藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

判断の切れ味。

日経より。
中国の未来都市「雄安」がすごいものになりそうだ、という話。
さらに

ヒントは習氏がめざす4つの「AI(人工知能)特区」構想だ。
南から深圳をヘルスケア(医療映像)、杭州をスマートシティー合肥安徽省)を音声認識北京一帯(雄安を含む)を自動運転の中心地区と決めた。

こういう話、日本はもちろん欧米でもそうすんなりとは決まらないだろう。
予算配分がどう、法律や公共性がどうの、で消耗してしまう。
一つづつのエリアで数年もかけて国会で議論しているのではラチがあかない。

「意思決定機能」の問題だ。

国のことはともかく。
スタートアップの小企業が有利なのはこの点に尽きる。
無駄がなく、多少リスクはあっても即断できる力がある。
次がなければぶっつぶれる、という危機感も強い。

民主主義とか、共和制とか、ガバナンス、と「調整力」ばかりに関心していると圧倒的な「意思決定力」に大差をつけられてしまうだろう。
自分の道は自分たちで決めていくしかない。

車を変える「次の深圳」

2018年6月20日 2:0

300を超す提案が現在あるという。中国政府が昨年、新経済特区の建設を表明して注目される「雄安」の都市計画だ。

「次の深圳」と呼ぶ人もいる。訒小平氏が1980年代に深圳を改革開放の象徴にしたように、習近平(シー・ジンピン)国家主席は雄安を「デジタル中国」の象徴に据える可能性があるからだ。

漁村だった深圳は今やものづくりとSNS、ドローンの世界的な都だ。では現在農村地帯の雄安の将来は。断言は難しいが、新しい自動車産業、今風に言えば「モビリティー産業」の都になる、というのが一つの見方だろう。

ヒントは習氏がめざす4つの「AI(人工知能)特区」構想だ。南から深圳をヘルスケア(医療映像)、杭州をスマートシティー合肥安徽省)を音声認識北京一帯(雄安を含む)を自動運転の中心地区と決めた。

医療映像は騰訊控股(テンセント)、スマートシティーはアリババ集団、音声認識は科大訊飛(アイフライテック)、自動運転は百度バイドゥ)と巨大企業をそれぞれ中心企業に選んだ。これらを総称して、中国では「4大プラットフォーマー」と呼ぶそうだ。

中でも自動運転は習氏の肝煎りだという。渋滞や大気汚染、大都市と周辺の経済格差。これらを一体的に解消するのが雄安開発の狙いだ。

空想が過ぎる、という指摘も出るかもしれない。300の提案には従来の車や二輪車を地下道に、自動運転車を地上の道路に集約する、などの奇想天外な案も多いらしい。自動運転の最大の障害は、無人で動かない車や自転車、歩行者が道路に混在することだ。地上と地下ですみ分ければ、実用化は容易になる。中国なら本当にやりそうな話ではある。

そうした前提があるからか、雄安ですでに走行実験を進める百度は「アポロ」という自動運転用のプラットフォームを提唱し、部品や装備品のサプライヤーと自動車メーカーに参加を呼びかけている。事実上の「国家推奨技術」であるだけに、これまでに100を超す内外の企業が参加を表明した。

中国は自動車でゲームチェンジを狙っている。そんな印象を強く受けたのは上海で先週開かれた見本市、CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)アジアだった。自動車関連の出展は全体(約500社)の4割近くに達した。多くは中国で生まれたばかりの無人タクシーや自動運転用のソフトウエア、半導体チップのベンチャー企業。車やエンジンというより、アルゴリズムやサービスを世に問う展示が多かった。

最も興味を引いたのは、関係者の多くが「自動車産業では今後、販売台数や市場シェアの重要性が失われる」と断言していたことだ。配車やシェアリングなど、これから勃興する新しい自動車サービスの産業規模は「車を製造して販売する従来型自動車ビジネスの規模に匹敵、または追い抜く可能性が高い」と考え始めている。

もちろん来年、再来年の話ではない。2020〜30年にかけてのことだろうが、それでも百度ベンチャー企業によれば、中国政府の政策的、資金的支援は今から大規模だという。「自動車は家電製品のように簡単には米欧、日本に勝てない」という割り切りがそうさせるのか。半ば強引にでも「ハードで戦わない世界」を創り出そうとの意志はいたるところで感じられた。

他の業種だが、中国で見聞きした成功事例にこんな企業があった。航空券予約の「航旅縦横」と映画鑑賞券の購入サイト「時光網専業版」。どちらも急成長株だ。

航旅縦横は自社のウェブサイトがすべての航空会社の情報システムとつながり、予約や顧客の乗る飛行機の情報閲覧が携帯端末から簡単にできる。航空会社が自社の顧客を囲い込む日本や欧米ではあり得ない話だ。映画の時光網も同じような仕組みをもつ。

ここからわかるのは二つだ。中国では政府の鶴の一声で企業間のデータの統合が常に容易だという点。さらにはベンチャー企業には最初から規制を設けず、問題が生じるまで意外にも事業を自由にさせていることだ。

自動運転サービスにもそうした考え方は適用されるという。百度のプラットフォームには近い将来、アリババやテンセントのSNS電子商取引、決済サービスがつながる可能性がある。中国国内のあらゆる情報、データが統合されることもありうるらしい。

「デジタルサービス収入を至上と位置づけるゲームチェンジ」と言えばいいだろう。販売台数やシェアではなく、携帯電話やインターネットで言う「ARPU(1契約当たりの月間平均収入)」が重視される世界だ。そのピラミッドの頂点には中国の巨大IT(情報技術)企業が座り、中国政府も強大な影響力を握り続ける。

雄安はそんな産業構造転換の象徴になるのだろう。中国はそこで確立するビジネスモデルを別の都市にも移植する。いずれは、新経済圏構想「一帯一路」と関係が深いタイ、ラオスなどにも「輸出」するはずだ。

中国は自動車産業への外資規制をやめるが、それは「別のやり方で産業支配が可能」との自信の表れでもあろう。あくまで中国1国で進む話だ。だが、中国は世界の3割を占める自動車市場であり、日本企業の経営戦略にも大きく影響する話である。

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