藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

受け皿つくり。

世界有数の治安だと言われる日本でも起きる事件はゼロではない。

健全な生活を模範に。
早朝に起床し、その日の日付が変わらないうちに寝る。

こういうサイクルが日常キープできているというのは、「生活の土台」がしっかりしていると言っていいだろう。

一方安全な日本でも、子供や女性や高齢者が対象になる重大事件はよく報道される。
夜間の子供の外出禁止令とか、警備の強化とかが取り沙汰されているけれど、実は大事なのは「夜間に外出したい人たち」だろう。

今の時代に彼らの意向に反して外出を禁じたり、禁則ルールを適用するのはどうもお門違いな感じがする。
子供も子供を持つ両親も、さらにその祖父母世代の人たちも、「夜間や長期に外出しようと思えばできる施策」こそが求められているのではないだろうか。

事は子供に限らない。
大人も主婦も高齢者も学生も、みなそれぞれに、それぞれの時間を過ごしたい欲求は時代が豊かになればなるほど強くなっているのに違いない。
これまでの因習で皆にモラルを強いるより、より「やりたいことのためのサービスの受け皿」を準備すべきだと思っている。

具体的には夜間にも滞在できる休憩施設とか、子持ちの親が宿泊できる親子ステイの仕組みとか、休日も利用できる学校など、これまでのライフスタイルにはなかったものへの準備が必要になってきているのだ。

家にいても学校にいても友人宅にいても、子供を包み込めるような受け皿があれば現実的な解決に知被くのではないだろうか。

子どもたちが「家に帰りたくない日」のために
先日、友人に相談されました。「最近は子どもたちだけでカラオケボックスに行く子もいるのよね。行きたいって言い出したら困るわ」
 この夏、大阪で中学1年の子ども2人が犠牲となる事件があったばかり。親御さんは頭が痛いでしょう。子どもたちだけで何時まで外に出していいのか? どこになら行ってもいいのか? 子どもの関心はぐんぐん外に広がっていき、友だちとの世界もできていく。一方、親はなるべく安全でいてほしい――。

昼間ならいい? お母さんは悩んでいる
 小町でも、悩めるお母さんからの投稿がありました。「最近、中1の子供が、友達だけでカラオケに行きたいと言うようになりました。小学生の時から、打ち上げと称しては、夜に子供達だけで、焼肉食べ放題、カラオケ、ゲームセンターやスーパー銭湯等に、頻繁に誘われていました。勿論もちろんその時は、小学生同士で親は行かないのに、許可はしませんでした。中学生に上がったからといって夜間徘徊はいかいは許可できませんが、昼間にカラオケだけなら良いのかどうか毎回悩んでいます」(「中学生同士のカラオケ」)
 「子どもだけでの外出なんて、とんでもない」という家もあれば、「そろそろ昼のカラオケぐらいは子どもだけでも」という家もあります。
 アメリカでは、「12歳以下の子どもを、自宅であっても1人で居させてはいけない」という法律があったりします。海外ドラマや映画で、ベビーシッターがよくでてくるのはそんなわけなんです。海外在住の友人が「車に子どもをおいて、ちょっとだけ買い物をしていても逮捕されることもあるから気をつけないと」と言っていましたっけ。
 おうちの事情だけでなく、校則や地域の条例もあります。先ほどの投稿では、「うちの地域では条例が厳しいです。16歳以下の子供は保護者なしでカラオケやゲームセンター、居酒屋に入っちゃいけません」というレスも寄せられていました。

親を責めるのは簡単だけれど…
 夜間徘徊をして犠牲となった2人の中学生のことを思うと、誰もが考えさせられる問題です。しかし「あんなふうに子どもを放っておく親が信じられない」「なんで夜に子どもが外でうろうろしているのか? 親は何をしているのか?」という論調が、テレビのコメンテーターなどから出ると本当にやるせない気持ちになります。
 小町にも「(駄)夜間外出する中高生の親は何をしている?」というトピがありました。トピ主さんの家は厳しく、夜7時以降の外出など考えられなかったとか。
 しかし、このような事件が起きたら「うちは違う」と声高に主張しても始まりません。いろいろな家があり、いろいろな事情がある。親が夜に働いている場合もあるし、シングルマザーで、夜も昼も子どもを養うために働いているという人も、今や珍しくないでしょう。母子家庭の貧困率は5割を超え、年間の就労収入は平均181万円。これは子どもがいる他の世帯に比べて400万円低いという調査もあります。
 そして子どもの側でも、「帰れない」事情を抱えていたり、「帰りたくない日」もあったりするでしょう。何不自由なさそうな家庭で、普段は何も問題がなくても、思春期はささいなこと……例えば「母親とケンカした」とか、そういった理由で「帰りたくないなー」と思う日もあるはずです。
 そういう時にひと晩、安全に過ごせる居場所があるといいと思います。大阪の事件のあと、友だちの娘さん(中1)に、「お母さんとケンカして帰りたくなくなったら、うちにおいで」と言いました。お母さんはもしかしたら、いい気持ちはしないかもしれませんが、もしものときに思い出してくれたらいいと思います。
 そしてこんな取り組みもあります。東京都豊島区のNPO法人「豊島子どもWAKUWAKUネットワーク」は、300円で夕食を提供する「子ども食堂」をひらいています。ボランティアが集まって週2回、300円で子どもたちがひとりでやってきても温かいご飯を誰かと一緒に食べられる仕組みです。
 子ども食堂はただのレストランではなく、地域の子どもにとって、貴重な「居場所」になっているのでしょう。もし子ども食堂に来ている顔見知りの子どもなら、夜遅く外にいたら「どうしたの?」と声をかけることもできる。
 こうした食堂の試みはあちらこちらに広がっているそうです。地域によって開店日は違いますが、ひとつ居場所が増え、子どもたちにとっても顔なじみが増える。そして、その子どもたちを知る大人も増えます。
 「うちは違う」「親は何をやっているんだ」……人ごとにする前に、少しだけ想像してください。家があっても、家に帰りたくない子どももいるのだということを。そして、その子やその親たちのために、周囲が何かできることはないのかということも。
2015年09月09日 Copyright © The Yomiuri Shimbun