藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

AI取締り

*[ウェブ進化論]税金の話。
規制とか監査とかの話を聞くたびに「これってすごいコストだな」と反射的に思う人は多いのではないだろうか。
税金関係もその一つ。
「そこ」に携わっている人の苦労がしのばれる、と同時にAIで劇的に省力化が期待できるだろう。
いろんな分野がこれから自動化され、一説には「週に3時間だけ働く日常」になるという。摘発とか規制とか許認可とか、正義感を以ってでしかやれない仕事は優先して自動化を検討するべきだと思う。
公務員系の仕事はすべてが「公務」なわけで、こうした仕事の削減が長期的な目標になるはずだが「そこ」で食べている人がいる限りは、激変は緩和して「そろそろ」と進めていくしかないのが日本の特徴だ。
それにしても「あと出しじゃんけん」の日本の税制はため息が出るほど複雑で、とても理解しきれない。まずはこれの整理から入るべきだと思うがそれも政治に期待できるかどうか…
日本の閉塞感とはそんなところにあるのだと思う。
 

富裕層の“行き過ぎ”相続節税に国税庁が「待った!」

 

12/5(木) 9:30配信

 

 2015年1月に施行された相続税増税。富裕層を中心にさまざまな節税対策も行われるが、“行き過ぎ”節税策に国税当局が「待った」を掛けている。【週刊エコノミスト編集部】

◇相続したマンションの価値は?

北海道や東京都に住む相続人3人が、札幌南税務署長の更正処分(納税額の修正)を不服として処分の取り消しなどを訴えた裁判で、東京地裁は今年8月、相続人側の主張を棄却した。争点は、相続人が相続した東京都杉並区や川崎市のマンション計2棟の価値を、いくらと評価するかという点だ。

判決などによると、札幌市に住む会社経営者の男性は09年1月、杉並区の賃貸マンション1棟(44戸)を約8億3700万円で、同12月には川崎市の賃貸マンション1棟(39戸)を約5億5000万円で購入。男性は12年6月に死亡し、相続人3人は13年3月、相続税を申告した。

相続税は、亡くなった人の財産から、借金などの債務と葬儀費用を引いた金額のうち、基礎控除額を超えた分に課税される。相続人3人は、杉並区のマンションを約2億円、川崎市のマンションは約1億3400万円と評価して申告。一方、会社経営者はマンション購入資金として10億円超を銀行などから借り入れていた。

こうした点を考慮し、相続人は相続税を「ゼロ」として申告した。しかし、国税側は16年4月、杉並区のマンションを約7億5400万円、川崎市のマンションを約5億1900万円とする鑑定評価を基に、相続人3人の相続税額を約2億8700万円と修正。約4300万円の過少申告加算税も課した。

◇「伝家の宝刀」を抜く

相続税の申告に当たり、相続財産をいくらと評価すればいいのか。国税庁は「財産評価基本通達」で、土地や建物、株式などの評価方法を細かく定めている。土地は国税庁の発表する路線価を基に、建物は固定資産税評価額を基に計算することが原則。相続人も基本通達に沿ってマンション2棟を評価し、相続税を申告した。

路線価はそもそも、相続や贈与に伴って納税者の負担が重くなり過ぎないよう、国土交通省が発表する公示地価の8割の水準に設定されている。また、建物が借家の場合、借家権が付く分だけ評価額を30%引き下げたりもする。実勢価格に比べて低くなる基本通達の評価方法に従って、相続人は相続財産を評価した。

だが、国税庁は、申告されたマンション2棟の相続税評価額と、時価との間に「著しい乖離(かいり)」があることを問題視。基本通達の評価方法を適用すれば、納税者の税負担の公平を著しく害する「特別な事情」に当たるとして、別の方法による財産評価を例外的に認めた基本通達「6項」の適用という“伝家の宝刀”を抜いた。

相続税法は相続財産の評価の原則を「時価」としているが、具体的な評価方法までは定めていない。その「時価」を評価するルールとなっているのが基本通達だ。相続税申告の実務で現在まで定着している根底には、「6項」の適用を乱発しないことで国税当局と納税者の間の信頼関係が築かれた側面もある。

それでも、国税側はまさに今回、「6項」を適用した。税理士法人タクトコンサルティング情報企画室の遠藤純一課長は「判決によれば、経営者が借り入れた銀行の稟議(りんぎ)書に『相続対策のため不動産購入を計画』などと書かれている。国税側は不動産の評価額の乖離だけでなく、節税策が行き過ぎと判断したのでは」と話す。

◇不明確な基準

しかし、「6項」の適用は増える傾向にありそうだ。相続増税後、国税側が相続税評価額と時価との「著しい乖離」に神経をとがらせていたことがうかがえる資料がある。東京国税局が15年7月、相続税など資産税の担当者向けに配布した研修資料には、基本通達の6項を適用するための四つの条件が示されていた。(1)基本通達の評価方法を形式的に適用する合理性の欠如、(2)基本通達に定めた評価方法のほかに合理的な評価方法が存在、(3)基本通達の評価方法による評価額と、他の合理的な評価方法による評価額との間に著しい乖離が存在、(4)著しい乖離が生じたことに納税者の行為が介在していること--だ。

国税側はまさに今回、こうした4条件を当てはめて、相続税の過少申告を指摘。東京地裁判決も、こうした国税側の主張を全面的に支持する結果となった。しかし、相続人の代理人を務める増田英敏弁護士は「これでは、いつ誰が(国税に)狙われるか分からなくなる」と憤る。「6項」が恣意(しい)的に適用されかねないためだ。

何を持って「著しい乖離」とするか、その基準が明確でなく、納税者に混乱を与えかねない。同じような条件の他の納税者にも6項が本当に適用されているのか、納税者に不信感も抱かせる。そもそも、基本通達の評価方法に穴があるのであれば、基本通達自体を見直すべきではないか--。

相続人は判決を不服として東京高裁に控訴したが、判決の余波は不動産市場にも及ぶ。税理士法人大和パートナーズの加賀光義代表社員は「相続税対策として販売されることも多かった投資用不動産市場では、今回の判決で多少のブレーキがかかるのでは」と話す。

週刊エコノミスト12月10日号から)

 

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