藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

触れない話題

最近周囲の人から、相続について聞かされることが多い。
まだ五十代の友人とでも「年金、老後、相続」が話題になるくらいだから、今日本人のかなり関心の高い話題なのは間違いなさそうである。(いよいよ気分まで高齢化してきている気がする。)

財産のある人の話を聞いていてつくづく思うのは「持っていること」も大変なのだということ。
財産を築くのももちろん大変だったと思うが「あればあったで」頭を悩ますものである。
財産がない場合は「そういう問題」はない。
それはともく。

妙なことに気がついた。
「相続後の話」を相続人たちと事前にしている人が皆無なのである。

また話は逸れるが自分の身辺で知る限り、一塊の財産を残しそれが次代に引き継がれてうまくいった例というのは寡聞にして知らない。
残す本人はあれこれ考えて策を練っているのだが、引き継ぐ当人は大体「棚ぼた気分」であることが多い。(だから平気で「もっとよこせ」といった主張をする人もいる。)
不労所得言うけれど、自分の身から産んだ財でなければ、なかなか身に付かないものなのだろう。
旧財閥などにはそうした「引き継ぐ財」についての様々な家訓があると聞くけれど、財閥ほどではないにせよ、先代から引き継いだものをどのように取り扱うか、ということについては生前によく話し合うことが必要だと思う。
いきなり遺言書を、ということもあるかもしれないが、まず築いたものを「次の世代にどう譲っていくのか」ということこそ重要なのである。

自分の亡きあとのことなど、誰しも積極的に話題にしたくないものだけれど、一度その殻を破って話し合ってみれば「その後の問題」はかなり防げるのではないだろうか。
改めて友人に提案しようと思った次第である。

相続対策に生命保険 節税だけじゃないメリット

2014/8/27付
日本経済新聞 電子版
来年1月からの相続増税を前に、生命保険を活用した相続対策に注目が集まっている。非課税枠や生前贈与での活用で相続税を減らしたり、遺産分けの争い防止に使えたりするためだ。保険を使うメリットや注意点をまとめた。

「高齢の自分でも死亡保険金の相続税の非課税枠が活用できそう」と話すのは都内に住む無職、柏木勉さん(仮名、75)。妻は亡く、娘3人が法定相続人。遺産は自宅と金融資産で計1億2000万円だ。

柏木さんの現在の保険は200万円の終身死亡保険だけ。非課税枠は知っていたが「高齢なので今から年払いで入ると保険料が高く、保険金を上回りかねないと思っていた」。しかし保険料を一括で払う「一時払い終身保険」なら1000万円弱の払い込みで、保険金1000万円を受け取れる商品がある。

現在の契約を含め、柏木さんが受け取る保険金総額は3人分の非課税枠1500万円の範囲におさまる。一方で1000万円弱の保険料を支払うことで相続財産が減れば、柏木さんの場合は相続税を150万円弱減らせる。一時払い終身は80〜85歳程度まで契約できる生保が多い。

■誰に渡すかを指定
生命保険の利点は非課税枠以外にもある。「誰に渡すか自由に決められるし、相続人全員の合意がなければ引き出せなくなる預貯金と違って早期に支払われる」(メットライフ生命保険の斉田浩支社本部シニアマネジャー)。柏木さんは同居中の長女の受取額を多くし、葬儀費用などの出費に備えてもらう考えだ。

生前贈与も税負担の軽減につながるが、現金などを贈与すると子どもの浪費を心配する親も多い。「子が贈与額などを元手に、親を被保険者として保険に入るのも選択肢」(税理士の服部誠氏)だ。


保険の利回りは低下しているが「商品を選べば保険料を上回る保険金も期待できる」(複数の会社の商品を扱う乗合代理店トータス・ウィンズの亀甲美智博社長)。亀甲氏が割安な「低解約返戻金」タイプの保険で試算したのが図C。父が亡くなると保険料総額約2940万円に対し3100万円の保険金が出る。

ここでは契約者と受取人が子なので保険金は子の一時所得になり、所得税・住民税がかかる。一見、大きな税負担が発生しそうだが、一時所得は表Aの計算式でわかるように保険料の支払い分が差し引かれた上で半分に軽減され、小さくなりやすい。表Cのケースでも税負担は11万円で済む。「生前贈与で一時所得方式の保険加入はよく使われている」(明治安田生命保険の山本英生・営業教育部部長)

毎年の贈与を税務署に否認されないように「その都度贈与契約書を結び、非課税額を上回る部分は納税しておくことも忘れないようにしたい」(服部誠税理士)。

■遺族の争いを防ぐ
「保険は遺族の争いを防ぐためにも使える」(AIG富士生命保険の水野敦美トレーニングディレクター)。例えば資産の大半が分割しにくい不動産で預貯金が少ない場合。長男が不動産を相続すると、長女に不満が出やすい。長男が潤沢な預貯金を持っていれば差額分を長女に渡せるが、そうしたケースはまれ。「父が契約者=被保険者となり長男を受取人にして、保険金を長男から長女に渡す選択もある」と水野氏は話す。

ポイントは保険の受取人を遺産を多く受け継ぐ長男にすること。「そのうえで遺産分割協議で長女に渡す保険金を代償交付金と明記すれば、贈与税などはかからない」(税理士の柴原一氏)

ややこしいのは、遺産分けに適用される民法では保険金は他の遺産と切り離し、受取人独自の財産とみなされること。「長女を受取人にすると、長女が保険金をもらったうえで、それ以外の遺産分けを別途求めることもでき、トラブルになる可能性がある」(明治安田の山本氏)

生命保険は節税や争い防止につながる利点がある一方、保険料は高額になることが多い。保険を使うことが本当に有利かどうか税理士などに相談し、慎重に見極めることが重要だろう。(編集委員 田村正之)

所得税にするには契約者=受取人に
 都内の会社員、高田真吾さん(仮名、33)の父親が亡くなったのは2年前。父親は高田さんの母親と離婚、新しい家族を持っていたが、離婚前に作った高田さんを受取人とする死亡保険を維持してくれていた。新しい家族に内緒で高田さんに保険金を残す意思だった。
 高田さんに保険金が支払われたが、問題は契約者も被保険者も父親だったので相続税の対象になったこと(表A)。相続税の計算には相続財産全体を法定相続人が知ることが必要なので、税務署からの連絡で支払いが新しい家族にわかり「かなり非難された」(高田さん)。父親が高田さんに保険料を贈与し、高田さんが契約者=受取人になる形式なら所得税となり新しい家族にはわからなかった。

[日本経済新聞朝刊2014年8月27日付]