藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

今が変化の十年かもしれない。

Nikkei Onlineパワハラ「裁判になる前にすべきこと」より。

ハラスメント、という語彙が一般的になって数年経つ。
自分はこの言葉を聞くたび、また「いじめ」の報道を聞くたびに釈然としないものを感じる。

何か豊かになって、「精神的に揉まれることのない育ち方」が根本原因だと思えて仕方ないのである。
自分より二十年(記憶としては三十年)目上の"昭和二十年組"世代までは、もう戦争の直接体験者ではない。
知っているのは幼い戦後のようすと、高度成長期のさ中の記憶である。

団塊の世代や、「その目上二十年」のベルトの世代が引っ張ってきた昭和の時代。

自分のような'60年代後半の記憶から遡ってみても、「大して豊かなわけではなかった」と思う。今に比べれば、である。

最後のひと押しは、ネットの普及だったという気がするが、ともかく昭和の最後(まあバブルからかな)から、現在に向かって衣食住、医療、社会保障、さらに娯楽、趣味、に至るまで"爆発的に豊かになった"という感じがする。
昭和四十年生まれの自分世代から見ても、振り返ってそう思うのである。
いじめやハラスメント、うつ病やリストラ問題などなどが、今日ほど社会問題化して取り上げられることは皆無だったと思うのである。

甘えの風潮、と一言で行ってしまうのはた易いがそうではなく。
もう「質的に違う世代」が主流になっているのではないかと思う。

(いつの世代もそういう言われ方をするものだけど)今の世代、これからの世代の人たちは、今の先進国が共通で持っているようなキーワードをまるごと入れ替えたような格好になるのではないだろうか。

地域国家、地方分権が早くも日本ではスローガンになろうとしているが、その地域社会で共有される言葉も、これまでのような「市場経済」とか「経済成長率」とか「独占」とかいったものではなくなるだろう。

おそらく、そうした「成長ありきの目標ではない時代」は過去千年に渡って初めてなのではないか。

そんな時代の節目に居合わせているのなら、実はこれからの時代は案外面白いものになるのかもしれない。
ただし「既存のキーワードで、新世代に勝負する」というのは頷けない。
すでに「環境補助金屋」ともいうべき獰猛なビジネスマンたちが動き回っているようだが、そういうスタイルではない形の社会への変化がこれから始まって、2020年くらいには「そちらが常識」のようになっているような気がする。

