藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

本当の危機対応とは。

yomiuri onlineより。
東電の電気料金値上げをする有識者会議が今更の結論。

会社更生法の適用が妥当だった。」

つくづく、「危機管理の大切さ」を我われは再認識すべきだと思った。
一年三か月前の震災に遭ったとき、未曾有の出来事に自分たちは「思考を失う」ということを経験した。
ただこれは身近にそうした現象が起こった、ということであり、アメリカの9.11の時も、まるでCGを見るように信じられない映像は流れていたし、その後のアフガン侵攻とか、また今も続く中東の内戦についても、「報道では見知っているが、実感がない」というのが多くの日本人の感想ではないかと思う。

そうして、自国のことである。
日本を襲った災厄は、その方向性を未だ決められずにいる。
これは、今が遅すぎるということではなく、またその「判断の躊躇」は震災直後から始まっている。

まさに天災として地震が起きて津波が侵襲し、さらに原発が停止して放射線をまき散らし、当時の対応の杜撰さも(一年以上経って)徐々に詳らかになり、瓦礫処理や除染といった事後対応も必要になり・・・そうした一連の流れと、政権の不安定さもあり、最も「行動の基本となる」はずの"法的な根拠"が揺らいだままだった。

経済界の有識者や法律家は当時から「法的整理しかない」と見通していた、と思う。
それを「国有化か」とか「国家のインフラである電力の破たん阻止」とか「今後の電力行政(送電給電の分離)での対応」とか、いろんな"ヤジ"が飛び交って、結果事故当時の「政府と東電のなすりあいの実態」が今頃露出してきている。

いまさら興味もないが、このあたりの行政の「危機管理」はいかに例外時には役に立たないものか、ということだけはよく分かった。
そして、来月からは電気料金も上がる中、審査委は「東電の処理については会社更生がよかった」という。
最早、債権者もしかり、補償を受ける人たちにも、細かい定義を当てはめて、効果を発揮するための行政の力もないだろう。

子供手当よろしく、ここでも現政権は同じ轍を踏んだと言えるだろう。
つまり、今回の震災に対し、
・「天災」として、国としてはどのような救済策を講じるのか、ということ。
・東電ほかの原発管理会社についての「国としての介入程度」についての方針と、
・そして今後の電力行政についての展望や、日本としての競争力を持つための戦略、
といった三つほどの視点で、国民、国内企業、欧米国、中国とアジア諸国、ブラジル・ロシアほか第三世界に対してメッセージを発する必要があったと思う。

これまでの日本人には「慣れぬ」ことかもしれないが、今こうした態度こそが「先進国」としては最も求められている資質なのではないだろうか。
これからEUも破たん懸念が払しょくできていないが、「いざことが起きた時」にもどれほど冷静に対処できるか、ということは、その後の国際外交の姿勢に大きく影響してくるだろうと思う。

ともかく、日本としての方針を、G20などでもビシッと示してもらいたのである。
21世紀の今日、日本人の「主張ベタ」について、日本国民は相当にストレスと問題意識を持っていると思うのだ。

東電は会社更生するべきだった…料金審査委員長
東京電力の家庭向け電気料金の値上げ申請を検証する経産省有識者会議「電気料金審査専門委員会」で20日、委員長の安念潤司・中央大法科大学院教授が「(東電は)本当は会社更生(法の適用を)をしておくべきだった」と発言した。

 安念氏の発言は、委員会に出席した全国消費者団体連絡会の阿南久事務局長が「値上げの前に、東電に融資をした銀行や株主の責任を問うべきだ」と訴えたことに答えたもの。さらに、安念氏は「会社更生ですっきりすればよかったが、政府が(東電を)つぶさないと決めた。我々は与えられた要件で、議論している」と苦しい胸の内を明かした。
(2012年6月20日19時13分 読売新聞)