藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

覇者はおごる。

ローマ帝国桶狭間の闘いの分析もも面白いが、やはり現代だ。
このリアリティがなんともはや。
アメリカには慎みがないとか、中国は品がないとか言うけれど、見ているのはまるでプロレスだ。
プロレスはその「凄み」に魅力があるという。
迫力のあるバトルは見ていて惹きつけられてしまうものだ。

モノ作りの雄とデータ貯蔵庫(サイロ)を志向した新手の闘い。

去年くらいまではそんな闘いの様子は、一般人には「まだ静か」に見えたと思う。
今や毎週のように両陣営の合従連衡や抜きつ抜かれつの報道が飛び交う。

かつて電車や地下鉄が開通して交通機関が様変わりしたように、来年からが「最も変化の激しい時代」になるのじゃないだろうか。
自分の仕事がどうなるかが危ぶまれるが、楽しい時代になりそうだ。
次の覇者がGoogleなら、彼らは奢らずに突き進むことができるのだろうか。
目が離せない。

トヨタ「ティア2」に陥落か グーグル、都市まで支配 MaaSの衝撃(4)

「ソフトウエア企業であるにも関わらず、トップに『ものづくり』のプロがいる。ウェイモには死角がない」――。米グーグルの親会社であるアルファベット傘下の自動運転開発ウェイモを訪れた日系自動車関連企業のトップが、ため息をつく。面会した最高経営責任者(CEO)のジョン・クラフチック氏が、自動車工場を熟知する人物だったからだ。

トヨタの工場知るウェイモCEO
クラフチック氏は、韓国の現代自動車トヨタ自動車などで経験を積んできた。トヨタ時代には、世界の工場を回って課題を探る業務に関わったとされる。米マサチューセッツ工科大学(MIT)で、リーン生産方式を研究した経験もある。ウェイモの弱点であるクルマの「ものづくり」の知識を補完するのにうってつけの人物である。
実のところウェイモ自身は、車両を製造しない方針である。提携先に製造を任せるため、クラフチック氏の経験は必要がないように思える。それでも同氏をトップに据えるのは、「ものづくり」の知識がなければ、提携先との交渉で足元を見透かされると考えたからだろう。多くのハードウエア技術者を抱える米アップルと同じである。
ウェイモを訪れた日系企業トップは、自動車メーカーと向こうを張って交渉できるクラフチック氏にトップを託すグーグル系のしたたかさに舌を巻いたわけだ。
移動手段をサービスして提供する「MaaS(マース)」が、自動運転車の実用化を目前にして花開こうとする。トヨタにとって、MaaS時代の最大の競合企業がウェイモである。ウェイモの自動運転ソフトウエアを使ったMaaS用車両が成功すれば、トヨタの利益はあっという間に吹き飛びかねない。

■ウェイモ、トヨタに大きく先行
ウェイモは、自動運転開発でトヨタに大きく先行する。2010年に自動運転車の試作車を発表していた。トヨタが「自動運転を目指さない」と話し、その将来性に気付いていなかった13年ごろ、ウェイモは既に30万キロメートル超の走行実験を果たしていた。18年10月には、世界で最も早く総走行距離が1000万マイル(約1600万キロメートル)に達したと発表した。
トヨタがウェイモを強烈に意識するのは、ウェイモが米国企業であり、同国を優先して自動運転ソフトの開発を進めている点も大きい。トヨタにとって米国市場は利益の源泉。ウェイモの開発が成功すると、トヨタの経営は真っ先に揺らぐ。
現時点でウェイモは、自らMaaSオペレーター(運営者)になるのか明らかにしていない。MaaSは「もうからない」と考えるトヨタと同様に、MaaS運営者に自動運転ソフトを提供する「B2B」にとどまる可能性はある。
それでもトヨタはMaaS運営者の有力候補である米ウーバー・テクノロジーズに出資し、その筆頭株主であるソフトバンクグループと手を組んだ。ウェイモを含むグーグル系が、自ら開発する自動運転車を駆使したMaaS運営者となって米国自動車市場で台頭するシナリオに備える。

