'70年生まれ
'85年(中三)でプロに。
'89年初タイトル(竜王)獲得。
'96年全タイトル制覇(七冠)達成。
以後、一時も無冠たらず。
現在三冠。(王位・王座・王将)
もう聞きなれた感があるが改め、すごい記録だ。
- 作者: 羽生善治
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2005/07/01
- メディア: 新書
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再読してみたくなった。
□ 人として、の姿勢。
プロ棋士の間でも、「進行する十手先」を想定するのは難しいらしい。しかも、経験が増えれば迷いも増える、と。
著者はその「迷いと決断の焦燥」の様子に「人間の本質」を見、将棋でそれに迫りたい、と言う。
また、最善の手は「大局観と事前の研究」から生まれる、と。
「大局観」というところがミソで、その信条は「リスクを避けないこと」。「攻め続ける姿勢」の意義を説く。
将棋の世界も情報化の波が押し寄せ、典型的な棋譜の学習速度は従来の何倍も早いらしい。
自分の編み出した新戦法の鮮度も急速に落ちる。
リアルタイムにネットで共有され、「知れ渡るまでの利得」が消失したからだ。
著者はこれを「高速道路の開通」と呼び、しかしながら「その先では大渋滞が起こっている」と表現する。これが『高速道路理論』だ。
そんな中、「新しい手」を開発するという(一見マネされて無駄に見える)「投資」をし続ける行為にこそ、底力の「源」はある、と語る。
かつてガリバー、IBMを想起した。
「どれほど類似技術が続こうとも、カッティング・エッジ(最先端)にいるのは、世界で最も投資を続ける、自分達だ」という姿には、風格を感じたものだ。
羽生氏の黄金律は以下の通り
・アイデアを思い浮かべる
↓
・それが上手くいくかを細かく調べる
↓
・実戦で実行する
↓
・検証と反省
と。ビジネスと何にも変わらない。
当たり前か。
□ その先の大局感。
IBMのコンピュータ「ディープ・ブルー」が'97年、チェス世界王者のゲーリ・キモビッチ・ガスパロフを下したことも懐かしいが、当時、将棋はまだまだ無理、と言われていた。
それが、あと10数年程度の視野に入ってきているらしい。
2005-07-27 - My Life Between Silicon Valley and Japan (梅田さんのエントリ。面白い。)
(今でも最強の将棋ソフト「激指<げきさし>(エラい名前だ)」に勝てるのは日本中に千人しかいないそうだが。)
名人より強いコンピュータ。
そんな設定に、著者は言う。
「そんことよりも、面白い将棋が指したい。美しい将棋がいい。まだまだ未開の地平を開拓していくような、そんな将棋を指し続けていきたい」と。
達観した先に人間味がある。
□ キラりと光る言葉。
さてこの本で一番心に残ったこと。
才能とは継続できる情熱である。
つまり、情熱を継続すること、が才能だと。
さらに細かくいうと、
報われるか否か、分からないところで情熱を持ち続けるのか才能だと。
また、厳しい自戒もあった。
プロらしさ、とは、持続。
平均スコアの勝負だ、と。
自分に甘えず、諦めずにいこう。