藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

時代の振り子を見る。

弁護士の就職問題、つまりロースクールの合格者数の問題が、"開放に触れ"、そして"閉鎖に触れ戻し"、そして今度は少し小さな触れ幅に再び向かっている。

そういう「目線」で見ると、他の分野の市場経済の問題となんら変わらない、やはり「市場経済」、つまり需要と供給の問題に収束してゆくのがよくわかる。

こうした問題が論ぜられるとき、どれだけ「大局」から着眼するか、というのことは思いのほか重要で、特に業界の中の人や、専門家と言われる人たちはそうした「大きなうねり」に目がいかないことが多い、という気がする。

いったん供給過多になった市場だが、お決まりの「社会の要請」がゆり戻してきて、結局「社会が本当に必要とする閾値」に収束に向かってゆくのである。
そして、そうした「境界が揺さぶられるとき」というのは、いわゆる「商機」であることも多いものである。(これも自分があまりに「最中」にいると、まったく気づかないという不思議もある)

アツくならずに、今の時代を見つめて行きたいものである。

弁護士ミスマッチ 本当に就職難なのか
就活と採用の意識にズレ2012/6/3 22:50ニュースソース日本経済新聞 電子版
 総務省は4月、年間3千人を目指してきた司法試験の合格者数を見直すよう法務省文部科学省に勧告した。約2千人が合格する現状でも「弁護士は供給過多で就職難が発生している」としている。確かに法律事務所への入所は難しくなったが、企業や役所など法律家を求める職場は広がっている。本当に弁護士は就職難なのか。

 「お客様の相続人を名乗る親類の方から、遺産を自分の口座に移すよう指示されたのですが、法的な相続人とは誰を指しますか」。富山市内の北陸銀行本店。コンプライアンス統括室の小坂菜穂さん(28)には、多い日で5〜6件の法律相談が行員から寄せられる。彼女は今年登録したばかりの弁護士だ。「地元で就職できて幸せ」と話す。
■将来は各支店に
 北陸銀は今年、全国でも珍しく弁護士の定期採用に踏み切った。小坂さんを含む3人の新人弁護士を採用。債権管理や取引先の経営支援など様々な業務に就く。「ようやく企業に弁護士が供給されるようになってきた。将来は各支店や海外に配属できる規模にしたい」(高木繁雄頭取)
 「会社にいてこそ専門性を高められる」。共栄火災海上保険に勤務して4年目の藤本和也さん(39)も弁護士だ。自社が抱える訴訟やADR(裁判外の紛争解決)を数十件担当したほか、株主総会労務、保険代理店向けの研修など、ほぼすべての企業法務を処理してきた。
 「近所の火事の消火でホース車に水をかけられ、窓にひびが入ったと住民から苦情が来ました」。千葉県流山市役所の総務課に勤める帖佐直美さん(33)も連日、職員の相談を受ける。4年前に弁護士登録し、昨年から「特定任期付き公務員」として働いている。 条例の制定や住民からの行政不服申し立てを処理する際の助言、職員向けの法律講習会、市が訴えられた際の訴訟代理人など仕事はいくらでもある。帖佐さんは「市役所の仕事は公共性とやりがいがある。以前は独立が目標だったが、できれば勤め続けたい」と話す。
 企業や役所で働く弁護士が増えている。日本組織内弁護士協会によると、2011年6月時点で600人弱。10年前の10倍になった。理事長を務める室伏康志弁護士(クレディ・スイス証券)は「弁護士増員で法律事務所が新人に払える報酬が下がり、企業が提示する金額との差が縮んだことが要因のひとつではないか」と話す。
 もっとも、約3万人いる弁護士数のうち「企業内」の割合はまだ2%だ。法科大学院を修了した学生が就職難だといわれるのは、依然として法律事務所への就職に殺到するためだ。北陸銀の小坂さんらが企業に就職できたのは「人づての偶然」という。弁護士が企業などに円滑に流れないのはなぜなのか。
■国際感覚を重視
 「新人弁護士と企業に就職を巡るミスマッチがある」。青山学院大学法科大学院教授を務める浜辺陽一郎弁護士は指摘する。学生が法科大学院で身につけるのは裁判を争うための法廷実務が中心。しかし企業側は「訴訟より、外国語や国際感覚の素養をもち、契約や交渉、消費者対応など幅広い業務を担当できる人」(花王の杉山忠昭法務部長)を求めている。
 企業の定期採用活動と、法科大学院生の就職活動時期がずれているのも問題だ。企業は6月までに翌年春の採用者を固めるが、法科大学院生は修了後の5月に司法試験を控えており、就活を考えるのは夏以降。「弁護士を採用するなら中途採用枠で、少人数とならざるを得ない」(杉山氏)
 学生側の意識も企業に向いていない。ほとんどの学生は司法試験突破だけに集中している。「経済や企業活動に疎く、面接の準備も不十分な人が多い」(中央大学法科大学院の大村雅彦教授)
 「就職難」を懸念する法科大学院の中には、企業や官公庁の協力を得て就職説明会などを催す例もある。ただ、司法試験の合格率向上に重点を置いてきたため「今のところ修了生たちの正確な就職動向すら把握できていない」(文部科学省専門教育課)のが実情だ。
 弁護士の増員は、企業や役所などの就職先開拓が前提だった。ミスマッチを解消するために経済界や関係省庁、弁護士会法科大学院などの連携は十分とはいえない。弁護士増員をやめる前に改善すべき点は多い。(編集委員 渋谷高弘)