藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

本当の政治

冨山和彦さんの連載「それ、会社病ですよvol.10より。

しかし、では新しい勢力なら改革ができるのかといえば、必ずしもそう言えないところに難しさがあります。現実の政治や政策は、妥協の産物だからです。

100%自分たちが勝てることなどない。妥協できるところは妥協して、本当に妥協してはいけないところは妥協しないという、内輪での意思統一が必要なのです。各自の妥協ラインがバラバラだと、団体内で内ゲバが起こる。改革勢力はどの時代でも、どの国でも、分裂を繰り返しています。フランス革命だって実は内ゲバの歴史。王政復古になったり、ナポレオンが出てきたり、結局、安定した共和制ができるまでには100年以上かかった。その間に、フランスはヨーロッパ最大の債権国の座をプロシアに奪われるのです。

もとより改革勢力というのは妥協が苦手で分裂しやすいもの。逆に、守旧勢力は簡単に団結します。現状維持という共通目標がはっきりしているからです。

まったくのコメントだし、また今の日本の政治状況が的確に表現されていると思う。

そして改革勢力は、攻撃することは得意ですが、その次のステップに課題を持つことが多い。世間は短気です。“古い城”を攻め落としたあと、新しい城を早く造らないと許してはくれません。自民党を倒しながらわずか3年で政権を追われた民主党は、その典型的な例でした。

「改革勢力は攻撃が得意」。
まさに。
「攻撃は、次の世代の保証」ではないのだ。
次の時代を作るのは、また別の力である。
新しい城や予算を作る、ということが、じつは一番の目標であるといことをこの参院選でもぜひ思い出してもらいたいものである。

楽天三木谷浩史さんが代表理事を務める新経済連盟のイベント前夜祭で、安倍晋三首相が冒頭挨拶を行ってエールを送った、というニュースがネットをにぎわせていました。

ところが、このニュースを詳しく報じたマスメディアはほとんどありませんでした。経済団体といえば、まずは経団連を取り上げるのが、日本のテレビや新聞。エスタブリッシュ同士の本能が思わず働いた、ということでしょうか。

もっともマスメディアにしてみれば、影響力をますます高めているネットは強力なライバル。新経済連盟にはIT企業がずらりと並んでいますから、敵に塩を送るようなことはしたくなかった、ということかもしれません。

新しい経済団体が立ち上がったことは、意味があることだと思います。何よりメンバーが若く、既得権益から自由で、いろんなチャレンジに期待ができる。

しかし、では新しい勢力なら改革ができるのかといえば、必ずしもそう言えないところに難しさがあります。現実の政治や政策は、妥協の産物だからです。

100%自分たちが勝てることなどない。妥協できるところは妥協して、本当に妥協してはいけないところは妥協しないという、内輪での意思統一が必要なのです。各自の妥協ラインがバラバラだと、団体内で内ゲバが起こる。改革勢力はどの時代でも、どの国でも、分裂を繰り返しています。フランス革命だって実は内ゲバの歴史。王政復古になったり、ナポレオンが出てきたり、結局、安定した共和制ができるまでには100年以上かかった。その間に、フランスはヨーロッパ最大の債権国の座をプロシアに奪われるのです。
もとより改革勢力というのは妥協が苦手で分裂しやすいもの。逆に、守旧勢力は簡単に団結します。現状維持という共通目標がはっきりしているからです。

そして改革勢力は、攻撃することは得意ですが、その次のステップに課題を持つことが多い。世間は短気です。“古い城”を攻め落としたあと、新しい城を早く造らないと許してはくれません。自民党を倒しながらわずか3年で政権を追われた民主党は、その典型的な例でした。

では、新しい城を造るとはどういうことか? 政策を作ることであり、予算を作ることです。改革勢力というと、守旧派の官僚たちと戦うような構図が真っ先に浮かんでくるわけですが、勘違いをしてはいけないのは、官僚を完全に敵に回してはいけない、ということなのです。

むしろ、心ある官僚を味方につけるぐらいのしたたかさが必要。それができるかどうかが、実は改革を新しい城にまでできるかの分岐点になるのです。小泉政権構造改革がうまく進んだのは、実は、優秀な官僚のなかに改革側についた官僚がいたからに他なりません。

“ゲーム”を作れる(法律を書ける)官僚をうまく取り込めるか。それが問われてくるのです。

1960年生まれ。東京大学法学部卒。在学中に司法試験合格。スタンフォード大学MBAボストンコンサルティンググループを経て、コーポレートディレクション設立に参画し、のちに代表取締役社長。産業再生機構COOを経て現職。