藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

潮目の行方。


遂に中国のGDPが日本を抜いた、が中国の表明は意外に控えめで威張ったものではないという。
日本の経済が国際経済に「先導的」に影響を与える、というのはどうもあまりなく、金融危機とか、債務不履行とかは、必ず米かEUから起こる。
新興国で起こったように見えるものも、そのマネーの「出もと」は必ず欧米である。
まあその欧米のマネーは、「実は誰のものか」ということはともかく。


マクロ経済についてのオビニオン、というのは優秀だと思われるエコノミストとかアナリストであればあるほど、「一家言」を持っている。
そしてそれらが新聞や経済誌、週刊誌などを通じて流通する。
なかなかこれら「一方向」のメディアでは「円高ドル安」「円高ユーロ安」とか「インフレ化デフレか」とか、そんなマクロ経済についての意見を多面的に判断するのは難しい。

どれも優秀な人物が書いている記事だからして、「その見地では」もちろん正しいと思われるものが多い。


したがって「向こう三年は円高である」と言う人と、
「三年以内にハイパーインフレになる欧米」と言う人と、
「日本の二番底不況」を提唱する人たちの間にある「理論の因果関係」を我われ読者が分析し切ることは非常に困難である、と思う。

それぞれの賢者から学ぶもの。


為替や株の上下を論ずる、ということ自体があまり意味のないことである、とは最早言い古されたエコノミストの常套句だけれども。
例えば、今とこれからの米・欧・中、について「ある観点から」は一理あるな、というような意見をこれからの自分たちは大事に拾い集め、「自分なりの全大観」を形成してゆかねばならない。
でなければいつまで経っても「人の意見の借り物論者」のままである。


日経のコラムはなかなか参考になった。

<日経quickのコラムより>

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米中覆う先行き不安 膨らむ「マネー動揺」の芽
リスクのマグマ(上)


「景気刺激効果はさほどない」。米東部時間の10日、バークレイズ・キャピタルのマイケル・ゲーペンが顧客にメモを送った。
米連邦準備理事会(FRB)が中長期国債/の買い入れを通して事実上の金融緩和に踏み切ると表明したのは、このちょっと前。
金融危機対応で膨らんだバランスシートの縮小を目指していたFRBは、この「出口戦略」を凍結してデフレ懸念に対応する姿勢を鮮明にしたが、評価は芳しくない。


「二番底」懸念が広がる米景気。
ガイトナー財務長官は「米国はカムバックする」というが…


「米景気の現状と先行きを考えると、バランスシートはこの規模でいいのか。さらに拡大すべきではないのか」。
資金供給量を減らしこそしないが、増やしもしないFRBの姿勢をプリンストン大教授のポール・クルーグマンは「奇妙な決定」とブログで批判した。


「今年に入って民間の雇用は毎月増えている。これはいいサインだ」。
7月の米雇用統計が発表となった8月6日、首都ワシントンにある町工場に、民衆に語りかける米大統領バラク・オバマの姿があった。
7月の民間雇用者数は7万1000人増。オバマは胸を張ったが、市場ではいら立ちが募る。
雇用の回復がもたついているとの失望が一気に広がり、ダウ工業株30種平均は一時160ドル近く下げた。
外国為替市場ではドルが円やユーロなどに対して急激に売り込まれた。


景気回復のもたつきを示す米経済統計が相次いでいる。当局もじわり青ざめてきた。
FRBによる事実上の金融緩和に先立ち、口火を切ったのはセントルイス連銀総裁のジェームズ・ブラードだ。
「危機の7つの側面」と題する論文を7月29日に公表し、デフレに陥る可能性について言及。
「米国のデフレリスク」という言葉が瞬く間に世界を駆け巡った。


■米選挙で景気対応後手に

米景気の先行きに強気の姿勢を貫くオバマ政権だが、「経済政策を最も甘いシナリオに基づいて策定している」(オレゴン大教授のマーク・トーマ)との批判は絶えない。
代表例が小出しの景気対策だ。
米経済を安定軌道に乗せるには十分ではなかったとの指摘が多い。


