藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

地方の時代。

*[次の世代に]積極的に縮む。
日経より。
老朽インフラと闘う、という見出しだが、そんなものとは闘えないだろう、と。
負け戦だ。
「いかに負けるか」という闘いになるだろう。
少子高齢化」をまるで悪者のようにいう向きもあるが、自分は「高ら多産奨励政策をとるべき」という主張は早計だと思っている。
まずそれぞれの地域で「人口を増やすのがベストか」とか「適正な都市の集約を図って持続的な街を計画するか」とかいう議論が抜け落ちている。
これは我われ一般人が真剣に考えなければならないことだ。
 
大都市で暮らしていると、ふと地域の中心街に行って「利便性と自然の共存」に気付いたりすることがある。記事には
日本の水道が劣化した背景は人口減だ。水道事業は経費を料金収入で賄う独立採算が原則。水道の利用者が減って料金収入が目減りし、約3分の1の事業が実質的な赤字に陥った。耐用年数が過ぎた設備が増えても予算が足りないので、更新する配水管は毎年、全体の1%以下しかない。
とある。
田舎の集落のインフラを永遠に維持する、という戦略では闘えない。
限界集落にしがみつくのではなく、どのくらいの地域にとどまって「戦略的に縮むのか」という戦略がいよいよ必要な時代になってきた。
 
ネットの発達がますます進むこれからの時代。
若くても暮らしやすく、老後も快適な地方都市は、案外日本には生まれやすいのではないだろうか。
これからは地方の巻き返しの時代になるような気がしている。
 
老朽インフラと闘う(1) 蛇口から水が出ない
2019年5月13日 17:00
3月19日、北海道積丹半島にある人口約3千人の古平町の全域で水道が使えなくなった。川の取水口と浄水場を結ぶ管が故障したのが原因だ。復旧作業は雪に阻まれ、水道が元通りになるまで9日間もかかった。
1メートル超の積雪のなか、漏水した管を掘り返す作業は難航した(3月、北海道古平町)
「蛇口をひねっても何も出てこないんだもの、びっくりしちゃった」。同町に住む小林あさの(83)は振り返る。町外から駆けつけた給水車で飲み水は確保できたが、風呂は隣町の温泉に臨時バスで通い、洗い物も最低限しかできなかった。「とにかく不便だった」
影響は産業にも及んだ。漁協に隣接する水産加工場は、稼働時間を半日に短縮せざるを得なかった。地元の人に親しまれる温泉施設「しおかぜ」はシャワーなどの設備が使えず、営業停止を余儀なくされた。
古平町が今の水道網を整備したのは1970年代。水道設備の法定耐用年数である40年間を過ぎ、老朽化が進む。町は配水管の更新に年数千万円の予算を割いてきたが、断水の原因となった浄水場の設備更新は「億単位の費用がかかり、なかなか手を出せずにいた」(副町長の佐藤昌紀)。
□   □
水道の漏水・破損は全国で年間2万件に上る。何らかのトラブルが毎日50件以上も起きている計算だ。18年6月に発生した大阪北部地震でも老朽化した水道管が破損し、影響が広範に及んだ。だが水道を安定させる改革は一進一退の様相だ。
19年1月。浜松市長の鈴木康友(61)は上水道事業の運営を民間企業に委ねるコンセッション方式の導入を無期限で棚上げすることを表明した。民間企業の活用は、水道の処方箋の一つとして18年12月に成立した改正水道法に支援策が盛り込まれたばかりだった。
同市は18年4月に下水道施設の一部運営で全国初のコンセッション方式を導入した。上水道でも先駆けになると目されていた矢先の失速は、民間活用に水道の活路を探る全国の自治体に冷や水を浴びせた形になった。
誤算だったのは市民の反発だ。市の事前調査では水道料金の値上げ幅を抑えることができるという結果だったが、水質悪化や料金高騰に懸念を抱く市民団体が3万人を超す反対の署名を集めた。
「完全民営化だとの誤解が広まり、冷静に議論できる環境にない」。鈴木は苦渋の決断に至った理由をこう説明した。4月の市長選で4選を果たしたが、当選後の記者会見でも「民営化と言われなくなるまでは議論はできない」として慎重姿勢を崩さなかった。
日本の水道が劣化した背景は人口減だ。水道事業は経費を料金収入で賄う独立採算が原則。水道の利用者が減って料金収入が目減りし、約3分の1の事業が実質的な赤字に陥った。耐用年数が過ぎた設備が増えても予算が足りないので、更新する配水管は毎年、全体の1%以下しかない。
□   □
改革のもう一つの柱である広域化もすんなりとは進まない。厚生労働省によると行政事務や予算の区切りである4月に広域化したのは今年は2地域だけ。厚労省の検討会では「市町村合併と比較すると大変に難しい」(松江市上下水道局長の川原良一)との声が出た。
家庭用の水道料金は全国平均で月3244円だが、市町村の格差は住民税などの税率と比べてはるかに大きい。全国で最も安い兵庫県赤穂市の853円に対し、最も高い北海道夕張市は6841円と8倍の開きがある。事業の広域化で水道料金が上がる自治体が抵抗すれば話は進まない。
水道民営化が進んだフランス。料金は欧州平均より11%安く、人口の95%以上が高品質の水道水にアクセスできる。近年は料金への不満からパリ、グルノーブル、ニースなどが公営に戻したが、一方で新たに民営化する自治体も多い。効率的で質の良い水道を求める改革の努力が盛んだ。
人口減の日本では水道改革は時間との闘いだ。民間活用であれ広域化であれ、コスト削減も料金の引き上げも進まなければ水道事業そのものが破裂する。各地で悲鳴を上げる水道管は「水があるのは当たり前」という日本人の意識の変革を迫っている。
(敬称略)
水道、橋、トンネル……日本のインフラが老朽化できしむ。維持か廃棄か再生か。インフラと闘う最前線を追う。