藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

日本のこれから(2)

[次の世代に]地域リーダーの時代。
少子高齢化で、都市部といえども安穏とはしていられない日本。
大手ディベロッパーに勤める友人に先日聞いた話。

「あの今流行りのタワマンとか、再開発プロジェクト。建物はうまく手入れすれば100年保つけど「その先」は誰も考えてないよ。」

目一杯の容積率緩和を受け、高層建築にした後「建て替える」のは非常に困難だという。
そして少子高齢化でもある。
100年後に「一戸あたり数千万円を負担して建て替える」というのは現実的ではないらしい。

つまりは「建物が住めなくなるまでのババ抜き」的な感は否めない。

老朽化し、建て替えもかなわず、スラム化していくマンションはどのように処理されていくのだろうか。

中央の政治家に頼むのではなく、地域の市区町村の長が、「将来の街づくりにどれほどのプランを立案できるか」が明暗を分けそうである。

地域の優秀なリーダーを選ぶ必要がある。

修繕費用は110億円超… 金食い虫「タワマン」のスラム化懸念、その対策例
金食い虫「タワマン」
「タワマン」住民が悲鳴を上げた「修繕費が足りない!」(下)

 全国に1300棟超が建てられているというタワーマンション(以下、タワマン)に、修繕費の問題が浮上している。そのコスパの高さゆえ、ディベロッパーが乱立させたものの、

「大規模修繕については業界全体の経験値が低く、いくらかかるのか予測が立てられていません。初期のタワマンが一斉に1回目、2回目の大規模修繕を迎えますから、これから大きな混乱があると思います」(建物診断設計事業協同組合の山口実理事長)。

修繕引当金を徴収しているマンションも多いが、そもそもの見積もりが甘い場合が少なくない。

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 実際、日経新聞も3月27日付朝刊で、「マンション75% 修繕不安」との見出しで、特にタワマンで修繕積立金が不足している旨を報じた。さくら事務所のマンション管理コンサルタント・土屋輝之氏は、

「われわれのところにも資金が足りない、と駆け込まれるケースが非常に多い」

と言って、費用が不足する原因を次のように説く。

「最初に、工費の見積もりが甘いケースです。よく見るのは設備のメンテナンスを計画できていない場合で、見落としが多いのが、スプリンクラーや消火設備などの防災設備。非常用の自家発電機など1台3000万〜4000万円し、30年ほどで交換の必要がある。こうした諸々を見落としていて、いざ見直すと数億円余計にかかる、ということも珍しくありません」

修繕工事費が不足する原因は、まだある。

「13年秋ごろ、消費増税を見越した駆け込み需要を受けて工費が値上がりし、われわれの感覚で、修繕工事に従来の1・2〜1・3倍かかるようになった。さらには東日本大震災の復旧や東京五輪もあって慢性的な人手不足が続き、工費は値上がりしたまま。五輪後の値下がりを見越して修繕を先送りしている管理組合も多く、五輪後も工費は下がるどころか、値上がりする可能性さえあります」(同)

値上げが先送りされた結果……

 だから積立金を値上げして、来たるべき修繕に備えるほかないはずだが、

修繕積立金の値上げが先送りされ、資金不足になるケースが多いのです」

と、土屋氏は言う。

「積立金は、段階増額方式で集めているマンションが圧倒的に多い。築年数が経つにつれ、月々の積立金を値上げしていく方式で、分譲時は少しでも費用を安く見せるため、この方法がとられがちですが、値上げすると払えずに滞納する人や、積立金が高額になった時点で退去する人が出る可能性があって、収入見込が不安定。一気に値上げして、その後は同額を払い続ける均等積立方式で修繕金を集めるほうが安心です」

だが、住宅ジャーナリストの榊淳司氏によれば、

「特に都市部のタワマンはアベノミクス以降、値上がり期待で購入されるケースが増え、某不動産流通サイトを見ると、去年9月に完成した新宿区のタワマンは、すでに88戸が売りに出されている。タワマンは不動産のなかでも最も金融商品に近く、3〜4割が投資用だと言われるほどです」

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値上げの成功例

 これでは、修繕積立金の値上げがうまくいくはずもなかろう。はたして「夢の住まい」から転落せずに済む方法はあるのか。ここは積立金の値上げに成功した奇特なケースを覗きたい。

