藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

意識の持ち方。


知らなかったが賭博の判決主旨は『賭博には勤労の美風を害し、副次的に犯罪を誘発する弊害があり、公共の福祉に反する』ということらしい。
法律上は根拠がはっきりしない、とのことだがそもそも規制には似合わない類の行為である。
よく「人生は最大のギャンブル」と言われるけれど、そんなものは規制できない。
仕事でも遊びでもチャレンジングなものはみな「何かの見返り」を求めての挑戦だから、全部ギャンブルになる。

どんなギャンブルも「お咎めなし」にして犯罪にだけ結びつかないような仕掛けを考えるほうが良さそうだ。
それにしても人間ってあっさりと結果が出て「分かりやすいもの」には夢中になるくせに、例えば「ギャンブル感覚で」勉強する、という表現はついぞ聞かない。

でも思えば自分の大事な時間を使って、遊ぶのも、賭け事をするのも、勉強するのも仕事するのも、全部ギャンブルなのに違いない。
とそんな話を酒場でしていたら、隣の女性客から「おんなは皆恋愛でギャンブルしてますよ」とのお言葉。
一同、なるほどーとなったのでした。
女性のほうが数段感覚がシビアである。

異議あり)賭博禁止は現実と合わぬ、原則解禁を プロ雀士でもある弁護士、津田岳宏さん

2016年5月20日05時00分

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写真・図版
津田岳宏さん=伊藤菜々子撮影


 プロ野球選手の野球賭博、バドミントン選手の違法カジノ通いと、最近、賭博をめぐるスキャンダルが表面化している。ただ、「賭博は罪」といいながら、競馬や競輪はOK、パチンコも大いに楽しまれていて、何か割り切れない。自分のお金を賭けて遊ぶことを処罰する今の賭博罪は見直すべきだ、と主張する弁護士に聞いてみたログイン前の続き。

 ■暴力団排除や依存症対策、合法化すれば正面から進められる

 ――賭博罪は不当だと主張していますね。

 「いまの刑法の賭博罪は、法のあり方として問題がありすぎると思うからです」

 ――どこが問題ですか。

 「賭博がどこまで許され、どこから処罰されるかが恣意(しい)的に決められ、その根拠がはっきりしないのが最大の問題です。1950年の最高裁判例では、賭博を罪とする理由として、賭博には勤労の美風を害し、副次的に犯罪を誘発する弊害があり、公共の福祉に反するとされています。だから賭博は一切禁止するというのならまだわかるのですが、競馬や競輪などの公営競技は認められている。国や自治体が規制するから賭博の弊害が少なくなるという理屈ですが、一般市民が納得できるものではないですよね」

 「さらに言えば、賭博罪は、日本社会の現実にも合っていません。パチンコという究極のグレーゾーンがあるからです」

 ――グレーゾーンとはどういうことですか。

 「パチンコは、風営法で、賞品として現金を提供することを禁止されています。でも実際には、客は出玉を『特殊景品』に交換して、パチンコ店のすぐそばにある交換所で換金している。世界の常識でいえばパチンコ店はカジノです。ラスベガスのスロットマシンと変わらない」

 「賭博罪で捕まった人の弁護を何人も担当したことがあるんですが、皆さん、大事になるとは思っていなかった。パチンコでみんな普通に換金していて、捕まる人はいない。賭博は本当はいけないのだろうけど、まあ大丈夫だと思ってしまう」

 ――賭博罪で罰せられる対象は、賭博をした人(単純賭博)、常習的にしている人(常習賭博)、賭博を主催してもうけた人(賭博開帳図利)など、さまざまです。

 「問題が大きいのは、ただお金を賭けて遊んだだけの人を罪に問う単純賭博罪です。刑法で処罰される犯罪は、基本的には、窃盗、暴行、殺人、詐欺など、被害者がいるものです。賭博開帳図利と違って、単純賭博は、勝つ場合もあれば負ける場合もあって、被害者がいない。それを処罰するのは、競馬や競輪が認められている状況ではかなり無理がある。単純賭博罪は撤廃すべきです」

 ――被害者なき犯罪だってあるでしょう。

 「被害者がいなくても処罰される代表的なものとして、覚醒剤の使用があります。覚醒剤は人体への害も強いし、反社会的組織の資金源にもなるので、刑法で規制することに異論は少ないでしょう。さらに言えば、公営なら許されるギャンブルとは違って、覚醒剤は例外なく禁止されています。国営の売店で買えば使ってもいいというものではありません」

 ――ギャンブルで借金漬けになり、さまざまな問題を起こす人もいます。

 「ギャンブルにのめり込み、社会に迷惑をかけてしまう人がいるのは確かですが、それはお酒も一緒です。最近では買い物依存症も深刻です。だからといって、飲酒や買い物を刑法で処罰しようという話にはならない」

