藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

子づくりという概念。

赤ちゃん○○、という表現に訝る向きも多いと思うが、今度は「赤ちゃん設計」。
これは分かりやすく、今後の産児についてのコントロールの話である。
が。
「デザイナーベビー」と称されるほどに「生む側の恣意性」は高くなっている。
医学の進歩の結果とはいえ、生命とは何か、そしてさらに声高な「生命倫理とは何か」ということを今一度自分たちは考え直す必要がありそうである。

未来の子孫を「デザイン」するなどけしからん、という声もあるが、政略結婚然り。
「将来に全く意図のない子づくり」というのもまた少ないのではないだろうか。

どうせ子を授かるのなら、健康で病に強く、また聡明な出自を願うのは、それほどエゴなことではないはずであるし、また出生した子供に対してはできるだけの教育や愛情を注ぎたい、というのが親の生理であろう。
さらに、どんなに複雑なデザイナーベビーであっても、生まれたその子が「世の中を成功して泳いでいける」ということはない。
つまりは「生まれるまでの親のエゴ」に近い行為であり、もちろん生まれた後の「彼、彼女」に対して本質的に影響できる存在ではない。

そろそろ自分たちは、「自分たちが生む彼、彼女」のことよりも「生まれた後の彼達、彼女たち」について真剣に考えて、町とか都市とか、国とかを考えねばならない時期に来ているのではないだろうか。

ベビーをデザインしてエリートさえ生まれればいい、という考えはどう考えてももう時代の流れではないと思うのである。

「赤ちゃん設計」許されるか 根強い批判、予測には限界
【行方史郎=ワシントン、岡崎明子】SFの世界の話だったデザイナーベビー。親の望みによって、子どもの病気のリスクや容姿、知性、芸術・スポーツへの適性や才能を選ぶことは許されるのか。「究極の生命の操作」には根強い批判がある。また、遺伝子の働きは複雑で、いまの遺伝子研究では「赤ちゃんのデザイン」には限界があるのが実情だ。

赤ちゃん設計? 米で特許
 特許を取得した23アンドミーは、利用者の情報をデータベース化した独自の手法で研究を進める。大学や患者団体との共同研究で、パーキンソン病などに関係する研究成果も発表、自社の個人向け遺伝情報解析サービスにも反映している。利用者が増えるほど精度も上がる。米国には個人向けに遺伝子解析を提供する会社が10社以上あるが、同社は、情報の信頼性について強みがある。

 今回、認められたデザイナーベビーにつながる特許は、これまで同社が蓄積してきた遺伝情報の解析技術を統計的な手法で応用するものだ。生殖医療技術と組み合わせれば、病気になるリスクを回避したり、親が望む特質を子どもに受け継がせたりすることが可能になるかもしれない。

 例えば、子どもに期待する遺伝情報を持つ精子卵子の提供を受けて、受精卵をつくる。受精卵のDNAを調べてから着床させる「着床前診断」を組み合わせれば、より確実に望み通りの受精卵を選ぶことができる。実際、米国の一部のクリニックでは、男女産み分けの目的で着床前診断が利用されている。

 ただ、遺伝子情報には未解明の部分も多く、23アンドミーが現在、把握している遺伝情報では、子どもにどんな性格や才能、病気のリスクが出るのか、完全に予測することはできない。病気も含め、どんな特徴も、遺伝情報だけでなく、生活習慣など環境要因にも大きな影響を受けるからだ。

 最近、英科学誌ネイチャーの姉妹誌に発表された論文によると、統合失調症に関係すると思われる約8300個の遺伝情報のわずかな違い(SNP)を調べても、発症との関連は、32%しか説明できなかったという。統合失調症について、同社が調べているSNPは数個に過ぎない。

■「遺伝子から支配、許されない」

 親の好き嫌いや価値観で子どものDNAを選んだり、操作したりすることには倫理的な批判が強い。富裕層だけが技術を利用すれば社会的な不公平が生じるとの指摘もある。実際、米国では2009年に受精卵の段階で、目の色や髪の色を調べるサービスを提供しようとしたクリニックが、「生命の商品化や生命操作につながる」などの批判を受けて断念した。

 また今回の23アンドミーの特許について、同社の利用者に、事前にこうした手法に使う可能性があると同意を得ていたかどうかはっきりしない。科学誌に批判を掲載したベルギーや仏など4人の生命倫理学者は、その点についても指摘。「遺伝子解析研究にかかわる人は最大限の透明性を担保する必要がある」とした。

 将来、赤ちゃんをデザインすることは可能になるのか。遺伝子と脳、行動の関係を研究している藤田保健衛生大の宮川剛教授(行動神経学)は「そう遠くない将来、可能になるのは間違いない。不妊クリニックだけでなく、結婚相談所などにもサービスが広がる可能性がある」とみている。

 遺伝子研究がさらに進歩し、デザイナーベビーが現実になった時に、親が子どもをデザインしたいという欲望に歯止めがきかなくなるのではないかとの懸念がある。大阪府立大の森岡正博教授(生命倫理)は「遺伝子の段階から、親が子どもの人生を支配することは許されない」と話す。

 ゲノム研究の第一人者、榊佳之豊橋技術科学大学長は「希望する特徴がかなえられても、それ以外のリスクがどう出るのかは全くわからない。もし望み通りの子どもが生まれなかったとき、親は子どもを愛せるのか」と指摘する。

 同社は「現時点で実用化する計画はない」としているが、一般的に特許は20年保護される仕組みになっており、将来のビジネス展開を警戒する声もある。