藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

マイウェイ・キリング。

読売online 世界先読みバズワードより。
日本発のカラオケがアメリカの辞書に載るほどの単語であり、ノーベル賞のパロディまで受賞していたとは知らず。
しかも語源は"詩的"に聞こえる「カラ(空)のオーケストラ」とは恐れ入った。

日本では一時ほどの隆盛は見られず、カラオケブームも一過性の感があるが、フィリピンでは刃傷沙汰まで起きているという。
題して「マイウェイ殺人」。

その理由については「誰でも知っていて、誰もが一家言を持つ歌だから」「この曲の歌詞は歌い手を思い上がらせ、取るに足らない人でも、ひとかどの人物になったような気にさせるから」など諸説があるようです。

「歌い手を思いあがらせる」というのは、歌の作品としては至上な物、という感じもするが、なんでも程度が過ぎるとカンに障るということのようである。
(確かにフィリピンでは、今日本では見かけない「舞台上でスポットライトを浴び、ダンサーと共に」歌っている人は多い)
「マイクを離さなかった」「同じ曲を繰り返し歌い続けた」という理由で刺されたり、射殺された人もいるという。

そう言えば、特に声量の大きなオジサンにクレームが付いていることが多い。
声の大きな人は注意したほうが身のためである。

karaoke 国際語カラオケをめぐる愛憎
日本で生まれ、世界中に広まったカラオケ。言葉としても karaoke は今や正真正銘の国際語になっています。
 アジアはもちろん、アメリカやヨーロッパ、さらにロシア、中東、南米でも、日本式に「カラオケ」と発音すれば、そのまま通じる国がほとんどです(ただし、アクセントの置き方などは少しずつ異なります。興味がある方はこの辞書サイトで違いを聴き比べて下さい)。

 karaoke はもうバズワード(はやり言葉)の段階をすぎ、多くの国で社会に根付いた言葉になったと言えるでしょう。
 そんな言葉を今回改めて取り上げたのは、アメリカの別の辞書サイトで見かけた「外国語由来の好きな単語」のランキングで、karaoke がトップになっていたからです。「カラオケ」という言葉の響きにはエキゾチックな魅力があるのかもしれません。

 この辞書サイトの説明も笑わせます。
 Karaoke, the beloved/hated entertainment that involves non-professional singers performing without live bands, has a poetic-sounding origin: "empty orchestra"

 カラオケは愛されも、嫌われもしている娯楽。プロでない歌い手が生バンドなしに歌う。その語源は詩的に聞こえる「空(から)のオーケストラ」

 「愛されも、嫌われもしている」というのは万国共通のようでなかなか興味深いのですが、それで思い出したことがあります。

 アメリカで毎年発表されるノーベル賞のパロディー版「イグ・ノーベル賞」(愚かなノーベル賞)。2004年の平和賞は、カラオケを発明した日本人の井上大佑さんに贈られました。

 なぜカラオケが平和賞だったのでしょうか。それは以下の授賞理由を読めば分かります。

 …for inventing karaoke, thereby providing an entirely new way for people to learn to tolerate each other.

 …カラオケを発明し、お互いに(他人の歌を聴くのを)我慢することを学習する全く新しい手段を人々に提供した。

 「我慢の学習」というのはもちろんイグ・ノーベル賞らしいジョークです。

 しかし、日本に限らず、カラオケは必ずしも「我慢の学習」や「平和」に貢献するとは限らないようです。世界ではカラオケをめぐるトラブルが絶えないのです。
 有名なのはフィリピンの「マイ・ウェイ殺人」(My Way Killings)でしょう。
 2年ほど前の米紙ニューヨーク・タイムズの記事によると、カラオケ好きの人の多いフィリピンでは、フランク・シナトラが歌って有名になった「マイ・ウェイ」をめぐる殺人事件が続発し、選曲リストからはずすカラオケ店が相次いだそうです。
 この記事によると、過去10年にカラオケがらみで起きた十数件の殺人事件のうち、半分以上は「マイ・ウェイ」をめぐるもの。この曲を調子っぱずれで歌った人が他の客に笑われたり、やじられたりして、銃撃戦などに発展するのが典型的なパターンのようです。

 それにしても、なぜ「マイ・ウェイ」がらみの事件が多いのでしょう。
 その理由については「誰でも知っていて、誰もが一家言を持つ歌だから」「この曲の歌詞は歌い手を思い上がらせ、取るに足らない人でも、ひとかどの人物になったような気にさせるから」など諸説があるようです。

 同様のカラオケ殺人事件は他の国でも起きています。イギリスの新聞によると、マレーシアではマイクを離さなかった男性が刺し殺され、タイでは同じ曲を繰り返し歌い続けた男性が射殺されました。同様の事件はアメリカでもしばしば報じられています。
 ただ、こうしたもめ事が起こるということは、別の見方をすれば、それだけ世界の人々を熱くさせているとも言えます。やはり、すごい発明だったのです。

 もう古い話ですが、米誌タイムは1999年、「20世紀で最も影響力のあったアジアの20人」の1人として、先ほど触れたカラオケ発明者の井上大佑さんを選びました。その後も世界に広がり続け、人々の愛憎をかき立てているカラオケ。その隆盛ぶりを見ると、タイムが歴史を見る目は正しかったのだと改めて納得します。