藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

悲観的でなく。

自分が学生時代には考えもしなかった老後記事のオンパレード。
今の学生さんたちは、自分たちの三十年後はどんな記事構成になっているかを想像してもらいたい。

それにしても、「定年時に何千万円も持っていてなお老後に不安が残る」ということがテーマになっている。
老後、大都市圏で、現役世代のままに生活を続けようという発想が難しいのだろう。
衣食住、それほどの欲求もないのにむりに都会にとどまることを考え直す方が正解ではないだろうか。

自分の周辺では、ひたすら会社に留まるより結果的に五十代半ばくらいから準備している人が「充実した定年後」を過ごしているように思う。
お金もだが「その後の生活イメージを膨らませる」ことが重要なのに違いない。

「もらっても使えない」 退職金のリアルな姿
60歳2000万円 リアル退職金の使い方(1)2016/1/18 6:30日本経済新聞 電子版

 大企業勤務の大卒社員で平均2300万円、中小企業で同1300万〜1800万円とされる退職金。老後の生活を支える要だが、海外旅行やリフォームでかなりの部分を散財したという話もよく耳にする。ドンと振り込まれた大金を先輩たちは上手に生活費として使っているのか。退職金のリアルな使い方を4回に分けて解説する。1回目は、もらった退職金の使い道を調査と体験談からひもとく。

(イラスト:タカハシカオリ)
 毎日が日曜日、口座には8桁の大金。何を買おう、どこへ行こう。仕事にくたびれた現役サラリーマンの中には、そんな定年後の生活を夢見る人がいるかもしれない。だが、退職金を自由に使えるのは限られた人たちだけだ。

 年金支給開始年齢の引き上げで、多くのサラリーマンは退職後に「空白期間」を過ごさなければならなくなった。退職金は以前にも増して生活費という側面が強くなってきている。実際、年金額や老後の生活費、そして寿命までの年数、それぞれの平均データを使って収支を計算すると、退職金は生活費の補填で消えてしまうのだ。

 では、サラリーマンOBは退職金をどう使っているのだろう。野村総合研究所の調査によると、受け取った額の6割近くは預金。投資に回した分を含めると75%は将来への備えに回されている(下グラフ)。旅行やリフォームなど、退職時に使った額は全体の17%に過ぎない。

受け取った退職金の半分はまだ預金口座にある。ご褒美に使った金額は2割以下。調査対象は50〜70代、金融資産1000万円以上の退職金を受け取った退職者3270人(出所:野村総合研究所

 このアンケートの調査対象は、少なくとも61歳から年金の一部を受け取っている恵まれた世代。それでも退職金はそう簡単に使えないようだ。

ところで、将来への備えとして預金に回った退職金はその後どうなるのだろう。退職後の資金計画に従ってATMから月々の生活費として引き出しているのだろうか。

 調査を担当した野村総合研究所上級コンサルタントの東山真隆氏によると「退職後に専門家のアドバイスを受けて資金計画を立てた人は5%。雑誌や書籍、勤務先のセミナーから情報を得て計画を立てる退職者もいるが、実際に会って話を聞くと、中身に疑問符が付く人が多い。しっかりした計画を持っている人は少ないという印象」と言う。

 いくら必要なのか分からない。退職金を使っていいかどうかも分からない。だから取りあえず預金しておこう。これが、退職した先輩たちのリアルな退職金の使い方(?)のようだ。

■退職後に起業した人の退職金の使い道は
 起業志望のシニアが集う「アントレセミナー交流会」(シニア起業支援を行う銀座セカンドライフが主催)にはサラリーマンOBも数多く参加する。交流会参加者に退職金の使い方を聞いてみた。

福島賢造さん
大手商社の化学部門に40年間勤務。定年後、雇用延長を選ばず自ら貿易会社を起業。67歳

退職時点で住宅ローンは完済、子供たちも自立していたし、当面の生活を賄える蓄えもあった。退職金は特に使う当てがなかったので全額を年金受け取りにした。税金面では不利だが、それ以上に有利な利回りで会社が運用してくれるのでそう決めた。退職記念旅行や、自分へのご褒美のような買い物は特にしていない。

現在は企業年金公的年金の一部で暮らしている。現役時代の生活レベルを落とせていないので家計は苦しいが、当面、預金と年金で十分暮らせるとは思う。

それでもいくつまで生きるか分からないし、医療費や介護費用、インフレに対する不安はある。退職してすぐに現役時代の縁を生かして起業した。仕事のやりがい、生活のハリを求めてのことで、必ずしも経済的な理由ではないが、少しでも生活費のプラスになればいいとは思っている。

朝倉博行さん
有名ホテルでマネジメント畑を歩く。雇用延長で勤務後、コンサルティング会社を起業。66歳

結婚が遅かったので定年退職した年と、子供が大学に入った年が重なった。雇用延長で働いたが、退職金の半分は子供の学費に充て、4分の1は投資で失ってしまった。

投資は退職前から通っていた海外投資の本の著者が開催するセミナーで紹介されたもの。ローリスク・ローリターンという触れ込みだったが、結局、投資した資金の大半は戻らなかった。この他、地方で暮らす老親の元に定期的に通うための支出もかさんだ。65歳までに退職金の7〜8割は消えてしまった感じだ。

妻が現役で働いており、公的年金の支給も始まったので生活には困っていない。だが、将来に対する不安は大きい。65歳以降も職場に残る選択肢もあったが、残れても1〜2年。その先の生活を考えて起業することにした。緩い起業で年金に上乗せできる収入を得たいと考えている。

この他にも取材で集めたリアルな退職金の使い方を紹介しよう。
■起業準備や出資で3000万円が消える
 53歳で外資系企業を早期退職したAさんは、退職金として約3000万円を受け取った。住宅ローンの残債1500万円を完済後、友人と中国関連ビジネスを企画する。1年ほど準備に奔走するが結局はお流れ。500万円を失った。

その後、サラリーマンに復帰するが、友人の会社に出資するなどして60歳までに退職金は消えてしまった。現在はソフト開発会社を経営するが「使ったお金は今の仕事に生きている」そうだ。

■マンション投資に失敗、退職金で穴埋め
現役時代から老後に備えてワンルームマンション投資をしていたBさん。借金で買った3部屋への投資額は6000万円以上。ローン返済と家賃収入の差額で月6万円近い赤字が生じていたが、現役時代は「節税になる」と言い訳していた。ところが定年後、赤字はただの赤字に。3部屋の売却査定額は約3000万円。完全な失敗だ。

結局、退職金3000万円で借金を返済する羽目に。毎月のキャッシュフローはプラスになったが、まとまったお金が消えたことで、退職旅行などの計画も消えた。
(日経マネー 本間健司)
[日経マネー2016年1月号の記事を再構成]