トヨタ、他社製ソフト搭載を認める
出遅れるトヨタが自動運転車の開発で意識するのが、ウェイモ製ソフトを搭載した車両との差異化である。非効率に思える仕組みであっても、顧客の要望に積極的に応える。顧客重視でウェイモとの決戦に臨み、トヨタとウェイモで天秤にかけるMaaS運営者の受注を勝ち取りたい。
顧客重視の代表例が、MaaS運営者が開発する自動運転ソフトを、トヨタの自動運転車に組み込める仕組みを構築することだ。ウーバーと共同開発するMaaS車両で、ウーバーの自動運転ソフトとトヨタの運転支援ソフトをともに搭載する。

トヨタとウーバーが開発するMaaS向け自動運転車両の概要(出所:トヨタ自動車
トヨタは、自ら自動運転ソフトを開発している。似たソフトを2つ搭載するのは冗長で非効率に感じる。それにも関わらずウーバー製自動運転ソフトの搭載を許すのは、ウェイモの存在を意識したからだろう。ウェイモは「(非効率になる)他社製自動運転ソフトの搭載を認めないのではないか」(自動運転開発の専門家)と見る向きがある。
他社製ソフトの搭載を許すのには、トヨタにも利点がある。自動運転ソフトの開発工数を減らせることである。
顧客が望む地域で自動運転車を走らせるには、高精細地図データを作らねばならない。加えて、国によって交通事情が異なる上、工場などの私有地で使うのであれば、独自の走行ルールもある。顧客の用途に合わせてソフトを開発するのは、いかにも効率が低い。
トヨタ副社長の友山茂樹氏は、顧客に自動運転ソフトの搭載を認める狙いをこう語る。「サービスごとに制御ソフトは大きく異なる。配車で人を運ぶのか、モノを運ぶのか。あるいは限られた区域内で無人搬送車(AGV)のような働きをするのか。幅広い用途に自動車メーカーだけで対応していくのは難しい」

トヨタ自社開発ソフトで顧客守る
トヨタは、MaaS運営者に自動運転ソフトの搭載を認めることに加えて、MaaS運営者を事故から守る仕組みを開発することで「顧客重視」を推し進める。
18年1月に披露したMaaS向け自動運転車のコンセプト「イーパレット(e-Pallete)」。「ガーディアン」と呼ぶ運転支援ソフトを搭載する方針を発表した。「走る・止まる・曲がる」の基本機能では、仮に顧客の運転指示が誤った場合にはトヨタの「ガーディアン」による指示を優先する。

顧客となるMaaS運営者は、自動車の開発に不慣れな企業が多いことを想定した。例えばウーバーは、自ら自動運転ソフトを開発する。だが公道実験中に死亡事故を起こし、トラック用の自動運転ソフトの開発から撤退を余儀なくされた。トヨタの「ガーディアン」があれば、事故を防げたかもしれない。
トヨタにとっても、ブランドを毀損するリスクを下げられる。ウーバーの事故では、同社に車両を提供したスウェーデンボルボがやり玉に挙がった。「ガーディアン」は、顧客と同時にトヨタ自身を守る仕組みになる。

■MaaSの先を行くグーグル系
自動車事業の命運を賭ける競争に向け、準備を進めるトヨタ。だがグーグル系は、トヨタをあざ笑うかのようにMaaSの先を見据えた壮大な構想を描く。データを軸に、都市をまるごと再構築する取り組みに挑み始めた。
15年にグーグルが設立したサイドウォーク。モビリティーにとどまらず、エネルギーや建築、ごみ処理、健康管理までを含めた都市の基本サービスを提供する街づくりをもくろむ。
B2Bを志向し、MaaS時代には「ティア1(1次部品メーカー)」といえる立場に甘んじる決断を下したトヨタ。グーグル系が構想する都市プラットフォーム内では、「ティア2」の地位に陥落するかもしれない。トヨタの顧客であるMaaS運営者が、グーグル系都市プラットフォームの一機能になるからだ。トヨタは顧客からどんどん遠ざかる。

