藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

プラットフォーマの有利。

昔の「実質本位」の日本語が、なんだかよく分からない横文字や、三文字のアルファベット略語に置き換えられるようになって約半世紀ほども経つ。
昔は賭場で使われた「胴元」という言葉は、今ではビジネス界で"プラットフォーム"と言われている。

日経ビジネスリーダーより。

日経は独自に記事も発信しながら[FT]でフィナンシャルタイムスをウォッチし、訳して掲載するところが面白い。
日欧のそれぞれのメディアの世界観とか、読みの深さなどが比べられてなかなか参考になる。


先日i-Phone向けの市場に開発者たちが怒涛の参入をしている、という記事があったがその先。

アップストアで数千万の利益を狙う開発者たちが、逆にプラットフォーマのappleから"新機能の脅威"に晒されているという。

つまり"いいね"といったアイデアが開発者たちのリリースするi-Phoneアプリから見つかった場合、「それ」をappleサイドの標準機能にしてしまうということ。
ちょっとズルい、といいたくなるがこれが"胴元の特権"だろうか。

アナリストのマーク・マリガン氏によると、アップルは独立系技術企業の発想をチェックし、同様な機能を自社ソフトに取り込んでいくという。

熱心にappleの端末や機能を研究し、「こんなものがあったら便利に違いない」という発想を練ってアプリに仕上げても、却って宣伝などが弱く普及率が低いと「一気に持っていかれる」可能性があるのだ。
胴元の顔色をうかがいながら露店で商売をする「テキ屋の構造」のようではないか。
かといって恐らく、それぞれのプラットフォーム内で"アイデア保護"などといちいち判定しているような時間はないのだろう。
ある経営者氏は

「学ぶべき教訓は、常に代替プランを用意すべきということだ」という。

このビジネスモデルに勝ち残るのも容易ではない。


[FT]アップルの新サービスに身構えるアプリ開発(2011年6月8日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)


米アップルが6日に発表した数百に上る新サービスのいくつかは、同社のパソコン「マック」やスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」に対応したサービスを、アプリ配信サービス「アップストア」経由で提供している多くの独立系企業にとって、存亡の危機をもたらす。


■新機能やサービスがアプリと競合


アップルが始める新サービス「iCloud(アイクラウド)」や、「iMessage(アイメッセージ)」などの新アプリ、閲覧ソフト「サファリ」の新機能は、大小問わず多くの企業の製品と競合する。グーグルの統合オフィスソフト「ドックス」や、スマートフォンブラックベリー」を展開するリサーチ・イン・モーション(RIM)の「メッセンジャー」はもちろん、新進のオンラインファイル管理サービス「ドロップボックス」や、利用者がウェブで見つけた長い記事を保存し、後でネット接続せずにテキスト形式で読める「インスタペーパー」なども例外ではない。

この競合関係から浮き彫りになるのは、マイクロソフトの「ウィンドウズ」やアップルの「アップストア」、交流サイト(SNS)「フェイスブック」といった主要プラットフォームに依存することの危うさだ。昨日までのパートナーと翌日には真っ向勝負となることもある。

アナリストのマーク・マリガン氏によると、アップルは独立系技術企業の発想をチェックし、同様な機能を自社ソフトに取り込んでいくという。


■楽観的なアプリ開発者も


「インスタペーパー」を開発したマルコ・アーメント氏は、対抗する機能をアップルがサファリに搭載したことを受け、覚悟はしていたが予想より早かったと打ち明ける。

インスタペーパーの利用者はアイフォーンや多機能携帯端末「iPad(アイパッド)」、携帯プレーヤー「iPod(アイポッド)」所有者の1%に満たず、潜在的な市場規模は巨大であり、ほとんどの人はそれが必要かどうかをまだ分かっていないと同氏は指摘する。アップルが何百万人もの人々にネット接続しないで文章を読める機能を広めることで、SNS経由で共有するなどの上位機能を求めていくようになるだろうとアーメント氏は見ている。

大手企業が市場を教育するというのは、アップルの発表で右往左往させられる多くの中小企業の言い分だ。

被害を受けそうな筆頭にあげられるのが「ドロップボックス」。インターネットを経由して複数の端末にある文書を同期させる機能を、アイクラウドがそっくりまねている。

しかし、アイクラウドがマックやアイフォーン対応に限られていることで、「ウィンドウズ」搭載パソコンやグーグルの携帯用基本ソフト「アンドロイド」を搭載したスマートフォンがより多く売れている状況では、ドロップボックスが優位に立つとの予想もある。


さらに、アップルが発表したアイフォーンの音量ボタンを写真撮影に使うという新機能は、独立系企業タップ・タップ・タップが自社アプリの「カメラプラス」用に開発したが、アップルから一時的に使用を止められていたものと同様だ。

幸いにも同社の別のアイフォーン用アプリのパズルゲームは好調で、発売から2週間ですでに数十万ドルの収益をもたらしている。


■ビジネス用で差異化図る


アプリを多様化するだけでなく、アップルが主に狙う一般消費者ではなく、法人顧客にターゲットを絞ることで活路を見いだそうとする企業もある。

オンライン共同作業サービスを提供するハドルは、先進的セキュリティーサービスなどの付加機能を拡充することで、今後クラウドサービスを導入する企業への差別化を図れると考えている。

しかし、多くの新興企業は身を守る術もなく嵐に巻き込まれる。ニッチ(すきま)に侵入するアップルの攻撃から必至に逃れるしかない。

天気リポートのアイフォーン用アプリ「ウェダー」を設計したカタリーノ氏は、「大企業は中小業者の開発情報を入手し、それが役に立つかどうか判断することができる。学ぶべき教訓は、常に代替プランを用意すべきということだ」と語った。


By Tim Bradshaw
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