがシンクロしているのである。
対して日本勢は「突出したこだわり」だろうか。
インクの滑り具合、とか
ベアリングのサイズの種類とか、
ベアリングの材質(書き心地)とか、
多機能の搭載とか、
外装の材質(たとえば"漆塗り")とか、
また独特の気質を持っているのである。
一時期姿を消していた「ノックいらず」のシャープペンシルが復刻されるらしい。
日本製品の未来にはまだまだ期待できると思う。
ノックいらずのシャーペン復活
ノックをしなくても芯が出てきて書き続けられるシャープペンシル「オートマック」をパイロットコーポレーションが21日、発売する。1980年代に開発した技術だが、価格が割高になることなどから人気が出ず、92年ごろに販売を終えていた。今回、「もう一度お客さんに受け入れられるか、試したい」として、書き味などを改良して28年ぶりに新商品を出すことにした。筆圧が強くても折れにくいという。税込み価格は3150円。