個人でも、国家でも、結局「プラスとマイナス」が収支しないものは、その帳尻をどこかで合わせなければならない。
それは、借金を「破産」という形でケリをつけるのも、貸主との間で「再スケジュール」を組むのも、そして自らの家計を見直すのも、あるいはそれらの全てを試行しなければならない。
つまり財政の破たん、というのはそれほど深刻な問題なのである。
大体の先進国では、財政破たんした個人は、命まで取られることはない。
その人の持っている財産を「まとめて整理」して、配当してお終いである。
だが、一度破たんした人の信用は、数年は元へは戻らない。
そして、また元に戻った当人が「再び破たん」へ向かったのではもはや救済の道もない。
恐らく、国であっても「将来的に回復の見込みがない」というコミュニティにお金を投資したり、貸したりする金融機関はない。
成長のピークを終えた国の為政者は、まずその「縮小均衡モデル」でどのように国民が暮らすのか、ということを述べねばならないと思う。
国も個人も、「これからの暮らし方」をはっきりとイメージせねば、貧富の関係なく暮らしにくい世の中になるのだろうと思う。
国に「守ってもらう」というのは幻想になるかもしれないが、それでも「自分はどのように老後を過ごすか」ということを自分なりに作ってみるのは、とても有効な「その後の生活のクォリティ」にかかわってくると思うのだ。
心が貧しくなっては、元も子もない。
追い込まれた国の悲劇 年金減額・増税避けられず
不動産バブル崩壊で破綻した銀行救済のため財政が悪化したアイルランド。国債利回りが急上昇し、自力での資金調達断念に追い込まれた。支援を仰いだ国際通貨基金(IMF)と欧州連合(EU)が主導し、強制的な財政再建が始まる。
政府が決めた5年後の財政赤字削減額は年150億ユーロ(約1兆7000億円)と国内総生産(GDP)の1割に迫る。消費税や所得税の増税、水道の有料化など国民に痛みを強いる項目の連続。景気への打撃は必至で、民間シンクタンクや中央銀行が経済見通しを大幅に下方修正している。
「ギリシャは罰せられるべきだという声も欧州の一部にはあることを分かってほしい」(パパンドレウ首相)。EUやIMFの支援を受けるギリシャは、公的年金の支給開始を10歳近く上げ、給付額を大幅に減らす。従来の寛大な制度との落差は大きく、国民の動揺は収まらない。首都アテネではデモが頻発し、治安の悪化も指摘される。
市場でギリシャ、アイルランドの「次」の標的となった国々は赤字削減に躍起だ。スペインは公務員の人件費削減で11年度予算の歳出を15%減らし、高所得者向けの所得税を引き上げる。ポルトガルも緊縮予算をなんとか成立させ、財政赤字をGDP比4.6%まで下げる考え。付加価値税の増税や失業手当の減額に踏み込む。
いったん市場が不安視すると、財政再建が進むまで高金利やインフレに見舞われる。赤字削減は容易でないが、乗り越えられなくはない。
1980年代、英国ではサッチャー政権が民営化や歳出削減を断行し、90年代に入り約15年にわたる長期成長を実現した。米国も同じころ巨額な財政赤字による高金利に悩まされたが、クリントン政権の財政再建で長期金利が低下し好景気に結びつけた経験がある。(パリ=古谷茂久)