藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

結婚指輪をたたきつぶす。


離婚式、なるものをする夫婦が増えているという。
結婚式よろしく、「離婚に至った経緯」などを説明するのだというのだ。
二人でハンマーをもって結婚指輪を叩き潰す、に至っては圧巻。

夫(40)の心境に変化が出たのは、儀式後の会食中。会場に映し出された二人の出会いから離婚までをたどるスライドショーを見ている時だった。(中略)


離婚式から2日後。引っ越し準備の最中に、妻に「もう一度、やり直さないか」と声をかけた。結局、今も夫婦を続けている。

結局「夫婦」というものの存在を、既成の「世間の常識」ではなく、自分たたち自身のものとして、考えなおす必要があると思う。
過去のことは、もうどうでもよいのである。

さらに忘れてならないのが、夫婦はそれぞれ一人の社会人であり、「親しき仲にも礼儀あり」が必要なこと。

結局、親しき仲にも礼儀あり。
最も日本的で、最も「不文律」的だけれど、一番「言葉を欲しているし、効果的」なのが夫婦なのではないだろうか、と思いいたる。
そしてそれは夫婦に限らず、あまねく男女や、仕事の仲間にも当てはまるのである。7


親しいからこそ、日常の思いを「言葉に変えて」相手に投げかけること。
それが何でもない自分たちの日常を支えているのかもしれない。

asahi.com「つながる」より。
二人の再出発:夫婦関係を築き直す
昨年10月、東京都内のホテルで、1組の夫婦の「離婚式」が開かれた。主役の40代の夫婦を、親族や友人20人が囲んだ。

6年間の結婚生活。共働きでお互いに忙しい日々。洗濯や掃除の仕方にも食い違いが出て、イライラが募った。釣りなどの趣味や男友達との付き合いを優先する夫に妻は不満を持ち、言い争いから、徐々に会話もなくなった。

そんな離婚に至った経緯の説明などを終えて、いよいよメーンイベント。二人でハンマーを持って、結婚指輪をたたきつぶす儀式に臨む。これを終えれば晴れて離婚。新しい人生の始まり――となるはずだった。

夫(40)の心境に変化が出たのは、儀式後の会食中。会場に映し出された二人の出会いから離婚までをたどるスライドショーを見ている時だった。

「なぜか、これまでの楽しかった時の思い出しか頭に浮かばなかった。『これを全部失っていいのか』と。相手の悪いところしか見ていなかった自分にも気づいたんです」

離婚式から2日後。引っ越し準備の最中に、妻に「もう一度、やり直さないか」と声をかけた。結局、今も夫婦を続けている。

式を企画した離婚式プランナーの寺井広樹さんは、立案した2009年から今までに60件を超える離婚式に立ち会った。そのうち少なくとも5夫婦は、離婚を思いとどまったという。「夫婦の再出発を応援したいとの思いで始めた式ですが、夫婦のまま再出発するという選択が出たのは、うれしい誤算です」

フリーライターの杉山由美子さんは、夫婦のままで、お互いに束縛しあわない関係を築き直す「卒婚」を提案し、「卒婚のススメ」という本も書いた。40代後半で迎えた夫婦の危機を経て、都内で「近距離別居」を続けてきた。

若い頃は、理想的な家族だと思っていた。大学時代に知り合った自由業の夫とは、本や映画の話を始めれば尽きない。夫は家事にも協力的で、夕食作りを担当。毎日午後7時には、家族で食卓を囲んだ。長期休暇には、家族旅行を楽しんだ。

それが、2人の子どもが思春期にさしかかった頃、きしみ始めた。不況のために先行きが見通せなくなった仕事への不安。子どもたちの学費の問題が重くのしかかってきたが、楽天家の夫と話しても議論は空回りするばかり。夫婦の溝は深まっていった。

しばらくして夫は自宅近くのマンションに移り住んだ。日常的に会わなくなったことで、冷静に考えられるようになり、気づいた。

「家事の分担など自分の理想で、夫の生活や人生を縛っていたのでは」

夫とは月に何回か会う。時には家族で食事や買い物へ行き、全員で旅行することも。穏やかな関係が戻ってきた。

現在、海外赴任中の夫とは、よくメールで近況を報告し合う。杉山さんは言う。

「家族のあり方は、10年間隔ぐらいで変化していく。その都度、修復をしながらつなげていくことで、得られる楽しみもあると思う」

夫婦関係は、どうやって修復していけばよいのだろう。これまでに2万組近くの夫婦のコンサルティングをした東京家族ラボの池内ひろ美さんは「言葉のかけ方を少し変えるだけで、夫婦関係は劇的に良くなる」と話す。


例えば、中年期の夫婦。危機の多くは、子育て中に妻が身につけてしまった「母親」の役割を、夫にも向けてしまうことだという。疲れて帰った夫に「あれをして」「これはダメ」とつい指示をして険悪な雰囲気に。これをなくすにはまず夫が、妻への呼び方を「お母さん」から結婚当初の呼び方に戻す。これだけでも、お互いの関係性や態度が変わっていくという。


さらに忘れてならないのが、夫婦はそれぞれ一人の社会人であり、「親しき仲にも礼儀あり」が必要なこと。「一番近くにいるからこそ、基本的なあいさつや感謝の言葉が大切。それがあれば、夫婦はつながっていけるものです」

(松浦祐子)