先日スイスでは生活保護を一律つき三十万円にすることを検討しているという記事があり、国民の多くが「その水準で保たれる」ならば税金や年金の積立金は今よりずっと上がるだろうが、妙味のある解決策なのかもなぁ、と思った。
最低限度の年金の額とか、今後の財源とかに汲々していてはこういうドラスティックな案は出てこない。
スイス人は世界一クレバーだというがなるほどである。
GIGAZINEより。
薬物の取り締まりを成功させるには…という記事だが、ここでもスイス人がやっていた。
なんと国でヘロインの管理センターを作り、定期的に配り、宿泊施設も具備し、そして社会復帰を支援したという。
記事中、このスイスの話が登場するまでの絶望的な麻薬利権の根深さを知らされた後だけに驚いた。
薬物中毒者の三人に二人は社会復帰しているというから、スイス人の考える「公共の役割」というのは相当進んでいる。
それにしても"ヘロイン管理センターを作って希望者に薬物を配る"ということを議会で決断できるだけの政策の立案と実行力には舌を巻く。
何千年もヨーロッパを生き抜き、永世中立を標榜する知恵と経験は伊達ではない。
2016年03月03日 08時00分00秒
薬物の取り締まりはなぜ失敗するのか、どうすれば撲滅できるのかを解説したムービー
by John Twohig
これまでアメリカでは薬物をなくすための厳しい取り締まりが行われてきましたが、それらは失敗に終わっています。なぜ薬物の取り締まりに効果がなく、どうすれば社会にはびこる薬物を排除することができるのかについて、「Why The War on Drugs Is a Huge Failure」がアニメーションでわかりやすく解説しています。
Why The War on Drugs Is a Huge Failure - YouTube
1970年代、ニクソン大統領は「ドラッグは社会の最大の敵だ」として、薬物戦争の開始を宣言しました。
しかし現在のところ、この戦争は「失敗」に終わっています。
薬物を駆逐しようとした結果、囚人の数が増加し、社会不安は増し……
南米では暴力がはびこり、数百万人もの被害者を生み出す人権侵害まで起こっています。
毎年何億ドルも費やした結果は薬物を扱う犯罪組織を強化しただけで、目立った成果は挙がっていません。
果たして薬物のない世界はやってくるのでしょうか、そして、もしやってくるのだとしたら、どのような方法が効果的なのでしょうか。
政府のうちたてた薬物戦争の戦略は、薬物自体をなくすというものでした。
そのため、何十年にもわたり、供給側である売人の逮捕が行われました。しかし、この戦略に「需要と供給」という概念はありません。
市場では一般的に、供給量が減ると、物の値段が上がります。
そして、多くのアイテムは値段が上がると需要が落ち込みます。ところが、薬物の場合は需要の落ち込みがなく、供給量が増えても値段の下落がありません。
その結果、生産意欲が高まり、薬物産業は拡大していきました。
もぐらたたきのような状態で、1つの大きな業者を壊滅させても、別の業者が台頭してくるので供給は減りませんでした。
薬物の供給を減らすため、政府が薬品の販売規制を行った結果、大きな工場は潰れましたが……
その代わり、小規模な業者が増加し、規制外の物質が使われるようになります。
政府はこの事態に対処するため、さらに規制を厳しくすることで小規模な業者をつぶしていきましたが……
供給量は変わりませんでした。今度はメキシコから薬物が持ち込まれるうようになったのです。
彼らはうまく密輸することに長けており、また薬物の質も高いものでした。
つまり、政府の努力は裏目に出るばかりで、薬物の供給が減ることはなかったのです。
300億ドル(約3兆4200億円)の予算を使って、政府が取り締まれたのは国外の薬物1%のみ。供給のみでなく、需要を見る必要があったのです。
その結果、「薬物に対する規制が逆に薬物の問題を作っている」という状態が生まれています。
例えば、薬物の効き目が強くなっているのは、その方が場所を取らないため。
現在の薬物と同様に、禁酒法時代のお酒も強いものが多かったとのこと。
また、薬物の禁止は世界中で暴力を増加させています。
犯罪組織は司法に訴えることができないので、暴力を使うのです。
ある調査結果では、薬物戦争の影響で、殺人が25〜75%も増加したと報告されています。
特にメキシコが顕著で、2007年から2014年までにおよそ16万人が殺されています。
これは同じ時期にアフガニスタンやイラクで亡くなった人の数よりも多いそうです。
また、薬物の規制で最も大きい損失は、暴力をふるわない人を監禁していること。
世界的に見ると、アメリカの人口は世界人口の5%にすぎませんが……
囚人の数は世界の25%にあたります。
刑務所での罰は厳しく、権利侵害も行われています。
なお、アフリカ系アメリカ人の囚人の割合は、アメリカの囚人全体の40%。
アフリカ系の少年は、薬物を理由に逮捕される確率が白人の少年より10倍高いと言われています。
では薬物の蔓延について、出口はあるのでしょうか?
1980年代、スイスではヘロインの乱用が社会的な問題になりました。
HIVが広まり、街の治安も悪くなったスイスでは、アメリカとは逆に「薬物に関する罰則をなくす」という方法がとられました。
そして、ヘロイン管理センターを創設。
ヘロイン管理センターでは無料でヘロインがもらえ、清潔な注射器や針も得ることができます。
さらに、シャワーやベッドまで用意されました。
社会福祉士の援助も受けることが可能。
その結果、麻薬関連の犯罪が減り、3人に2人が定職について人生をやり直すことができました。
現在、スイスの薬物中毒者の70%がヘロイン管理センターに通っているとのこと。
HIV患者の数は劇的に減り、中毒死の割合も50%にまで下がりました。
街に存在した薬物に関連した場所も……
現在ではクリーンになっています。
この方法はコストがかからないだけではなく、高い効果が得られたのです。
薬物の規制はお金や人権を捨て悲劇を生み出しているようなもの。
40年にわたる薬物戦争を終わらせ、今こそより良い道を歩むべきだ、とムービーは締めくくられました。