藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

全ての街中は記録される。

交通事故の総件数が減る中、自転車の割合が相対的に増えているという。
総数はここ十年で三割も減っているというから安全な傾向には違いない。
もう殆どの営業車両やかなりの割合の乗用車にも前方を記録するレコーダーがついていて、安全には相当役に立っている。

あと一息。
自転車にもレコーダーを付ける、というよりはこのままぜひ交差点全部にレコーダーを配備するべきだと思う。
さらに道にも定点的にカメラを置く。
個人のプライバシー云々を説く人もいるだろうけれど、それは情報の管理を工夫すべきで、安全とか抑止力の方を優先すべきだろう。

神奈川新聞の記事の中にあるような「立証できない被害者の無念」のようなことがなくなる方が先決で、プライバシーは厳格な取扱いをルール化し、国家権力といえども勝手に操作できない運用を編み出せばいい。

色んな犯罪の抑止力にもなるだろうし、災害や事故対応にも使えるし、日本の安全神話がまた新しいステージに評価されるだろう。
そんなことを可能にしたのもコストダウンとネットワークの発展の賜物だなぁと思う。
まだまだコンピュータの集積は進むだろうけれど、「無限に記録し続ける」ということが可能になって従来とは全く違うことがこれからも実現してくる社会になるのに違いない。
公共事業はこういうことに振り向けてもらいたいものである。

自転車事故「二重の苦しみ」 家族を失った衝撃と乏しい証拠
カナロコ by 神奈川新聞 9月5日(金)10時7分配信


 自転車による交通事故が後を絶たない。この10年で交通事故の総数が約3割減少する中、歩行者をはねたり、自転車同士が衝突したりする事故は毎年5千件以上と横ばいが続き、総数に占める割合は高まる一方だ。頭部を強く打つなどして死者が出る事故も発生している。有効な対策が取られていない中で、被害者側は事故の衝撃と責任追及の難しさという、「二重の苦しみ」を味わっている現実がある。

 「被告の供述によって、遺族は被害者の名誉のために独自の調査活動を行うなど、多大な労力を費やした」。6月、自転車で歩行者をはねて死亡させたとして、重過失致死罪に問われた男性会社員(44)の判決公判が横浜地裁であった。裁判官は、歩行者の女性が信号無視をしたかのような供述をした男性を指弾し、禁錮2年、執行猶予3年の有罪判決(確定)を言い渡した。

 「ようやく姉の名誉が回復された」。量刑に不満は残るが、遺族で弟の中根忠明さん(64)は胸のつかえが一つ取れる思いがした。

 事故は2012年1月、横浜市泉区の自宅近くの信号機付き市道交差点で発生。同居していた姉の典子さん=当時(67)=は、横断歩道上で右方から来た自転車にはねられ、頭部を強く打って死亡した。

 事故直後、自転車の男性側は「青信号を直進した」と説明。「慎重な性格の姉が信号無視をするはずがない。死人に口なしだ」。事故原因の解明をめぐる苦しみが、姉を失った身にさらにのしかかった。

 中根さんは、直前の信号機との距離や信号が変わるタイミングなどを独自に計算。男性が信号を無視したと警察や検察に訴えた。起訴までに2年の時間を要したが、目撃者の証言や近くの防犯カメラの画像などから、男性側の信号が赤だったことが判明。判決は事故原因を男性の信号無視と認定した。

 男性は自転車の事故にも適用される損害保険に加入していたものの、賠償の交渉はまとまっておらず、遺族の苦しみは続いている。


 今年3月に横浜簡裁で判決が言い渡された自転車同士の死亡事故の裁判では、目撃者がいない中、当事者の過失の有無が争われた。

 被告となった男性会社員(38)は、見通しの悪い交差点に進入してきた自転車の男性=当時(58)=の進路をふさぎ、転倒させて死亡させたとして、過失致死罪に問われた。検察側は、会社員の自転車が急に前方に動きだしたことで、死亡男性は驚いて転倒したと主張。ただ、ブレーキ痕など、死亡男性の事故前の走行状況を示す証拠はなかった。

