藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

火のない車。


IoTがどんどん進み、旧勢力の代表だろう自動車も変化を迫られている。
自動運転がどこまでか。
燃料は電気か水素かディーゼルか。

何れにしても、20世紀の古き良き「エンジンの時代」は変わっていくらしい。
車の心臓とも言えるエンジンを積まずに「モーターで走るそれ」は車ではなく、新しい乗り物なのではないだろうか。
内燃機関で起きた産業革命が、さらに一つ進化する時代に入っているのかもしれない。

産業革命が静かに移ろう2016年。

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連載:特派員リポート
(@ミュンヘンBMWの将来像、自動運転がカギ
 ドイツの高級車メーカー、BMWが、3月に創業100周年を迎えた。競争が激しい自動車業界で、高級車市場で首位を快走する「勝ち組」だ。次の100年に向けて、どんな戦略を描いているのか。車の将来像はどうなるのか。記念イベントを取材した。

 BMWが本社を置くドイツ南部ミュンヘン。創業日にあたる3月7日に開かれた記者会見には、アメリカ、中国など世界各地からジャーナリストが詰めかけた。歴代の名車が並べられた会場で、ハラルド・クルーガー最高経営責任者(CEO)は「会社が100歳になるのは特別なこと。過去100年、多くの勇敢な意思決定があり、何度も会社の方向付けをし直した」と歴史を振り返った。

 BMWは1916年3月7日に航空機エンジンメーカーとして創業。23年に二輪車製造を始め、28年に自動車工場を買収して、自動車メーカーに。30〜40年代には、ナチス政権下で軍に航空機エンジンなどを供給した。クルーガー氏は記者会見で「困難な時代もあった。大変遺憾に思っている」と述べた。終戦後もしばらく経営が苦しく、工場を動かすために、鍋などをつくった時代もある。59年には独ダイムラー(当時ダイムラー・ベンツ)に身売りの危機に直面したが、株主の支援でぎりぎりで回避した。

 苦難の歴史を乗り越えたいま、2015年まで11年連続でダイムラーメルセデス・ベンツや独アウディなどを上回って高級車市場では首位。グループの世界販売台数は15年に過去最高の224万7千台を記録した。クルーガー氏は記者会見で、次の100年に向けて「将来も先頭に立ち、イノベーションの原動力になり続ける」と強調した。

 その後、近くのオリンピック・ホールで開かれた記念式典では、従業員や取引先ら約2千人が集まる中、次世代コンセプトカー「BMWビジョンネクスト100」が発表された。20〜30年後の車の将来像を示すために、スポーツカーをベースにつくった車だ。

 特徴の一つは、自動運転。2020年前後の実用化を目指して各社がしのぎを削っているものだ。

 コンセプトカーでは、自動運転時にはハンドルをダッシュボードに収めてドライバーがくつろげるようにするなど、車内が工夫されている。ただ、完全に自動運転にするわけではなく、ドライバーが自ら運転できるように、運転モードを切り替えるシステムがついている。「車を運転する楽しみは残す」というメッセージだ。

 もう一つの特徴が、デジタル化。テレビゲームなどで使われている、現実の映像のなかにCGなどを重ねて見せる拡張現実(AR)の技術を応用。ディスプレーになったフロントガラス上に、停車中の車のかげから飛び出す自転車や、進行方向のカーブの先にある落石を事前に探知して矢印などで警告するという。事故を未然に防ぐのが狙いだ。

 ログイン前の続き自動運転とデジタル化に向けた戦略が、将来の車づくりの主戦場になるとみているようだ。

 一方で、気になるのは将来の車の動力源だ。

 何が主流になるとみているのか。電気自動車(EV)なのか、それともトヨタ自動車と共同開発を進める水素を燃料とする燃料電池車(FCV)なのか、それとも得意とするディーゼル車なのか。

 コンセプトカーづくりを担ったデザイン部門のトップ、カリム・ハビブ氏は、「何が本命になるのか、予想するのは難しい。多様な選択肢が共存するのではないか」。

 ハイブリッド車などの電動化の技術では、欧州メーカーは日本メーカーに全般的に出遅れている。それでもBMWは13年に量産型EVの「i3」を投入するなど、ここ数年でEVやハイブリッド車の品ぞろえを急速に増やしている。記念式典の翌週に発表した長期戦略でも、自動運転技術とともにEVの開発を急ぐ方針を打ち出した。16年以降、BMWグループでEVや、家庭のコンセントで充電できるプラグインハイブリッド車(PHV)を7車種投入し、傘下に置く英国の名門ブランド、ミニでもPHVを出す方針を発表した。

 ただ「本命」は絞り込まず、FCVやディーゼル車などの開発にも力を入れる考えだ。FCVの開発は1回の補給で運転できる航続距離を伸ばすのが課題のひとつだが、トヨタと開発中のFCVの試験車は最大700キロメートルまで伸ばした。ディーゼル車も、独フォルクスワーゲン(VW)の排ガス規制問題を受けて逆風が吹くが、BMWディーゼルエンジンの開発責任者のフリッツ・シュタインパルツァー氏は「長距離を走るなら燃費の良いディーゼルは有利。BMWディーゼル車を消費者が避ける動きはない」と強調。有害物質を抑える排ガス処理技術などを向上させていく考えを示した。

 自動運転やデジタル化、さらにはEVなど、競争分野が広がる中、必要な開発資金を確保するために、生産コストを抑えて利益をあげる改革が重要性を増している。ドイツでは、ITやロボットの技術を使った第4次産業革命とされる「インダストリー4・0」に官民挙げて取り組んでおり、BMWも工場改革に熱心だ。

 決算発表記者会見の後、本社の組み立て工場を見学した。工場で取り組んでいる一つが「データ分析」だ。生産ラインで作業員が電動ドライバーでボルトを締める際、最適なネジの締まり具合になれば、緑色のランプが点灯して教えてくれる。もし締めすぎるなどしたら、そのデータが品質管理の部門に送られ、品質不良が起きるのを未然に防ぐという。今後は自動車を組み立てる生産ラインと、部品を運ぶ装置との間でデータをやり取りして、部品を自動で運べるような物流の仕組みを整えるなど、効率をあげる取り組みも加速するという。

 BMWグループでは、100周年を記念して傘下のロールスロイスとミニも今年、将来を見据えた次世代コンセプトカーを発表する予定だ。どんな車の将来像や戦略が示されるのか、注目されそうだ。

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 寺西和男(てらにし・かずお) ヨーロッパ総局員。2003年入社、水戸総局、名古屋経済部、東京経済部、国際報道部などをへて2015年4月から現職。39歳。