藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

コネはずるいか。

岩波書店が、就職希望者に対して「紹介状必須」を打ち出して話題になっている。
「著者か岩波社員の紹介があること」が要件だというがそれはともかく、「結局紹介状があった方がいいよね」と思った同社の判断があったのだ。

コネに採用を限れば、「広く何者にもこだわらず応募者を募る」という主旨は働かなくなる。
けれど、それは企業の性質にも寄るだろう。

「岩波の、岩波たる部分(商業主義を嫌い、リベラルを標榜するなど)を担う人材こそを採用したい」という思いが強く、それに共鳴する応募者がいるのならコネもまたありではないだろうか。

コネ採用の良しあし、ではなく「わが社にだけ特別な思い入れのある人だけを求む」という岩波のメッセージなのだろう。
今や競争社会の名のもとに、「広く優秀な人材」を募集すれば、それはすなわち応募者側も「広く、成長しそうな企業」を浚うことにもなる。
優秀そうな学生さんに応募先を聞けば「○×商事」「△生命」「■▽電気」「□◎建物」と百花繚乱。
今や応募側にも大したポリシーはないのだな、と改めて思う。
(けど自分たちもそうだったな)

今の時代、ある意味岩波ぽく、わが社にだけ執心できる人材を求めたい、というのは実は先進的な表明なのではないだろうか。
特に自社の製品に愛着のない、いや触ったこともない社員が熱烈に「働きたい」と前のめりになって来るのもおかしなものである。

ネットのSNSも、「ゆるい紹介制」が受けているが、ネット社会もリアルでも、ようやく揺り戻して「コネつながり」が復権してくるような気がする。

人見知りばかりせず、「ゆるいコネ社会の到来」に備えて、自分も少しは人づきあいを見直さねばならないようだ。

岩波書店が目指す「フェア」なコネ採用
縁故採用といえば、企業の経営陣や取引先、政治家の子女がその影響力を背景に、選考外で入社すること。しかし岩波書店の「紹介状必須」は、これとは違うという。(AERA編集部 直木詩帆)
 岩波書店が2013年4月入社の新卒・中途社員を採用するための募集要項を自社のウェブサイトに公開したのは、今年1月10日。応募資格に「岩波書店著者の紹介状あるいは岩波書店社員の紹介があること」と書かれていたことが、2月になって「応募条件、コネのある人」と報道され、波紋が広がった。
 慶應大学3年の男子学生(21)は、ツイッターで知った。「コネ採用などの不公平は本来なくすべきなのに。どうしてわざわざ公言するのか、とサークルの仲間内で話題になりました」

●「一度も読んだことない」
 ネット上には「勿論、即反対!」「岩波書店には絶対就職できそうにないな俺」と否定的な意見があふれたが、「コソコソやるよりこの方がいいかもね(笑)」のような容認派も少なくない。小宮山洋子厚生労働相も2月3日の閣議後の会見で、「早急に事実関係を把握したい」とこの問題に触れたが、厚労省の担当者によれば、縁故採用を明確に規制する法令はない。「憲法基本的人権職業選択の自由に照らして公平でないと判断した場合、啓発・助言するようにしています」(担当者)
 そもそも、なぜ岩波書店はこんな応募資格を定め、公にしたのか。小松代和夫総務部長は、「当社志望度が高く熱意のある学生をじっくり選考するため」と話す。1913年創業の岩波書店は、雑誌「世界」や岩波文庫で知られる出版社。「フェア」や「リベラル」を標榜してきただけに今回の件は波紋を呼んだ。小松代部長によれば、採用は古くから著者らの紹介によるものが中心だったが、03年ごろからは公募。その結果、数人の枠に千人以上が殺到し、「岩波書店の本を一度も読んだことがない」などの応募者も目立った。11年からは紹介による採用に戻し、今年は昨年よりも応募者を増やすために、「紹介」を応募資格に加えて公募としたという。
 「大学生ならゼミの先生に紹介してもらうなどすれば、当社の著者にたどり着ける。『紹介状をもらう』こと自体が1次選考だと考えてほしい。紹介はあくまでも応募資格で、合否の判断基準ではない。紹介者による有利不利もない」(小松代部長)

●著者の紹介断れるか
 努力しても社員や著者にたどり着かない場合は採用担当者に相談してほしいと話し、実際に2月6日、担当者の電話番号をウェブサイトに公開した。
 リクルートワークス研究所大久保幸夫所長は言う。「日本で縁故・コネ採用というと、政治家や取引先有力者の子女を、採用基準に満たないのに入社させるイメージ。しかし、いまやアンフェアな縁故採用はほんの一握りで、ほとんどが紹介後に選考を課しています」
 大久保所長によると、採用する側のメリットは三つ。(1)社内事情に詳しい人物が、採用条件や求める人物像に合う人を推薦することが多いため質の高い応募者を集められる、(2)社内での人間関係を作りやすく定着率が高い、(3)必然的に応募人数が絞られ、採用コストを抑えられる。
 逆にデメリットは、似たような人が集まりがちなこと、取引先、著者などの紹介は実際には断りにくく、フェアな選考にならない場合があることだという。
 応募する側にとってはどうか。学生たちに「コネは積極的に活用すべきだ」と指導している東洋大学の小島貴子准教授は、「岩波の意図が『行動する学生に会いたい』ということだとすれば、応募する側にとっても自分を売り込むチャンスです」と容認。問題は、「紹介状必須」の意図を、当初は明確に示していなかったことだと話す。
 ネットの発言は多くが「企業はよくも悪くも水面下でコネ採用をしている」を前提にしていた。岩波書店の「紹介」は本当に「紹介者による有利不利」なくフェアに機能するのか。