藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

目線の距離。稼ぐことと使うこと。

格好の悪い話だが、資本の十分な準備もなく、中小企業の経営などしていると、まず会社が潰れないこと、とかそのために一円でも稼ぐこと、とかコストを減らすこと、とかそんな事ばかりを考える。
そりゃあ資金繰り詰まったり、赤字になったりすれば中小企業などはたちまち窮地に陥るわけなので、余裕のないのも無理もない。
金の亡者のように振る舞う経営者もいるが、強欲ばかりが原因でもなく、一生懸命さの表れでもあると思う。
「会社を潰してはならない」その表情には悲壮感すら漂っているものである。

それはともかく。

「潰さないこと」を頭が占有している経営者は「その先」を考えることが少なくなる。

これは"7つの習慣"の中の「重要事項を優先する」そのままなのだが、なかなか気付かない。
中小企業の経営者はこと資金繰りについてはニワトリ並みの感覚だと思う。

で、それもともかく。
「今の荒波を乗り切る」だけではなく、「その先を考えつづける能力」は企業の寿命を決める非常に重要なテーマだったのだった。
(つづく)

「米国は好機にあふれる」バフェットからの手紙
2013/3/10 17:00日本経済新聞 電子版
 ウォーレン・バフェット氏が毎年恒例の「手紙」を公表した。自らが経営トップを務める投資会社のバークシャー・ハザウェイの株主にあてたものだ。株主以外も熟読する「バフェットからの手紙」を読み解こう。

■雨の止まない嵐はない

バークシャー・ハザウェイ株主総会に姿を見せたウォーレン・バフェット氏(2012年5月、米オマハ)=AP



 多くの最高経営責任者(CEO)が昨年、「不透明さ」を嘆いていました。我々はこの手の恐れにくみしません。2012年は(傘下の企業が)設備投資に98億ドルを費やしました。過去最高だった前年を19%上回り、88%が米国内の投資です。専門家がどう言おうと、チャーリー(副会長のマンガー氏)と私は、価値あるプロジェクトにまとまった資金を投じていきたい。ゲイリー・アランの歌にあるでしょう。「雨の止まない嵐はない」と。我々の設備投資は、2013年も過去最高を更新するでしょう。米国は好機があふれています。

 米国の財政問題、欧州債務危機、中東不安──。数えれば切りがないが、不透明であるのはいつの世も同じだ。それを言い訳にせず、未来を見越して積極的に意味ある投資を続ける。それでこそ、経営者だと訴える。

■ゲームに参加を

 米国のビジネスは今後もずっと良好でしょう。株式もその成果と密接ですから、きっとうまくいくと思います。景気の谷は定期的に訪れるでしょうけれど、投資家と経営者のどちらにとっても、好都合に進んでいくゲームの中にあるのです。占いや専門家のご託宣、事業の浮き沈みに惑わされて、ゲームに飛び込んだり出て行ったりを繰り返すことは、ひどい間違いです。ゲームに参加していることです。参加しないことの方がずっとリスクが大きいとチャーリーと私は信じています。

 米国のビジネスへの揺るがぬ信奉。何かと人々は明日のことを心配しがちだが、1941年から2012年までに国民1人当たり国内総生産(GDP)が4倍に増えた。米国ビジネスへの長期投資でどっかり椅子に座っておけ、とバフェット氏は主張する。

■株高時は負けを認める

 バークシャーを経営するようになったのは1965年。まさか年間で241億ドルを稼いでも標準に届かない日が来るとは思いもよりませんでした。バークシャーの簿価の増加率が、S&P500種株価指数の上昇率に届かなかったのは、過去48年間のうち9回です。我々は素晴らしい事業を持ち、優れた経営者がいます。株主重視の文化を持っています。ただ、我々の相対パフォーマンスが良く出るのは、市場全体が下向きか横ばいの時。特に強い相場が数年も続くと、そこに及ばなくなります。

 昨年もそれなりに収益を上げたつもりでも、株式市場全体の上昇には及ばなかった。巨大になったバークシャー。安定ぶりは魅力だが、身の重さもまたバフェット氏自身が感じるところだ。




■「象」を追い求め続ける

 大きな買収をできなかったことも2012年のもう1つの失望です。数匹の象を追いかけ、取り逃がしました。でも流れは今年早々に変わりました。2月に食品大手ハインツの50%の議決権を取得することで合意しました。投資総額120億ドルはバークシャーの昨年の稼ぎを吸い上げてしまいます。しかし引き続き潤沢な資金があり、順調に増えています。仕事に戻りましょう。チャーリーと私はまたサファリ服に袖を通し、象探しを再開しています。

 金融危機直後は買収案件を次々と実らせたバフェット氏だが、米景気の回復に伴って、好案件に出会わなくなったのも事実。NYSEユーロネクストの買収にもバフェット氏は関心があったと報道された。買収の軍資金はたっぷりある。大型案件を象に見立て、いい獲物はないか腕をまくっている。

■債券投資は難しい

 保険事業で収益が出るのは、過去に投資した高利回りの債券ポートフォリオの「遺産」のおかげです。今の環境で債券投資は資産をムダにします。保有する債券が満期を迎え、次また再投資していくにつれ、保険会社の収益はひどく傷んでくるでしょう。

 ゼロ金利政策のひずみがここに出ている。利ザヤ縮小による体力喪失への不安。これは保険会社に限らず、銀行や年金運営にも共通するはずだ。
デリバティブは減らす

 デリバティブ金融派生商品)の一部は減らし続けます。小さな例外はありますが、担保を求められる新たな契約は避けるつもりです。市場は時として極端に振れます。積み上げてきた現金を、何の予告もなく突然差し出さなければならない金融イベントに、身をさらす気はありません。チャーリーと私は、何重もの流動性の上で経営をしていくことにしています。100年のうち99年で収益が落ちるかもしれませんが、100年目に他の多くが倒れるときには生き残れるでしょう。100年通して我々は熟睡できるのです。

 デリバティブの怖さの本質と流動性を確保しておく重要さを語る言葉だ。理解できないものには投資しない。かつ、危機のマグマは常にどこかに潜んでいるとの警戒もあるだろう。

 投資先企業の経営者には(ライバルの侵入を防ぐ)堀を広げる機会に集中してほしいとお願いします。彼らは妥当な案を多く見つけますが、ときには誤ります。それは自分の欲しい答えから始めてしまい、合理的な理由を後付けすることに起因した失敗であることが多いのです。もちろん無意識にやってしまいますから、危ういものです。
 私もその原罪から逃げられません。1986年の年次報告書で、織物事業での経営努力と資本改善策は無駄骨だったと記しました。私は織物事業を成功させたくて、自分の願いをかなえようとしたがゆえに、誤った判断を次々下してしまったのです。願えば夢がかなうのはディズニーの映画だけ。ビジネスの世界では、願いは害なのです。

 この部分は、稼いだ利益をいかにうまく配分して事業を伸ばし、買収も続けていくことが大事かを説く中で出てくる。配当で株主に還元することには否定的。事業の投資には失敗もあるが、経営者が投資や買収を続けることの方が、株主に豊かさをもたらしていくとバフェット氏は信じているのだ。


米州総局編集委員・藤田和明、荻野卓也が担当した。

日経ヴェリタス 2013年3月10日付]