藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

苦労はどこでするか。

AIJ投資顧問の運用損失問題を機に、図らずも「日本の企業の運用実態」が明るみに出た。
("年金消失"というが、消失はしないだろう。運用のスキルが足りないための損失、であって「消失」というのはどうも違和感がある)
問題としては
・「運用経験の無い者が約九割」という経験のなさ、としかも、
・旧社保庁厚労省OB721人の"天下りの巣"になっていた。
ということである。

昨日も書いたが「ギリシアがいかに現体制で努力しても、一旦増えた公務員を減らすことは至難」というのと同じく、日本も戦後に営々と培われてきた「官民もたれ合いの構図」を突き崩すことは容易でない。
この年金問題も、そうした知られざる一面が暴露されたわけで、「これまでの日本の体制が、どれほど"これから"に対応していないか」ということの証左だと思う。
もう「旧体制のもの」は維持そのものが難しいだろう。

経済の常識に水を差すようだが、そもそも年金という「老後の重要な資産」について、「投資を施し」確定的な利回りを期待して運用する、ということそのものに根本的な危うさを感じる。

「積み立て前提」「インフレ率の考慮」というような内容は、年金資産の防衛方法として正しいと思うが、「世界経済が必ず成長する」とか「成長する国の国債や株式に資金を回す」というそもそもの考え方は、例え一時期にせよ、市場が下降線をたどる時には「元本割れ」を起こすのは道理である。

みなが「プラスの利回り前提」で先進国や新興国にあまねく運用投資を広げ、またその資金を再投資して「さらなる成長が見込める」というどこか"無限の成長モデル"を疑わずに構築されてきた色んな制度は、これから軒並み機能不全に陥るだろう。

年金も、原点に帰れば「自分で積み立て、自分で使う」という方針から大きく外れて、本来の意味を失った。
自分の手元にも年金宅急便なるものが届くが、65歳から年間120万円が支給される、とするその内容にあまり「確からしさ」は感じない。

そして、もう制度が上手くいかないのなら、年金は止めにして「自分で予算を決め、自分で思う通貨や国債など」に積み立てをしてる方が納得感も高い。

「年金機構で食べている公務員が多いから」という理由で、無限に問題の先送りを続けながら時の過ぎるのを待つ、という典型的な"戦後スタイル"はついに崩壊しつつある。

そしてその崩壊の余波をモロに受けるだろう自分たちも、それを「時代の当事者」と受け止め、犯人探しに終始することなく次の時代を生きる方法を考え抜かねばならないと思う。
「旧世代の残渣」にダラダラと付き合うのならむしろ、「これからのため」に苦労をしたいと思うのだ。

sankei webより
厚生年金基金への天下り721人 半数以上は旧社保庁OB 資産運用9割が「素人」

 「AIJ投資顧問」(東京都中央区)による年金資産消失問題を受け、全国の厚生年金基金の実態を調べている厚生労働省の特別対策本部は28日、今月1日時点で基金天下りしている国家公務員OBが721人おり、半数以上が旧社会保険庁の出身者だったとする調査結果を公表した。基金で資産運用に携わる役職員の約9割が、就任前に資産運用業務の経験がなかったことも判明。専門知識がないまま資産運用が行われていた実態が浮かんだ。

 厚労省によると、今月1日時点で現存する厚生年金基金は581で、23日までに役員の天下りは579基金が回答した。全体の6割を超える366基金に国家公務員OBが役員として在籍し、うち359基金厚労省・旧社保庁OBがいた。職員については230基金に国家公務員OBが天下っていた。

 天下った721人のうち689人が厚労省・旧社保庁OBだった。役職別にみると、役員が405人、職員が316人で、役員になっている旧社保庁OBは368人、厚労省OBも15人いた。

 運用に携わる役職員については、92・3%が証券アナリストファイナンシャルプランナーなど資産運用関連の資格を「もっていない」と回答。88・4%は、資産運用関連業務の経験がなかった。また、運用について分析や助言を行う外部の運用コンサルタントを採用していたのは150基金と約3割にとどまった。

 AIJに委託実績のある基金は88基金。AIJを知ったきっかけは、AIJが実質支配しているアイティーエム証券からの勧誘が51基金と最も多かった。