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都市プラットフォームの構築をもくろむグーグル系。実現すれば、主役は都市管理基盤を手掛ける事業者になる。MaaS運営者は、都市管理基盤の運営者にサービスを提供する形に。自動運転車の管理基盤を手掛けるトヨタは、ティア2と呼べる立場に陥落する。青色がグーグル系の手掛ける領域(イラストの出所:サイドウォーク)
サイドウォークは17年、カナダ・トロント市の都市計画に参画すると発表した。19〜20年にかけて、同市の300ヘクタール以上の範囲内で街造りを始める計画とされる。
詳細は不明だが、サイドウォークが構想する街にはウェイモが開発する自動運転車が走り回るだろう。「自家用車(マイカー)は走っていないのではないか」(名古屋大学客員准教授の野辺継男氏)との見方も飛び出す。サイドウォークの構想が世界に広がると、これまでのような販売を軸にした自動車事業はほとんどなくなる。
■日独米ブロックチェーン連合で一矢報いるか
「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにする」ことを社是とするグーグル。そんな壮大な構想に置き去りにされかねないトヨタは、一矢報いる対抗策も模索する。対グーグル系を想定したと言える日独米連合を立ち上げた。
18年5月に設立した「モビリティー・オープン・ブロックチェーン・イニシアティブ(MOBI)」だ。グーグル系の強さの源泉といえるデータの囲い込みにくさびを打ち込む狙いがある。ブロックチェーン技術を使い、各社の自動車関連データを共有する仕組みを作る。
トヨタの研究子会社トヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)で最高財務責任者CFO)兼モビリティーサービス責任者のクリス・バーリンガー氏が、MOBIのCEOに就く。MOBIにはトヨタに加えてデンソーといった日本勢、さらにBMWボッシュといったドイツ勢、ゼネラル・モーターズGM)やフォード・モーターなどの米国勢が参画する。
CEOのバーリンガー氏は日経 xTECHの取材に対して、「(グーグルなどは)自らが所有するデータを『サイロ(貯蔵庫)』に囲って、大きく成長してきた。MOBIでデータのサイロを破壊し、広く活用できるようにする」と意気込む。まずはクルマの価値に影響するデータ(履歴)を共有する用途を想定し、ブロックチェーンを活用する。
MOBIの狙いが奏功するのかは不透明である。それでもデータの囲い込みは、グーグルの強みであると同時にアキレス腱でもある。これまでも悩まされてきたプライバシー問題が生じるからだ。「データのサイロ」に照準を合わせてグーグル系に切り込むMOBIの方向性は正しい。
グーグル系によるデータの囲い込みに伴うプライバシーの問題は、今後さらに大きくなるはずである。モビリティーから都市の再構築へと事業の軸を移すのに合わせて、公共性が格段に高まるためである。公共事業に近づくほど、人々の生活に密着する。プライバシー問題は、人権問題に直結する。
サイドウォークはトロント市のプロジェクトで、市民対象のイベントを頻繁に開催する。生活に関わるデータをグーグル系が収集することに伴うプライバシーへの懸念を払拭したい思惑があるのだろう。

「Start Your Impossible(不可能なことを始めよう)」――。トヨタが17年に掲げた企業メッセージである。トヨタがかねて尊ぶ「ものづくり」とは異なるグーグル系との競争は、トヨタにとってまさに「不可能への挑戦」に近い。
自らの強みを生かしてB2Bを軸にMaaS時代を戦う方針は悪くない。あとは戦う上で武器となる自動運転車の開発を急がねばならない。ウェイモは18年12月、米国で自動運転車を使った商用の配車サービスを始めた。歴史が教えるIT(情報技術)業界のおきては、先行したトップ企業が圧倒的なシェアを握ること。トヨタに残された時間は少ない。
(日経 xTECH/日経Automotive 清水直茂、日経 xTECH/日経エレクトロニクス 根津禎)