藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

本筋を説く力。

日本の法律行政を見ていると、しばしば屋上屋を重ね、というのに出会う。
しかも重ねすぎてそもそも何の為にできたのかが疑わしいものもある。
労働法規もその一つ。
この度は配偶者手あての廃止に向けての議論だが、とうに問題の核心は共働きとか子育てとか介護の問題に移ってきているわけで、企業の思惑と国の税制についての考えがまだまだ世の中の実態とズレている。
とはいえ、いつの時代も国の施策待ちをしていては遅いので、ここはいち早く企業が率先して「どのようなスタイルを支援するか」ということを打ち出していくべきだと思う。
共働き奨励なのか、子育て奨励なのか、介護奨励なのか、だから省くものは何なのか。

「既にある権利の上に、さらに条件を」というから「既得権益」という話題になる。
時代とともに変わる環境の中で、過去に得た権利を全て持ってどんどん積み上げていったらそのうち権利の方が重たくなってしまうだろう。
労働の保護が厚すぎて、結局自由にはは人を雇えない、というのは労使双方にとって本末転倒である。

時代の流れから見れば、間違いなく労働も「シェア」であり「効率化」の時代である。
一度働いた人が出産や介護後とか、リタイアした人もその後10から20年とか。
これからはそんな「これまでにはない二毛作」が次々と起こってくるはずだ。
そんな時代を読みつつ、そうした人たちに有利なメッセージを発信するのが、企業にとってもいい人材の確保につながるのに違いない。

配偶者手当は古い? 変わる職場や家族

2016/3/5


 既婚の社員に支給する配偶者手当が議論を呼んでいる。7割の企業に手当はあるが、昨年、トヨタ自動車とホンダが相次いで廃止を発表した。国は女性が働き、活躍することを促すため、手当の見直しを後押しする有識者会議をつくった。手当のあり方を探る企業の取り組みを追った。


 配偶者から子供へ――。自動車業界のトヨタ、ホンダの大手2社の相次ぐ家族手当見直しは衝撃だった。人事院の職種別民間給与実態調査によると、従業員に家族手当を支給している会社は77%で、うち90%は配偶者を対象に入れている。日本企業では一般的な制度だ。

 北見式賃金研究所(名古屋市)の北見昌朗所長によると、配偶者手当の歴史は古く、戦前には法律で義務づけていた。多くの企業は配偶者が扶養に入っていることを条件にしており、専業主婦世帯を前提としていた。高度成長期には妻が家庭を支え、転勤や残業のある夫が仕事に専念するのが主流だった。

 しかし、職場や家族の形は大きく変わった。日本の30〜34歳の女性の労働力率は1975年には43%だった。ところが2014年は68%に上昇した。雇用者全体に占める既婚の男性正社員の比率は85年に53%だったのが10年には34%に下がった。独身者からは「同じ仕事をして給料が違うのは不公平」との不満が漏れる。

 電機業界は00年代、成果主義の導入に伴い、配偶者手当など仕事に関わりのない手当を相次いで廃止した。今回の自動車2社の見直しは家族手当を維持しながらも、対象を配偶者から子供や要介護の親などに移したのが特徴だ。多様な家族事情を抱える社員に合わせたものだが、手当の廃止は賃金削減につながりかねない。会社と働き手の丁寧な話し合いが必要だ。

■ホンダ・トヨタ 廃止のかわりに子供向け増額


 「議論に3年かけた」。ホンダの労働組合幹部は2015年11月に労使合意した配偶者手当の見直しについて振り返る。ホンダは扶養対象の場合、月に1万6000円払っていた配偶者手当をなくす代わりに、1人4800円だった子供への手当を2万円に引き上げた。

 「手当がなくなれば生活に影響する」「子供が欲しくてもできない家庭もある」。支給総額が減る家庭は少なくない。7回以上開いた職場会議では反対意見も多く出たが、最終的には「育児や介護を重視し、時代にあった給与体系に変えよう」とする多数意見でまとまった。

 トヨタは今年1月から、月1万9500円の配偶者手当をなくし、代わりに子供手当を1人あたり2万円にした。夫がトヨタで働く主婦(35)は制度改正のニュースを聞いて昨年末、就職活動を始めた。

 子供は2人いるので家計収入は増えるが「女性に働いてほしいというメッセージを感じた」。前職は長男(5)を出産した際にやめたが、もともと子育てが一段落したらキャリアを再開したいと考えていた。「育児などで仕事を離れていた女性が再挑戦しやすい仕組みを、国や企業は整えてほしい」と期待する。

 一方、三菱自動車は現時点で配偶者手当の見直しを考えていない。従業員の3割強が受給しており、人事担当者は「従業員の既得権益で、会社の都合で無理には変えられない」と説明する。

■メトロ電気工業 さらに手当拡充

配偶者手当を維持したまま子ども手当も充実させたメトロ電気工業(愛知県安城市
 愛知県安城市に本社を置く暖房器具メーカー、メトロ電気工業は昨年3月、月1万2000円の配偶者手当を維持したまま、子供への手当を増額した。

 これまで子供1人あたり月5000円だったが、2人目は1万円、3人目は1万5000円とした。子供が3人いれば月に3万円になる計算だ。出産祝い一時金は子供の人数に応じて1人あたり10万〜30万円にした。

 配偶者手当に収入制限はない。同社に夫婦で勤め、子供が1人の吉原友理さん(34)の家庭の場合、変更前と同じ月に1万7000円が入る。「時短で働く自分の給料はほぼ保育費などに消えてしまうため、かなり助かる。2人目もそろそろ考えたい」と話す。

 100人弱の従業員のうち、手当をもらっているのは約20人だ。「配偶者手当をなくすのは自然な流れなのかもしれない。でも急に配偶者手当がなくなると困る従業員もいる。当面はそのままにした」と川合誠治社長は話す。

 コストは純増になるが、手当は子育てを応援する会社の姿勢を示すことになる。「地方の中小企業は若い人材の確保に苦労する。子育てや介護を抱える社員を大切にして、家族的なカラーを特色にしたい」。今後は介護手当の新設も検討するという。

■潜在労働力300万人…国も動く

 厚生労働省は昨年12月、民間企業の配偶者手当のあり方についての有識者検討会をつくった。企業や労組が見直しを検討する際に参考になる論点や注意点などを、3月をめどにまとめる予定だ。

 民間企業の福利厚生制度のため「手当の廃止を促すものではない」(賃金時間室の千谷真美子企画官)。ただ、労使の議論に与える影響は大きそうだ。人事院は公務員の手当について廃止を含めた見直しを提言する勉強会を始めた。公務員の制度が変われば民間にも一気に波及する可能性がある。

 国の狙いは女性の就労を促す環境づくり。20〜59歳で就業を望む女性は303万人。厚労省によるとパートの既婚女性の2割は年収が増えすぎないよう働く時間を調整している。「一定額を超えると夫の会社の配偶者手当がもらえなくなる」と答えた人は21%。「103万円を超えると所得税を支払わなければいけない」(63%)、「配偶者特別控除が少なくなる」(38%)に次ぐ。

(木寺もも子)