藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

次のメディアに

新年明けましておめでとうございます。
という言葉ももう五十回近く交わしていることになる。
精神が古びない、と言えば聞こえはいいが、こうして時を経ても所在なく肉体だけが老いている、というのが実態だろう。

それにしても、二十年前のお正月。
元旦の新聞の一面広告に大手電機メーカーの広告が踊っていた。
テーマはDVD。
家族で「CDでもすごいのに、(約600メガ)まだ数倍も記憶できる媒体がでるらしい」と驚いていたことを思い出す。
そうしてこの二十年はこれらのメディアの恩恵で過ぎた。
顕著なのはメモリーが安価になり、いわゆるディスク媒体と同様の使われ方をしていることだろうか。

進化の先

思えば携帯電話が「広辞苑」ほどの大きさで登場した時、通信会社の人と「将来、これが手のひらサイズになる、という人もいますよ」「はは、まさかねえ」とリアルに話していたのを思い出す。
現実は小型化だけでなく、そこに音楽プレイヤーとか、ビデオカメラとか、テレビとか、高解像度カメラとか、Wi-Fiルーターとか、"今思いつく"ほとんどの物が集積されるようになった。

テクノロジーの進化は徐々に進むように感じるが、十年単位で見れば「先の予測」はなかなかつかないものである。(経験値)
東芝が発売する次世代のテレビ録画システムは5テラバイトのHDDを搭載するという。
地上波の番組を丸ごと半月分記録するそうだが、これが10テラになり、100テラになり、「ペタ」になるのもそう遠い日ではないだろう。
そして、ようやく我われは「媒体の記憶容量」という枷から放たれ、「過去のコンテンツが全て有料でアクセスできる時代」になるにちがいない。

1950年以降のあらゆる映像・録音コンテンツや書籍、出版物、論文などは多少の手数料でアクセスできる時代に入る。
これでようやく「コンテンツフリーの時代」がやって来るのではないだろうか。
有料か無料かにかかわらず「記録があるかないか」だったこれまでに比べ「記録は必ず存在する」という時代になるのである。

もう源氏物語の原著がない、とかモーツァルトの生楽譜がない、というようなことはなくなってゆく。
そうした「あらゆるコンテンツは記録されている時代」の検索はGoogleの専売特許になるのかもしれないが、今のように「存在するコンテンツ」を基にいろいろと加工したり、批評したりする時代とはずい分と違ったものになると思う。
コンテンツが「残っている」ということ自体に対する価値はなく、どんなものも記録されている前提で「そこから何を拾い、加工し、読み解くか」ということが価値になる。

コンテンツありき、からストーリー力ありきの時代になるわけで、より個性が問われる時代になるのだと思う。
素材があふれる時代、というのは贅沢だがまたレベルの高い思考が必要になる。
文明の進化というのはそういうことなのだろう。


東芝が示すスマートテレビの新たな方向性--タイムシフトマシンは完成形へ

CELLレグザを発表した2009年から東芝が提唱する「タイムシフトマシン」の概念は、2011年に5TバイトのHDDを搭載した大容量録画機「レグザサーバーDBR-M190」を発表したことでより明確化されたと言える。地上波6局2週間分をまとめて録画できる機能により、見たい番組をいつでも見られるタイムシフトマシンを本格的に実践できる環境が整ったためだ。

 「そんなに録画しても見ている時間がない」というツッコミを入れられがちな大容量録画機だが、そもそも東芝の提案するタイムシフトマシンは通常の予約録画とは似て非なるものである。タイムシフトマシンにおける大量録画は、時間経過とともにどんどんコンテンツが入れ換わるキャッシュであり、予約録画のようなアーカイブ的性格はもたない。

 たとえば、家に帰ってテレビをつけると、何やら興味深い番組が放送されているが、途中から見始めたので内容が分からない。そんなときに役立つのがタイムシフトマシンだ。大容量録画機に蓄積されたコンテンツをリアルタイムで追っかけ再生することで、番組を頭から視聴することが可能になる。