自分のようなすでに半世紀生きているような世代は、「次の世代の価値観」にどれだけ柔軟に思考を切り替えられるか、ということが生命線になるに違いない。

こちらの頭、ではなく"あちらの目"にならねばならないのだ。

代償大きいパワハラ 裁判になる前にすべきこと
2012/9/6 7:00ニュースソース日本経済新聞 電子版
 企業の競争環境が厳しくなるなか、職場でのパワーハラスメントが増えている。厚生労働省も今年春、予防・解決に向けた提言を取りまとめるなど職場でのパワハラを減らそうと動き始めた。上司から部下だけでなく、同僚同士、部下から上司などさまざまな職場関係のなかでパワハラは起きうる。どこまでが業務上の注意・指導でどこからがパワハラとなるのか、実際の判断は難しい。
 「上司が私に聞こえるように悪口を言うんです」「おまえはもういらないって言われました」「仕事できないと席を工場に移すぞって」──。日常のさまざまな法的トラブルの解決を支援する日本司法支援センター(法テラス)のコールセンターには、パワハラに関する相談が今年4〜7月だけで1400件以上寄せられた。昨年度1年間の3230件を上回るペースだ。大半の相談は、自分の置かれている状況がパワハラかどうか教えてほしいというものだ。
 東京都労働相談情報センターが都内30人以上の企業を対象にした調査でも、パワハラの対応の際に困るのは「業務上の指導との線引きが難しいこと」が最多の64%だった。2番目は「事実確認が難しいこと」で45%。「被害者が嫌がっていることを加害者に理解させるのが難しい」が続いた。
 パワハラについて、厚生労働省のワーキンググループは初めて概念をまとめた。それによるとパワハラは「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為」を指す。具体的な行為としては、(1)暴行・傷害などの身体的な攻撃(2)脅迫・侮辱などの精神的な攻撃(3)職場で無視や隔離をすること(4)不要なことや不可能なことを強制すること(5)能力や経験とかけ離れた仕事を命じることや仕事を与えないこと(6)プライベートに過度に立ち入ること――の6つを挙げている。なかでも「暴行・傷害」は業務の適正な範囲には含まれず、「脅迫・侮辱」なども基本的に業務の適正な範囲を超えるとした。ただ、「概念を整理したにすぎず、裁判に直接影響を与えるものではない」(厚労省担当者)という。
 裁判で業務上必要な指導の範囲を超えてパワハラと判断した事例はある。2009年の1月の東京地裁判決では、上司が「うつ病みたいな辛気くさいやつはうちの会社にいらん」「3浪してD大に入ったにもかかわらず、そんなことしかできないのか」などと発言したことについて、原告の人格を否定し、侮辱する域にまで達していると判断。人権を侵害(不法行為)しているとした(ヴィナリウス事件)。ただ、企業にとっても被害者にとっても、業務上の指導範囲を超える人権侵害と判断されるかどうかは事例ごとに異なり、見極めは難しい。法令の規則もないため、企業の対策は十分に進んでいない。
 パワハラをした個人だけでなく、企業側の責任が問われることもある。日本ファンド事件(2010年7月の東京地裁判決)の場合は、喫煙者の従業員2人に対して上司が嫌がらせ目的で扇風機の風を連日当てて、大きな精神的苦痛を与えた行為に対し、裁判所は上司の不法行為を認定したうえで、会社はその不法行為について使用者責任を負うと判断した。企業側には働く人の安全配慮義務があり、パワハラを放置すれば不法行為責任や安全配慮義務違反が問われかねない。さらにパワハラエスカレートすれば労働災害が起きる可能性もある。実際、ひどい嫌がらせ・いじめ・暴行などで労災の認定を受けた件数は11年度は40件、そのうち自殺が3件あった。
 法的な線引きが難しいこともあり、労災や裁判になる前に企業内で解決する方が望ましいとの指摘は多い。「職場のハラスメント研究所」の金子雅臣代表理事は、企業の対応として(1)調査(2)通知(3)調整(4)調停の4段階があると話す。(1)調査は、まず事実関係を徹底的に確認することだ。(2)通知は実名で声を上げられない場合、職場の苦情処理委員会などに匿名で申し入れる制度だ。委員会はパワハラをした人に訴えがあったことを伝えて反省を促す。(3)調整は当事者同士の言い分が異なる場合に間に入って調整すること。(4)調停は当事者同時の言い分がまったく食い違い、調整も難しい場合に使う。
 解決の際に心がけるのは被害者の人権回復だ。「被害者がパワハラをした人の処分を含めて自分の権利回復を望む場合もあれば、謝罪だけあればいいから大げさにしないでほしいという場合などいろいろある」(金子氏)。被害者の意向にそった手法で解決を目指すことが大切だ。
 実際に対策を進めている企業もある。労働政策研究・研修機構の調査では、ハラスメントに対する労使の取り組みでは相談窓口の設置、アンケートによる実態把握、啓発・研修・教育をあげる労使が目立った。「男女雇用機会均等法ではセクハラ対策の措置義務を規定しており、すでに対策を実施している企業は多い。取り組み内容が似ているため、別にパワハラ対策を検討するよりも導入済みのセクハラ対策を拡大するほうが導入しやすい」(労働政策研究・研修機構の内藤忍研究員)という。同機構が企業に聞き取り調査したところ、人間関係の構築のために職場の風通しを良くする工夫に取り組んだり、笑顔で握手してあいさつする運動に取り組んだりする試みをしている会社や労働組合もある。先進的な取り組み事例は「職場のいじめ・嫌がらせ、パワーハラスメント対策に関する労使ヒアリング調査」として同機構がホームページで公開している。
 企業での解決がうまくいかない場合は、最終的に裁判で争うことになる。労働問題に詳しい中野麻美弁護士は「裁判では労働者側に立証責任があり、立証するためのハードルが高い。労働者の経済的な損失がパワハラをした人によるものだという因果関係を証明するのは難しい」と解説する。パワハラを受けたら「日記をつけることが大切。裁判では証拠として認めてもらえるし、その情報を誰かと共有することで自分の被害を客観化できる。働いた時間もつけておくといい」。ただ、一審の段階で1年半から2年くらいかかるケースもあり、訴える側の負担は大きい。パワハラ問題は社員にとっても企業にとっても負担や損失が大きいだけに、そもそもパワハラの起きない職場を労使でつくることがもっとも大切だ。
(経済部 平本信敬)