藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

価値観の変質

池上さんのブログより。
もう三十年も前は一世を風靡していた代ゼミが27校のうち実に20校を閉鎖するという。

 少子化が進めば、受験生の総数も減ります。総数が減れば、浪人までしなくても入学できるようになり、まず浪人生が減ることは明らか。

少子化は読んでいたと思うが、「それ以外」にも何かが起きているのでは?と自分は思う。
それは「学歴の価値の変質」だろうと思う。
数年前、ある有名学習塾の説明会を聞いていて驚いたのだが「JMARCHに入るにわああっ!!(六大学プラスアルファの頭文字)」というお題で、もうそれは熱く、各大学の入試の傾向とか定員とか、穴場の学部とか選択のテクニックとか「よくそういうことばかり研究しましたね」というようなないようだった。

なに、自分の受験時代もまさに予備校とかは「そんな感じ」だったのだが、それが三十余年を経て「全くトーンが変わっていない」ことにとても驚いたのである。
しかもそれを聞く父兄、特に母親たちは食い入るように熱心である。
かくして「JMARCH以外は狙わない」とか「日東駒専が・・・」とか「大日本帝国は・・・」という議論がまことしやかに交わされていた。

大学で何が学べる、とか将来がどんな展望だとかいうこともなく、そもそも予備校の先生にそんなビジネスとか公共とかの「社会人観」を含めて大学を語らせる、というのも難しいことだろう。
最終的には「どんな社会人を目指すか」というような深い問いに向かいながら、一ステップとしての大学生活なのだから、まず義務教育を終えたら、高校で教えねばならないのはそういうことではないだろうか。(自分はそんな話を聞いた記憶は一度もなかった)
(つづく)

代ゼミの教室閉鎖に思うこと〜人口減少社会の衝撃 
2014/9/1 3:30
日本経済新聞 電子版

大手予備校「代々木ゼミナール」が、全国に27ある校舎のうち20校を閉鎖する方針であることが、先月、明らかになりました。そんな時代が来たのかと、いささか感傷に浸ってしまいました。
■有名講師売り出し活躍
私の高校時代、代々木駅前には、「代々木学院」という小さいながらも老舗の予備校がありました。その予備校より代々木駅に近い場所にあったのが、代々木ゼミナール。代々木学院に入学手続きに来たはずが、うっかり代ゼミに入ってしまったという人の話を聞いたものです。

その後、代ゼミは大きく成長。代々木学院はいつしか消えていきました。ビジネスとは、こうやるものか。感心したのを覚えています。

当時、東京での代ゼミのライバルは駿台予備学校。そこに、名古屋から河合塾が進出し、三大予備校は、競って全国進出を目指しました。よきライバルがいると、企業は成長する。経済学の教材になるような経営努力でした。

来年度以降も存続する代々木ゼミナール本部校代ゼミタワー(東京・代々木)

当時、代ゼミの経営方針をNHKが特番で放送しました。各教室に監視カメラがあり、講師の授業風景を収録。教え方が上手なら翌年度も契約を更新するし、報酬もアップするが、評判が悪ければ、打ち切り。その厳しさに驚いたものです。これだけ厳しければ講師の先生たちも必死。教え方に磨きがかかります。公立学校の先生では歯が立ちません。

予備校の有名講師を売り出す点でも、代ゼミは進んでいました。

小田実吉川勇一など「べ平連」(ベトナムに平和を!市民連合)の有名な指導者が英語の講師としても活躍しました。

私は通ったことはありませんでしたが、代ゼミの有名講師が書いた参考書や問題集にはお世話になりました。

1980年代から90年代にかけて、校舎の全国展開をしていた頃、校舎の特徴について、「いずれ少子化の時代になったら、受験生の数も減るから、そのときには別の用途に使える構造にしているそうだ」という話を聞いたことがあります。都市伝説だったのかもしれませんが、遂(つい)にそんな時代が来たのですね。

■「過去の受験生」集める工夫できなかったか
受験生の数が減ることは、前からわかっていたこと。ライバルの予備校は、浪人生より現役高校生対象に重点化したり、授業の様子をインターネット配信したり、数々の対応を取っていました。

少子化が進めば、受験生の総数も減ります。総数が減れば、浪人までしなくても入学できるようになり、まず浪人生が減ることは明らか。現役高校生に絞れば、生徒減をある程度カバーできるでしょう。そんな経営戦略を持たなかったのでしょうか。

代ゼミは私立文系を得意としてきましたが、理系志望が増えたことも誤算だったようです。「代ゼミは受験生が多い私立文系のコースを複数開き、100人以上を収容する大型教室で授業することが多い。一定の受講生が確保できなければコスト負担が重くのしかかり、経営を圧迫する」と、日本経済新聞(8月24日付)は解説しています。

ベビーブーム時代には有効だった戦略が、時代が変わったことで負担になる。他の業界でもよく聞かれるような話です。

受験生や講師には厳しい競争を強いてきた予備校が、他との競争で苦境に陥る。なんとも皮肉な事態です。

受験生が減った分は、過去の大学受験生(つまり団塊の世代の高齢者)を集めるなどの工夫ができなかったのか。他人事(ひとごと)とはいえ、一抹の寂しさを感じます。(敬称略)