*[ウェブ進化論]どこまでがオートか。
今や都心には網の目のように交通網がある。
人や物の輸送や物流は史上ないほどに早く、安くなってきた。
さてそこに「自動運転」の登場だ。
今、人が運転している以上に自動化するメリットはどれほどあるのだろうか。ドライバーの人件費はなくなるが、自動運転車の価格はそれを下回るのだろうか。
事故をただなくすだけ、ならセンサーで「危なくなったら即減速」を義務付ければいい。
運転そのものを「フルオート」にして、出発点から目的地までを全て自動にする必要はどこにあるのだろう。
そういう着地点の議論がすっぽり抜け落ちての「自動運転主義」に思える。
物流にしても、「どこまで便利にするのか」というほどほどの議論が必要だろう。
「1分でも早くつく」というのは実は過剰な努力ではないだろうか。
[FT・Lex]ボルボ、自動運転技術の拙速な導入に警鐘
2019年3月26日 6:14
長年業界をリードしてきた乳母役は何でも知っている。現代のシートベルトを我々にもたらしたスウェーデンの高級車大手ボルボ・カーは、技術力を駆使して飲酒運転やスマホを見ながらの運転、スピード違反などの防止に努めてきた。それが今度は安全上の理由から、自動運転技術の拙速な導入に警告を発している。自社の野心的な計画の一部を延期した後だけにご都合主義的な発言にも聞こえるが、このメッセージには耳を傾けるべきだ。
高速道路での自動運転ソフトを搭載したボルボ車=ロイター
自動車事故は人的ミスによって引き起こされるケースが圧倒的に多いのだから、自動運転車を実現すれば道路はより安全になるはずだ。米電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、報道機関が自動運転車による事故に過剰反応していると言う。米国では年間4万人が自動車事故で死亡するというのに、なぜ足首の骨折が一面のニュースになるのか、というわけだ。
しかし見切り発車をすれば、かえってプロジェクトが頓挫する可能性がある。社会的な反発を受けるリスクがあるからだ。2018年3月には米ライドシェア大手ウーバーテクノロジーズの自動運転車が事故を起こし、歩行者を死亡させた。テスラのEV数台も自動運転機能「オートパイロット」を使用中に事故を起こしている。
一部だけを自動化する危険性
特に懸念されるのは、一部だけを自動化した車だ。最近のボーイング737型機の2件の墜落事故も、人間が機械にとって代わる際に生じる問題を提示していそうだ。自動車の場合、ドライバーが非常事態時に運転を代わるよう期待されていても、突然ハンドルを握れといわれると反応は遅れがちだ。トヨタ自動車やボルボ、米フォード・モーター、米グーグル系の自動運転技術の開発会社ウェイモなどの自動車メーカーは、人間の介入を必要としない最先端の自動化技術を待つ方が安全だと考えている。
それで自動運転車の実用化が先延ばしになるのなら仕方ない。飛躍的な技術が全てそうであるように、自動運転車の実現も推進者が期待していたより遅れる可能性が高い。グーグルの共同創業者、セルゲイ・ブリン氏は12年、自動運転車が17年には入手できるようになると予測した。ただし、かつてグーグル社内の自動運転プロジェクトだったウェイモが試験段階で他社を大きく引き離しているとはいえ、ブリン氏が予測した期限はとうに過ぎてしまった。
自動運転車への膨大の投資額が輸送分野として恐らく史上最高であることを考えれば、同プロジェクトがいずれ実現するのは確実だ。ただし、規制当局と消費者が安全性を十分に確信した後だ。
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