室井さんなどを拝見して、まず思うのは「若さ」。
というか「やりたいことがある、といはバイタリティ」である。
年を取ればとるほどに「それ以外」のものなど急速に色褪せてくるのだ。
その姿を拝見して、まったく四十代とか、二十代の生き様と実は変わらないのだ、と思えてならない。
「したいこと」を追いかける人は永遠の少女であり、青年でいられるのだ。
ちょっと最近考えていたこととダブるのだが、それにしても六十年間、ピアノ音楽を追いかけてきた、というその迫力は尋常でない。
いろいろと考えていた「小理屈」を一瞬で吹っ飛ばす迫力がそこにはある。
「うまく弾けた」ときは、バッハやモーツァルトが、そのあたりの木の陰から顔を出して、『うん、それでいいよ』ってささやいてくれる気がします」
今をときめく三十代〜四十代の演奏家が言う。
「まだ作曲家の声が聞こえません、残念ながら」。
室井さんは「その先」を行くのだろう。
芸術は誠に深遠だし、しかし人間の最高の友なのでもあろう。
と改めて思う。