 会社員は、一度は起訴内容を認める意向を示したが、裁判の中で「死亡した男性が高速度で進入してきたため、よけきれなかった」と過失を否定した。

 判決は、無罪だった。裁判官は事故状況の詳細は「不明」と断定を避けつつ、会社員の供述を基に、死亡男性の転倒前の走行速度は「時速25〜30キロの可能性が高い」と指摘。「通常の速度であれば事故は避けられた」と結論づけた。

 「判決はすべて相手の言い分。これではあんまりだ」。閉廷後、死亡男性の親族の女性は泣き崩れた。だが検察側は控訴せず、判決は確定した。

 刑事裁判の判断を参考にしようと民事裁判での損害賠償請求を控えていた死亡男性側の代理人は、「刑事と民事は別」としつつも、無罪判決は「有利な材料にはならない」と明かす。会社員へ賠償を求めるかどうか、決めかねているという。


 「自転車事故は物的証拠が乏しい上、自動車による事故に比べて警察の捜査知識も少ないため、事故がどのように起きたのか、解明は難しい」。交通事故に詳しい栗脇康秀弁護士(福岡県弁護士会)は指摘する。

 事故前の走行状況は、過失を立証するための重要な材料となる。自動車であれば路面に残るブレーキ痕から速度や走行経路が分かる場合が多い上、車の速度に応じたブレーキの制動距離など科学的なデータが蓄積されている。

 これに対し、「車体が軽い自転車はブレーキ痕がほとんど残らない」と栗脇弁護士。転倒した際にペダルがこすれた傷がアスファルトに残るケースもあるが、速度の特定までは困難という。また自動車事故に比べ取扱件数が少ないこともあり、「警察の捜査知識の蓄積が少ない」。事故の状況や原因の解明が限られれば、刑事でも民事でも責任追及は難しくならざるを得ない。


 裁判で典子さんの名誉が回復されたとはいえ、遺族の中根さんには「相手の責任を十分に追及できなかった」という悔しさが残る。

 被告の男性は法廷で、事故前に飲酒していたことを明かした。中根さんが初めて知る事実だった。自転車であっても、飲酒運転は道交法で禁止されている。だがどれだけ酔っていたか分からない上、酩酊(めいてい)していなければ罰則がないこともあり、罪には問われなかった。

 「原因や過失がしっかりと解明され、それに見合った刑罰が下されることが事故の抑止になる」。そう強調する中根さんは、願う。「自転車でも重大な事故が起きるということを、運転者はもちろん、警察やメーカーなど社会全体が重く受け止めてほしい」


■□補償の仕組み不十分
 警察庁の統計によると、2013年に全国で発生した自転車と歩行者の事故は2605件で、10年前に比べ14.4%増加している。自転車同士は3037件と10年前の6.4%減。交通事故総数は33.6%減少しており、対歩行者、対自転車の事故の割合は年々高まっている。

 県内でも、昨年の自転車関連の事故件数は7799件で、全体の23.0%を占めた。県警は悪質な違反者に対する取り締まりを強化。信号を無視したり、遮断機が下りた踏切を横断したりしたケースを道交法違反で摘発している。

 ただ、自動車やバイクのように保険加入が義務づけられておらず、事故による賠償の仕組みは整っていない。未加入なら、治療費などの賠償は当事者同士で話し合って決めたり、裁判を起こしたりする必要があり、負担は大きくなる。

 日弁連交通事故相談センター県支部委員長の狩倉博之弁護士は、「強制的な保険制度の検討も必要だ」と指摘。その上で、自転車運転者には「自転車事故に対応する任意保険を利用してほしい」と強調する。事故に遭って自分がけがをした場合でも、補償を受けられる保険もある。

 栗脇康秀弁護士は、自転車側の自衛策として、走行時の映像を記録するドライブレコーダーや、位置情報や速度を記録するサイクルコンピューターなどを車体に装着することを勧める。これらの記録は裁判でも証拠となるといい、「事故態様を解明するためには、客観的な証拠の収集が大切だ」と話している。