 「国家権力が強制的に行使される範囲は必要最小限度にとどめるべきだというのが、近代の法律学の基本的な考え方です。刑事罰は国家権力の行使の最たるものですから、よほどのことでないと刑法で処罰してはいけないんです」

 ――海外でも、多くの国で賭博は禁止されています。

 「海外の場合は、宗教的な理由が大きいですね。プロテスタントは勤労を美徳とするので賭博に厳しいし、イスラムの戒律でも禁じられています。宗教と関係なく禁止している日本のほうが珍しい。そもそも、明治政府が賭博に厳罰を科したのは、自由民権運動を弾圧するためです」

 ――自由民権運動が賭博罪と何の関係があるのですか。

 「自由民権運動には、ばくちを生業にする博徒が多く加わっていました。そこで政府は、1884年に『賭博犯処分規則』を制定します。賭博をやっただけで長い懲役が科せられ、上訴も認めない。運動に加わっている博徒を厳しく取り締まることで、見せしめにしようとしたんです。この法令はあまりにもひどいので、1889年、明治憲法ができたときに廃止されますが、結果的に『賭博=大罪』というイメージが国民に刷り込まれ、受け継がれてしまったんじゃないですか」

 ――賭博解禁といっても、具体的にはどうしろと。

 「賭博は原則としてオーケーで、ただし許可を得ずに賭博を開帳してはいけないという、認可制に近いものにするんです。法律の原則と例外を逆転させるわけです」

 「世界的にも、ギャンブルは禁止から規制へという流れになっています。ただ禁止するのでなく、合法化した上で、様々な規制を設けてコントロールしていく」

 ――賭博を解禁すると、暴力団の資金源になるのでは。

 「賭博の合法化は、暴力団の資金源を断つことにもなります。合法のカジノがあれば、誰もリスクを冒して闇カジノには行きません。禁止していると、かえって暴力団に利用されやすい」

 ――流行のスマホゲームでも、ギャンブルができるようにしろという声が出たら、どうしますか。

 「スマホでの手軽なギャンブルを認める場合は、未成年は除外すべきでしょう。賭博を運営する側が責任をもって、未成年には遊ばせないようにすべきです。未成年に遊ばせていたとわかった場合には、賭博の認可を取り消すなどの罰則も考えられます」

 ――ギャンブル依存症患者がさらに増えますよ。

 「グレーゾーンのままにしておく方が依存症の対策が進まない。日本ではすでにギャンブル依存はどんどん増えていてほとんどがパチンコ依存症です。パチンコを賭博と位置づけ、特別税をかけて依存症対策の財源にすべきです」

 ――賭博を合法化することに、世間の理解が簡単に得られるとは思えません。

 「これまで日本社会は、賭博というものに正面から向き合ってこなかったんです。パチンコ店と自衛隊ってよく似ていると思うんですよ。パチンコは賭博じゃないという建前は、自衛隊は軍隊じゃないという理屈とそっくりじゃないですか」

 「明らかに現実と矛盾している建前をそのままにしておくのではなく、目の前にある現実にきちんと向き合って、法律をどうするかを考えませんか。大げさかもしれませんが、賭博の合法化を議論することが、日本の政治や社会が成熟していく過程の一部になると思っています」

 つだたかひろ 36歳 79年生まれ。京都大学経済学部卒業。2007年弁護士登録。14年に京都グリーン法律事務所を設立。「最高位戦日本プロ麻雀(マージャン)協会」所属の麻雀プロ。著書に「賭けマージャンはいくらから捕まるのか? 賭博罪から見えてくる法の考え方と問題点」など。

 ■「公共の福祉に反する」

 法的には、賭博は「偶然の勝敗によって財物の得喪を決すること」。185条で「賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない」(単純賭博罪)、186条(1)「常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処する」(常習賭博罪)、(2)「賭博場を開帳し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の懲役に処する」(賭博開帳図利罪)と規定されている。

 最高裁は1950年、賭博は「怠惰浪費の弊風を生ぜしめ、勤労の美風を害する」「副次的犯罪を誘発し又は国民経済の機能に重大な障害を与える」などとして「公共の福祉に反する」との判断を示した。

 ■取材を終えて

 賭博の合法化、どう思いますか。暴論だ、けしからんという方もいるでしょう。でも、今はスマホで馬券が買える時代です。町を歩けばパチンコ屋は盛況。それでも「賭博は犯罪」というのは、確かに少し無理があるような気もします。

 日本社会のあちこちで、建前と現実がずれています。建前をどこまで守り、どこまで現実に合わせればいいのか。賭博の問題をきっかけに考えてみてはどうでしょうか。(尾沢智史)

 ◇ご意見をか、〒104・8011(所在地不要)朝日新聞オピニオン編集部「賭博」係へお寄せ下さい。