「09年に完成した私たちのマンションは13年、築5年のときに長期修繕計画を修正し、タワマンでは恐らく初めて、50年の均等積立方式に変えました」

そう言うのは、神奈川県川崎市に建つパークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー管理組合法人理事の志村仁氏。タワマンがいかに金食い虫か。志村氏の話から如実にわかる。

「小規模なマンションでは修繕工事費の9割が外壁補修ですが、うちでは1割ほど。タワマンでは圧倒的に設備修繕に費用がかかります。うちは外壁補修は十数億円でできるのに対し、ポンプやエレベーター、給排水管の交換などには70億円近くかかってしまいます」

ケタが違うのだ。

「最初の30年は、毎年の平均支出額が1・9億円ですが、31年目からは2・5億円もかかり、50年全体でかかる費用は計画上で110億円を超えます。そこで分譲当初は1平方メートル当たり85円だった積立金を、5年目に均等積立に移行して同230円にまで引き上げました。段階増額方式だと値上げのたびに総会で決議にかけ、過半数の賛成を得なければならず、住民の反対で予定通り値上げできないリスクも伴うからです。結果、1戸平均で月6000円が1万7000円ほどになって、管理費など諸々含め、月に4万円ほど支払っている住戸が多いですね」

居住者に納得してもらうために、住民説明会を10回行い、「ミッドスカイタワーは50年安心、という評価を市場に定着させる」など、説明を繰り返したという。それに加えて、

「築5年だったからスムーズに均等積立に移行できたのだと思います。10年、20年経っての値上げは、高額になるので反対意見が出やすく、退去者が一気に出る可能性も。タワマンで築10年を超えているのに、積立金が1平方メートル当たり100円を切っていると、かなり深刻だと思います」

逆に言えば、こうした手を打てていないタワマンは、先行きがはなはだ不安だということだ。

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キリギリスが多いと

 さらに早く、築4年のときに均等積立方式に移行したと話すのは、東京都足立区のイニシア千住曙町管理組合法人の代表理事、應田治彦氏である。

「それまでは段階増額方式でしたが、管理会社に長期修繕計画を見直してもらうと、工費が28億円から34億円に増えるといいます。そのままの積立では1回目の工事すらできないことが判明し、13年に1戸当たり月額約2万円へと、一気に2倍以上値上げし、全515戸で年に1・2億円を集めるようにしたのです」

幸い9割の住人の賛成が得られたのは、反対者の声に応える努力をした結果だそうだ。たとえば「管理費の収支を改善すれば値上げしなくてもいいのでは」という声に対し、年間3000万円の管理コストを浮かせる努力をしたという。

「管理会社と交渉し、管理費を年600万円値下げしてもらい、マンション内のミニショップを廃止する代わりに管理人に常駐してもらって600万円。照明をLEDに替え、高圧一括受電にして700万円。エレベーターの業者を変えて400万円削減しました。また駐車場や電動レンタサイクルの貸し出しなどで500万円の利益も出すなどして、3000万円を浮かせたのです」

要は、住人たちが意識してそれだけのことを重ねなければ、将来の修繕すらままならないわけだ。

「私たちは永住希望者が多かったため均等積立方式にできましたが、湾岸地区や武蔵小杉などは投資目的で購入する人も多いと聞きます。短期売却したい人には段階増額のほうがいいですからね。私は“アリとキリギリス論”と呼んでいますが、いま楽なほうがいいと考える人が多いと、値上げはしにくいと思います」

キリギリスが繁殖したタワマンはどうなるか。

「修繕もままならず、古くてボロボロになったタワマンなど、誰も買おうとしませんし、借り手も見つかりません」

最悪のケースをこう想定するのは土屋氏である。

「いま1回目の修繕工事の検討段階に入ろうというタワマンが非常に多い。そして実際に必要な経費が提示されたとき、修繕工事費不足が次々と露呈する可能性が十分にあります。タワマンはディベロッパーにも不透明なことが多く、積立金不足がここまで問題化するとは、建築当初は想定されていませんでした。自分の住むタワマンがスラム化を逃れられるかどうかは、売買や賃貸など物件としての流通性を維持できるかどうかにかかっている。労を惜しまずに学び、信頼できる専門家に早くから相談することです」

しかし、ただでさえ、ほとんどの中古物件の価格が下がっている昨今。高い積立金を支払いながら、必死に価値を維持しつつバベルの塔に住むのは、「夢」とはほど遠い気もするが。

週刊新潮」2018年5月17日号 掲載