藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

甘えと主張の取り違え。

EU最大の国政関心事として度々報道されるギリシァ。
観光らしき産業しかなく、公務員の数が異常に多いというが、一体「当の国民はいかな心境なのだろうか」ということに日経の記事が応えている。

□政権も放漫財政
借金漬けになっているのは家計だけではない。政権党もこれまで際限なく国債を発行しながら公務員に大盤振る舞いをし、公共工事を発注することで支持層を固めてきた。アテネの空港から都心に向かう高速道路はドイツ並みの高規格で、新型の鉄道が並走している。その国ぐるみの放漫財政の結果が債務危機ともいえる。

公共工事がもはや「公共」でなくなっていることは、実は地元の住民が肌で分かっており、しかし「公共工事予算成長モデル」に一旦組み込まれた人たちは、容易にその罠からは出られない。そこは「競争過程を経なかった」という特別措置が見事に裏目に出ている。
予算を出す人たちと、それを消化する人たち。そして価格を決める談合のシステム、というのは伝統的な近代政府の踏襲してきた型であるが、先進国を皮切りに、もう「国会から予算というカネを撒く」というスタイルはいよいよ"詰み"に来ていると思う。
もうすぐ投了である。

4日夜、アテネ都心部のシンタグマ広場。市民数千人が集まり、ギリシャ政府が国際社会からの支援を得る見返りに実施する公務員の削減や規制緩和などの受け入れ拒否を連呼した。

こうした「公費モデル」の最大の難点は、撒く側だけでなく、「撒かれる側」も"そういう気持ち"になってしまうことである。
ミイラ取りがミイラ。
一度でも談合に参加し、その一員として機能し始めると、こんどは「無いのがおかしい」と平気でのたまうようになる。
彼の"常識"がズレてしまったのである。
こうしたことはしばしば起こる。

ギリシャでは職業の既得権が強固に設定され、苦労して権利を得ればあとは安泰といういびつな職業構造が残る。こうした慣行が成長を損ねているとして政府は労働改革を打ち出したが、多額の借金をしてやっと権利を手に入れた市民には受け入れられる話ではない。

これは政府の「営業規制」が、実は参入障壁と化して、既得権益側には強烈な防護壁となっている、という話。
タクシー免許など、もともとは「あるハードル」をクリアするための資格が、いつしか「資格社だけの楽園」と化し、他者を排除し始める。
そしてそこに「利用者の目線」というのは驚くほど考慮されていない。

競争を経ず、「既得権益」となるものは、それほど人に固定的な価値観を植え付けてしまい、また人はそれに従属しがちである。
公務員が人員削減を提示された時の異様な反発ぶりは、まったくもって「全体のバランスに思考が及んでいないことの象徴」だと、一般市民は思っているのだ。
国や国の財政を「まともな範囲内」に軌道修正するためには、その国の国民は「超党派的」に国政を考えねばならない。
有権者がそれをせぬからといって、「まともな選挙が出来ない」というの政治の素人でしかないだろう。

国の公費や公務員予算について、「真にニュートラルな施策を考えられる政治家」を自分たちが選ばねば、まだまだギリシァ的な混乱は、日本でも起こるだろう。
企業の生産性の目標とか、公務員の削減目標とか、そんなものはまず「一旦設定して、真剣に追いかけて見て」から、さらに軌道修正を加えるものである。
実務の世界はそのようなステップで動いているのだ。
机上でデモをしているのではなく、自分は「手当される側」ではなく、"自分がこれからを変えるのだ"という気持ちで将来を眺めれば、ずい分違った景色が見えてくるのではないだろうか。

はびこる脱税、既得権…アテネで見た危機の温床
ギリシャ、改革の道険しく
アテネ=古谷茂久】ギリシャのパパンドレウ内閣が議会で信任され、当面は無秩序な債務不履行(デフォルト)は回避される見通しとなった。一方で国難に直面しながらも、将来に不安をかかえる市民の最大の関心事はあくまでも自己保身だ。首相は野党との大連立を模索するが、国民に多大な犠牲を強いる財政再建構造改革を断行する道のりは険しい。
■一気に低金利
 アテネの国際空港に向けて着陸態勢に入った旅客機が大きく旋回すると眼下には赤茶けた丘陵が続く。丘に広がるアテネ郊外の住宅地には、プールを備えた瀟洒(しょうしゃ)な一戸建てが目立つ。
 2001年の通貨ユーロを導入以降、ギリシャ市民の生活で大きく変わったのは金利だ。独自の通貨から、ドイツやフランスの信用に裏打ちされたユーロに切り替わると、低金利のローンが一気に普及した。アテネには顧客を求めて仏銀などがこぞって進出。ギリシャ人の生活水準は飛躍的に向上し、高級車ポルシェの人口あたりの販売台数は、同国が欧州最高レベルに躍り出た。
 だがそのプール付き邸宅の住人が税金をきちんと納めているかどうかはわからない。財政赤字の拡大で税収増を迫られた税務当局は昨年、上空からプール所有者を調査したが、プール所有に対する税金を納税していた家庭は1割にも満たなかった。歴史的に脱税がはびこる同国で捕捉できていない税は年間で100億ユーロ(約1兆800億円)ともいわれ、ギリシャの財政を常に圧迫している。

■政権も放漫財政
借金漬けになっているのは家計だけではない。政権党もこれまで際限なく国債を発行しながら公務員に大盤振る舞いをし、公共工事を発注することで支持層を固めてきた。アテネの空港から都心に向かう高速道路はドイツ並みの高規格で、新型の鉄道が並走している。その国ぐるみの放漫財政の結果が債務危機ともいえる。

4日夜、アテネ都心部のシンタグマ広場。市民数千人が集まり、ギリシャ政府が国際社会からの支援を得る見返りに実施する公務員の削減や規制緩和などの受け入れ拒否を連呼した。

そのとき広場に面するギリシャ議会では、パパンドレウ首相が内閣信任投票の結果を固唾をのんで見守っていた。同日まで南仏カンヌで開かれていた主要20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)で、首相は独仏首脳からつなぎ融資の凍結を通告されたばかり。国家崩壊の危機に直面しながらも、市民は自己の利益を主張し続けている。

■政治不信広がる
広場に集まっていたタクシー運転手のニコス氏(35)は不満をぶちまけた。「タクシー運転手のライセンスを取得し自動車を購入するために20万ユーロ(約2100万円)を借金して工面した。それを政府は5千ユーロで資格をとれるようにするという。こんな不公平があるか」

ギリシャでは職業の既得権が強固に設定され、苦労して権利を得ればあとは安泰といういびつな職業構造が残る。こうした慣行が成長を損ねているとして政府は労働改革を打ち出したが、多額の借金をしてやっと権利を手に入れた市民には受け入れられる話ではない。

ニコス氏は「どんな政党も支持しない」と話す。借金漬けの生活、脱税、硬直した労働市場、切り崩せない既得権、政治不信――。ギリシャをむしばんでいる構造問題は想像以上に根が深い。与党単独での問題解決は不可能と悟ったパパンドレウ首相は大連立を模索するが、国民を納得させられる解を見つけるのは容易ではない。