「レグザ Z7」シリーズ

 そして、その概念を完成形へと近づけたのが、同社の液晶テレビの最新モデル「レグザ Z7」シリーズだ。見たい時に見たい番組を最初から見られるというタイムシフトマシンはもとより、視聴者がまだ見ぬ番組と出会うきっかけを与える「ざんまいプレイ」機能によって新たなスマートテレビの定義を示した。

 「Z7」は外付けHDDとの連携を前提としたテレビで、東芝の純正品以外でも動作確認済みのUSB3.0対応HDDであれば外付けが可能。2010年発売「CELLレグザ55X2」から実装済みの「始めにジャンプ」(放送中番組のワンタッチ頭出し機能)もリモコンに配置されているなど、タイムシフトマシンの進化型と呼ぶにふさわしい仕上がりだ。

 同じくリモコンボタンによってワンタッチで呼び出せる「ざんまいプレイ」は、ニュース・報道、スポーツ、ドラマ、映画、アニメなどジャンルごとにキャッシュされた番組を一覧表示してくれる機能。番組ジャンル以外でも、再生情報を元にした「いつもの番組」、クラウド上の全国レグザユーザーの再生情報を元にした「みんなのおすすめ番組」、再生情報の傾向から興味はありそうながら見たことのない番組を提案する「あなたにおすすめ番組」など、さまざまな切り口で番組一覧を構成する。


「ざんまいプレイ」では、キャッシュされたコンテンツをさまざまなジャンルごとに一覧表示してくれる

 2011年のレグザサーバー発表の時点で、その最大の難点は「大量録画されたコンテンツからいかにして好みの番組を探し出すか」にあった。当初は過去番組表のようなデータベースからユーザーが自力で番組を探す必要があり、そのユーザーインターフェースはお世辞にも優れているとは言い難いものだった。また、考え方としてもタイムシフトマシンの概念が十分に活かされているとは言えず、そのメリットは予約作業が軽減されるなど通常録画の延長線上にすぎなかった。

 ざんまいプレイがタイムシフトマシンを完成形へと近付けたと評価できるのは、大量録画されたコンテンツを検索するのではなく提案する方向に動いたことだ。最初から視聴する意思をもって番組表を確認したり予約録画を入れたりするのではなく、テレビの方から「こんな番組が放送されていましたが、見てみませんか」と教えてくれる。これこそが通常録画との違いであり、また東芝の考える「スマートテレビ」の方向性といえる。

 その最たるものが「ほかにもこんな番組」機能だろう。テレビを視聴中あるいはキャッシュ番組の再生中に、画面横に「こんな番組もあります」と類似番組のサムネイルを表示する。YouTubeニコニコ動画などの動画共有サイトで見られる、大量にキャッシュされたコンテンツに効率よく出会ってもらうためのスタイルを採り入れているのだ。

 スマートテレビの概念にありがちな通信・ネット系との連携は、クラウド型サービス「Time On」で対応している。たとえば「Yahoo!検索急上昇ワード」は、その名のとおりネット上で話題のキーワードのかかった番組シーンだけを集めて表示できる機能。「選挙」であれば選挙に関するニュース番組だけが抽出され、「AKB48」なら彼女たちの出演シーンだけが一覧表示される。なお、シーン抽出は任意のキーワード入力でも可能だ。


類似番組のサムネイルを表示する「ほかにもこんな番組」機能


クラウドと連携した「Time On」では、キーワードごとのシーン抽出が可能

 東芝 デジタルプロダクツ&サービス社 商品統括部 TV商品部 日本担当参事の本村裕史氏は「日本流、東芝流のスマートテレビは、このタイムシフトマシンに集約されている。つまりは見たいときに見たい番組が視聴でき、興味の持てる番組にも簡単に出会うことができる」と自信を見せる。東芝ならではのスマートなテレビの提案は、販売不調が続く液晶テレビ市場に新たな風を起こすことができるだろうか。