「米国はカムバックする。米経済の傷は癒えつつある」。
今月3日、米財務長官のティモシー・ガイトナーはニューヨーク大で雄弁をふるった。
今秋の中間選挙が近づくにつれ、米政権は有権者に景気が順調に回復していることをアピールする誘惑にかられる。
景気減速への対応が後手に回れば、米国へと再び戻ってくるのは「強い経済」ではなく、「市場動乱」となる可能性がある。


「銀行に不動産価格が5〜6割下落した場合の資産査定(ストレステスト)を実施するよう求めた」。
5日、中国銀行業監督管理委員会の動きを同国内外の報道機関が一斉に伝えた。
「3割下落」シナリオでテストが行われたばかりだけに、香港株式市場では中国海外発展など中国本土系の不動産株や銀行株が売りを浴びる。
不動産価格の上昇を抑え込もうとする当局の姿勢に、市場はバブル退治への焦りを感じ取った。


シンガポール国立大教授のヨンヘン・デンに世界各地から問い合わせが相次いでいる。
7月に発表した共同論文で中国の主要8都市の住宅価格動向を分析、北京では2003年時の8倍に跳ね上がっているとはじいたためだ。
値上がりの半分はこの2年間に起きている。バブルを支えているのは急ピッチの値上がりが続くという期待。
「上昇期待がはげ落れば、不動産価格は北京などで4割強下落する恐れがある」とデンは言う。


■バブル退治、中国の憂うつ


「異常な勢いで与信が拡大している」。
7月29日、対中審査を公表した国際通貨基金IMF)が「地方政府傘下の投資ファンド」に警鐘を鳴らした。
地方政府の財政が脆弱(ぜいじゃく)なのにもかかわらず、インフラ整備などを手掛けるファンドには銀行融資が流れ込む。
「焦げ付きが避けられない」とIMFは断じ、事態の改善を勧告した。


中国に対する警鐘が止まらない。「規制強化で不動産投資にブレーキがかかれば、地方政府の財政の健全性には疑問符がつく」。
ステート・ストリート銀行のショーン・チェンが7月30日、「中国『うたげの後』」と題するメモを顧客に送った。
「不動産」と「地方」を結びつけたのは、地方政府が開発業者に土地の借地権を譲ることで歳入を確保しているためだ。
不動産バブルを下手につぶせば地方政府も致命傷を受ける。
ソフトランディングの難しさに、中国当局も身構えざるを得ない。

金融危機を境に世界経済の「支え役」という重責を担うようになった中国には暗雲が漂い、復活が期待される米国では「二番底」懸念が膨らむ。
米中のどちらかで波乱が起きれば、世界経済も無傷ではいられない。
分からないのは、いつどのようなことが契機となってつまずくかだ。




 リスク意識の急変がクラッシュ招く

 サブプライム危機の引き金を引いたパリバ・ショックから今月でちょうど3年。
この間、リーマンやドバイなど数次にわたる「ショック」の荒波に市場はもまれてきた。
共通するのは、危うさを感じつつも目を背けてきたリスクの顕在化だ。
「世界を揺るがす市場のクラッシュは、リスクに対する認識の急変が原因だ」。
ローザンヌ大教授のフィリップ・バッチェッタはこう指摘する。
例えばギリシャ危機。財政問題は長らく意識されてきたが、格付けの変更が認識の激変を迫り、動揺が世界各地へ広がった。
リーマン・ショックも構図が似ている。
投資家の恐怖心の高まりが「パニック」へと姿を変え、資産価格の急落を引き起こした。

    ◇   ◇   ◇   

 国家間の相互依存が高まり、マネーが国境を越えて瞬時に動く時代。
何かをきっかけに市場関係者がパニックに陥ると、世界経済には火の粉が降りかかる。
金融危機を乗り越えたかのように見える国際金融・資本市場だが、マネー動揺の震源地となりかねない「リスクのマグマ」は至る所でたまりつつある。(敬称略)

〔日経QUICKニュース〕