藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

誰もに運転手。

「車と一緒に運転手が付いてくる」という付加価値。
自動運転の乗用車の開発が加速している。
トヨタGoogleの提携話、なども浮上して自動車産業はITとのコラボレーションで新しいステージに行くのかもしれない。
トヨタは「敢えて人の操縦部分を残す」ということらしいが、
それにしても、目的地まで無人(自動)で着く自動車というのはどんな存在なのだろう。
ドライバーを雇って運転しているようなもので、それをコンピュータがしてのける、ということにユーザーはメリットを感じるだろうか。(それはそれで贅沢なものかもしれないが)

大きめのバンに、仲間数名で乗り込み、飲食などをしながらワイワイ楽しむ。
運転は自動たからお酒もok。
これっていわゆるバス旅行そのものである。
ネットにつながっているし、例えば観光地のソフト情報などをインプットしておけば「どんなコースがいい?」とか「おいしいパンが食べたい」などと質問しても、地元の観光ガイドさながらに応対してくれるに違いない。

それとも公共機関では価値があるだろうか。
今はバスはワンマンが主流だがフルオートの「ノーマンバス」は早めに実現しそうである。
あるいはタクシーもノーマンに。
さらには物流業のトラックの運転も無人になるだろうか。
人が運転せねばならない理由は特にないように思える。
つまり、運転を楽しみたい人以外はすべからく、自動運転の恩恵を受けることになりそうだ。

それにしてもまた人の仕事がなくなる分野が増えそうである。

トヨタは「準」自動運転車 あえて残すヒトの領域
2014/9/7 15:04
日本経済新聞 電子版
トヨタ自動車は7日、米デトロイトで独自開発の自動運転車を公開する。ドライバーがハンドルを握らなくても町中を走る完全な自動運転ではなく、クルマの役割を一定程度残した。そこから見えてくるのは、完全な自動運転車の実用化を目指す開発競争からはあえて一歩距離を置く、トヨタが描く「賢いクルマ」の形だ。

トヨタデトロイトで7日に開幕する高度道路交通システムの「ITS世界会議」に合わせ、同市内の高速道路を中心に自動運転の試験走行を公開する。開幕に先立ち、一部報道陣に同走行を公開した。

「ドライバーとクルマのチームワークはどんな形がベストなのか。我々が自動運転技術を開発する際に最も重視していることです」。高級車レクサスGSをベースにした新型の自動運転の試作車。案内してくれたエンジニアのマイルス・ジョンソンさんは開口一番、こう話した。

人が運転しない自動運転車でなぜドライバーとのチームワークなのか。

ジョンソンさんによるとトヨタはすでに、今回のようにあらかじめ設定されたルートを走るのであれば、完全な自動運転を行うことは十分に可能だ。実際、昨年秋に東京で公開した。だが、今回はあえて機能を限定して「人と車の協調」をテーマにしたという。

その“準・自動運転車”に乗り込んだ。普通のクルマとの違いで目立つのは、バックミラー横に小型カメラが設置されてあることくらい。主に道路上の白線や黄線をキャッチするのが目的だ。運転席と助手席の間には大型のモニター。そのほかの外見は特に変わりがないが、フロントグリルなどには「クルマの目」となるレーダーが埋め込まれている。カメラとレーダー、全地球測位システム(GPS)で周囲の状況を察知する。

高速道路に入ると、ドライバー席と助手席の間にあるモニターに「DRCC」と「LTC」という文字が表示される。前を走る車と、道路上の車線を車の目が捉えたというサインで、モニター上の車の前にグリーンのラインが映し出された。「これでもう自動運転が始まっています。ほら」。そう言ってドライバーがハンドルから手を離した。足もアクセルペダルから離れている。ここまでは、従来の自動運転技術とあまり変わらない。

5秒ほどすると手をハンドルに戻すよう促すイラストが表示された。プープーという警告音も。「ここでは人が運転した方がいいということです」とジョンソンさん。ただし道路を見たところ、割り込んできそうな車が走っていたり、路上にモノが落ちているわけではない。

「突然、手動走行に切り替えますよと言われたら、ちょっと焦りますよね。それこそ事故のもとです。そんなことがないよう、余裕を計算してドライバーに警告するんです」とジョンソンさん。

すると今度は再び警告音とともに「eye on the road(視線を道路に戻して)」の表示。ドライバーがよそ見をしていた。自動運転中なので問題はないのだが、ドライバーがいつでも運転できるよう促す。

一般道からの合流地点や分岐点など、車の流れが変わるポイントでは数百メートル前からモニターにイラストが表れる。やはり自動なので不要といえば不要だが、運転の「主役」はあくまでドライバーであり、クルマに搭載されたテクノロジーは補助にすぎないという発想が貫かれている。

米グーグルが火付け役となった自動運転車の開発レース――。日産自動車が2020年の完全自動運転車の発売を表明するなど、自動車大手の間でも開発競争が過熱している。そんな中、トヨタはあえて完全な自動運転には距離を置く。自動運転に必要な様々な技術をひとつずつ市販車に搭載して、少しずつ完全自動化に近づけばいいという現実路線に徹する考えだ。


ではトヨタは自動運転車の開発を軽視しているのかといえば、そんなことはない。今年1月には専門部隊の「高度知能化運転支援開発室」を発足させた。まずは社内から専門の技術者をかき集めた。人数は極秘ながら倍増させたという。強化を急いでいるのが「自動車メーカーとして通じている領域ではない人工知能(AI)やコンピューター技術」(鯉渕健室長)だ。「今まさに外部から専門家の採用を行っているところ」という。

さらに衝撃の事実が判明した。トヨタがグーグルに自動運転車の共同開発を打診したというのだ。交渉はまとまらず、クルマとIT(情報技術)の「巨人たちの握手」は幻に終わったが、そこから推察できるのは自社の技術にこだわらず外の知恵を積極的に取り込もうという、トヨタの姿勢だ。「(本拠がある)三河がすべてを取り仕切る」というかつてのスタンスでは未来のクルマはつくれない。実際、自動運転で欠かせないビッグデータの活用については、別のIT企業との間で提携交渉を進めているという。近く業種の壁を越えた大型提携が公表されるかもしれない。

「それでも本音では思うところがあるんですけどね……」。鯉渕さんがやや声のトーンを抑えてこう続けてくれた。「クルマは移動さえできればいい(道具だ)、とは思わない。僕自身はクルマからハンドルがなくなるとさみしいですよ」


人の手を必要としない自動運転車。トヨタで開発を託された鯉渕さんは、皮肉なことに自他ともに認める根っからのクルマ好きだ。レースコース専用のライセンスも取得して休日には静岡県富士スピードウェイに通うほどで、エコカーや賢いクルマより「ハイパワーの車をバリバリ運転するのが大好き」という。

そういえば、同じくレース好きで知られる豊田章男社長がこんなことを言っていた。

「自動車メーカーがつくるのは“愛車”。(グーグルなど)IT企業がつくるのは“i車”。いわゆる無人運転が(トヨタの)自動運転の目的ではない」

クルマはITではなく、あくまで人の手で操縦するもの――。関係者は口を閉ざすが、異業種との連携を模索しつつも、このあたりの保守的な考え方が残る点がグーグルとの提携が不調に終わった原因かもしれない。それは自動車の巨人が失ってはいけないプライドなのか、あるいはおごりなのか。いずれにせよトヨタが描く未来のクルマの形が問われる日は、そう遠くない。(デトロイト=杉本貴司)