やるべきことが見えてくる研究者の仕事術―プロフェッショナル根性論
- 作者: 島岡要
- 出版社/メーカー: 羊土社
- 発売日: 2009/08/01
- メディア: 単行本
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いま再び、著書の「はじめに」に戻ることにする。
一度丹念に読んだつもりでも、まったく新鮮な感じに素読できる、というのは申し訳なくも「一読者」の特権だな、などと感じる。(喜)
『何が著書のきっかけだったのか?』ということは、そんな思考の大前提でもあり、また、よく「読み進むうちに見失いがち」なテーマでもある。と思う。
さて、著作の「はじめに」。
"不透明な時代にやるべきことが見えてくる仕事術"。
以下引用(青字は藤野)。
(前略)
この連載を始めたきっかけは、私が終身雇用が前提の大阪の臨床医から、研究費きが稼げなければ次の年の職が保証されないボストンの基礎医学研究者への転職を決意する過程で、独学で勉強したキャリア戦略の考え方を同じような問題に直面する方々と共有したかったからです。
「プロフェッショナル根性論」連載の過程で多くの方からの激励の言葉をいただき、研究者のキャリアとライフスタイルに関する指針俯瞰できるようなリソースとしての「プロフェッショナル根性論」の必要性を強く感じていました。
(中略)皆が程度の差こそあれ不透明で先の保証もされていないキャリアを、闇の中を全力で突っ走るように進むことを余儀なくされています。
状況は私がいま生活している米国でも、ふるさとである日本でも本質的にはそれほど変わらないのではないでしょうか。
著者の提言するサバイバル環境
この後、著者の提唱する
「仕事の報酬とは人間的成長である」
「好き、よりも得意、にこだわる仕事術」
「自分の世界で一番になる」
「批判され、批判して自分を磨くフィードバック力」
「変化に対する苦痛・恐怖を克服する」
「自分のストーリーを語る物語力」
「日本人中年男性研究者のための英語力向上戦略:人間力英語術」
へと続く。
著者のいう「不透明な時代」に研究者も、ビジネスマンも、突入したことには誰も異論はないだろう。
そこで、パラダイムの転換である。
著者の言うように「自分の仕事の最大の報酬とは人間的成長である」といい切れるかどうか。
軽く書いてあるが、ここが最大の価値観の変曲点だろうと思う。
この不透明な時代に、まず「自分の報酬」という最大の身近な存在への定義を見直すこと。
これがこの著作の最大の妙味ではないか。
著者が引く、スタインベックの
「今の世の中から無謀な企てが消え失せたのは、たぶん、人がもう自分を信じなくなったからだ。
自分への信頼がなくなれば、あにはなにも残らない。
誰か強い信念の人を見つけ、その信念が誤りかどうかには目をつぶって、その人の新年の裾にしがみつくしかない。」
「エデンの東」より
研究者もそうなのだろう。
しかし、ビジネスマンも然り。
「自分のキャリアの進め方」とか
「ビジネス人生を送る上での醍醐味とは何か」。
という、根源的だが最大の問題に、正面から向き合うことが本書の「研究者目線」から投じられた最大の論点ではないか。
そのことに気づくのに、数週間を要した。
まこと。
研究者の追求する「けもの道」に、今一度「自分が生きてきた道」を重ね合わせてみたいと思う。
通り一遍の読後感でなく、まだまだ読み解く価値がある。
そんな著作に出会うのが、読者としての最大の楽しみではないか。